【オートモーティブワールド16】スポーツカー開発、それぞれの流儀と事情…メーカー5社開発者対談

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椋本陵氏(本田技術研究所四輪R&Dセンター LPL室S660 LPL)
椋本陵氏(本田技術研究所四輪R&Dセンター LPL室S660 LPL) 全 7 枚 拡大写真

トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱の名物開発者たちが、次世代自動車技術展「オートモーティブワールド2016」に集結。特別講演として、自動運転やクルマの近未来についてディスカッションが行われ、スポーツカーづくりにまつわるエピソードや、開発におけるポリシー、マネジメントのポイント、メーカーそれぞれにある事情など、白熱したコメントや議論が飛び交った。

登壇者は、レクサス『RC F』などを担当したトヨタ自動車の矢口幸彦氏(Lexus International 製品企画主査)、日産自動車『X-TRAIL』などの東倉伸介氏(Nissan第二製品開発本部 Nissan第二製品開発部車両開発主管)、若くしてホンダ『S660』の開発主査をつとめた椋本陵氏(本田技術研究所四輪R&Dセンター LPL室S660 LPL)、歴代『ロードスター』やルマン参戦車などに関わってきたマツダ山本修弘氏(商品本部主査)、『ランサーエボリューション』などの走行試験を担当した三菱自動車の布野洋氏(商品戦略本部 商品企画部エキスパート)。

◆クルマづくりのモチベーション

椋本陵氏:小さなスポーツカーをつくるというゴールは決まってたけど、「そもそも小さなスポーツカーって何?」という議論から始めたのでたいへんだった。「愛車」っていう言葉があるけど、工業製品で「愛」がつくものはクルマしかない。「じゃあ愛ってなんだろ」なんてことも議論した。

矢口幸彦氏:商品計画やリソースが決まっているなかで重要なのは、まず何をつくりたいのか、目的は何かを理解してもらうこと。開発メンバー、経営者、販売、工場などみんなに理解してもらうため、腑に落ちるという意味の「ハラオチ」をつきつめる。レクサスのスポーツカーということで、パワーポイント書類で示すのではなく、コンセプトカーをつくって見せた。紙でつくってプレゼンすると“自分の目線”で見られちゃう。そうじゃなくて、実際にクルマをつくって見せると、実現させたいものが伝わる。

布野洋氏:ランエボっていうクルマはもともとホモロゲ仕様。小さなランサーに倍以上のエンジンを積んで世に問うもので、発想から違った。そのリーダたちのリーダシップが強かったからか、迷いもなく判断も早かった。彼らについてくる人たちも迷いがなく、WRCなどへの参戦・結果もわかりやすい指標になっていたと思う。

東倉伸介氏:そういう意味では、三菱はラッキーだったかも。結果にならなかったからといって、若い人たちにダメ出ししたりすると、なかなかマネジメントできない。どんなことがあっても、ちゃんと語ってもらうという風土づくりが必要。悪い結果が報告できるような環境をつくることも大事。

矢口氏:うまくいかないこともあるが、実験屋から言うと「うまくいかない」というのは「失敗」じゃない。「結果が仮説どおりにいかない」ということは、そこまでのやり方をひとつ消せるというだけのこと。

椋本氏:S660は、八千代工業の四日市製作所でつくられるので、クレイモデルを現場へ持っていき、いっしょにつくろうという思いを共有しにまわった。現場の人もビジョンに共感してもらい、「やる!」って決めてくれた。

矢口氏:われわれは、サーキットを楽しく走るクルマなんて、どうして必要かというのを説得してまわるのが大事だった。みんなにサーキットに来てもらって、このクルマができたらこんなことが体感できる、ということを示すと、「よし、やる」と言ってくれる。

山本修弘氏:マツダはかつて、フォードに救われたという経緯がある。僕が3代目のロードスターを担当したとき、社長以下すべてがジャッジにかかわった。彼らはフォードを辞めてマツダにきてくれた人たち。彼らから「ブランディング」と「Change or Die(変革か死か)」を徹底的に教わった。マネジメント側は、どのステージでも承認をもらわなければならないから、部下たちの想いをキープするためにも、ぶれないことが大事。部門という壁を持って開発に参画するのもダメ。

東倉氏:われわれは、ルノーといっしょに仕事をする機会が多いけど、たとえば何か問題が起きたとき、セクションの壁が顕著になる。「誰の責任?」「どの部門の責任?」って始まる。それを逆に考えると、モノをつくるときは、部門という壁を越えたチームで取り組むのがいいかも。セクションの壁を超えて仕事をするという場面では、日本のほうがものすごくやりやすい。

2時間にわたり、各社キーマンたちが語り合った同講演。事前申し込みぶんの席は満員となり、サテライト会場が設けられたほど盛況となった。

《レスポンス編集部》

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