【カストロール ネクセル 後編】エンジンオイルのカートリッジ化で、リサイクルも可能に

自動車 ビジネス 企業動向
カストロール「ネクセル」は市販車への適用も視野に入れている。写真はスバルBRZとフォードフォーカスのテスト車
カストロール「ネクセル」は市販車への適用も視野に入れている。写真はスバルBRZとフォードフォーカスのテスト車 全 16 枚 拡大写真

エンジンオイル交換がわずか90秒間で終わるだけでなく、燃費改善やCO2排出量の低減にも効果のあるカストロール・ネクセル(NEXCEL)。その詳細を取材するため、イギリス・パンボーンに建つカストロール本社を訪ねた。

ここでインタビューを行った技術者のひとりが潤滑油調合部門で責任者を務めるマーク・ペイン。彼と会って話を聞くまでは、エンジンオイルをカートリッジに収めることとオイルの調合にどんな関係があるのか、私にはまったく想像ができなかった。しかし、化学の領域からオイルの開発に関わっているペインにとっても、ネクセルは極めて興味深い研究テーマであるという。

「イギリスでは、使用済みオイルの大半は燃料として燃やされます」とペイン。

「なぜなら、サービス工場から回収された古いオイルには冷却水や様々な異物が混入しており、潤滑油として再生するのはコスト面からいって非現実的だからです。しかし、オイルがカートリッジ内に密封されているネクセルであれば冷却水が混じる可能性はほとんどなく、たとえ使用後であっても異物は混入しにくいと考えられます。また、もともとどんなオイルが封入されていたのかも明らかなので、新油と変わらない性能を比較的容易に取り戻すことができます」

つまり、ネクセルを導入すればエンジンオイルのリサイクルが可能になるのだ。これは資源や環境を保護する観点からいって、とてつもないメリットがあるといえるだろう。

また、ネクセルを利用すれば、いままで以上に優れた性能を持つエンジンオイルの開発が可能になるとペインは語る。「ネクセルはオイルパン内のオイル量を正確にコントロールできるため、暖機に要する時間をこれまでより短くできます。つまり、エンジンオイルは短時間で適温に達するので、添加剤の使用温度範囲を従来よりも狭く設定することが可能となり、このため、より突き詰めた性能を持つ添加剤を配合する道が開けると考えています」

カストロールとしては、今後2年間ほどは主に少量生産モデルへの適用を通じて開発を進めるいっぽう、5年後を目標に大量生産モデルへの採用を目指す考え。このため、現在は世界中の様々な自動車メーカーと共同開発に関する交渉を行っているところだ。

「様々な人々と意見を交換するたびに、ネクセルのアイデアはどんどん広がっていきます」 ネクセル・プロジェクトでチーフエンジニアを務めるオリヴァー・テイラーが語ったこの言葉は、ネクセルの可能性が無限大であることを示しているといえるだろう。

《大谷達也》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. レクサス『LM』対抗!これがメルセデスベンツ最高級ミニバン、『Vクラス』後継の最終デザインだ
  2. 下請法が「取適法」に…2026年1月施行の改正ポイントは?
  3. 販売わずか3年の希少車種、「角目」のいすゞ『117クーペ』【懐かしのカーカタログ】
  4. 三菱『デリカミニ』がフルモデルチェンジ!「やんちゃ坊主」感アップ、走りも三菱らしく進化
  5. ソニー・ホンダを提訴、米カリフォルニア州ディーラー団体「EV直販は違法」[新聞ウォッチ]
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る