【キャデラック ATSクーペ 試乗】走りは相変わらずのヤンチャ系、CarPlayで便利さアップ…中村孝仁

試乗記 輸入車
キャデラック ATSクーペ 2016年モデル
キャデラック ATSクーペ 2016年モデル 全 17 枚 拡大写真

昨年もちょうどこの時期に『ATSクーペ』に試乗した。当時6速ATは力不足だと書いたが、GMはそれを見ていたのか(んなわけないが)、2016年仕様は8速ATを装備して日本市場に上陸である。

1年前 、このATに関してはライバルと比較した時の話を書いたまでで、実際に乗ってみるとライバルのアウディやBMWに対して動的性能はキャデラックが上。だからまあ6速でも許せてしまうというニュアンスでインプレを書いたのだが、では8速になってどうか。正直なところ6速と直接乗り比べてみないと分からないというのが本音である。

シフトフィールは非常にスムーズで煩雑さも感じさせない。今回はさらにいわゆるアイドリングストップのオートスタート/ストップ機能も付いた。というわけで燃費に関してはこちらが上と想像できるのだが、試乗での総平均は8.9km/リットルとイマイチ伸び悩んだ。アイドリングストップに関しては、エンジン停止、再始動がスムーズで十分に高級車としての素養を備えている。

一方で昨年、乗り味に関しては「ヤンチャ系のクルマに映ってしまった。」と書いた。そのフィーリングは今回も変わらず、やはり全体としてごつごつした、結構な突き上げ感を感じることと、何よりもロードノイズがかなり大きめなことが気になった。この2点は果たしてキャデラックATSクーペを、メーカーがスポーティーなハンドリングカーに仕立てようというのか、はたまたラグジュアリーで快適なクーペに仕立てようとしているのか理解しがたかった。本来このクルマは後者に育てるべきで、ヤンチャ系は『ATS-V』に任せておけばよいと思うからである。

最大の原因を作っているのはブリジストンのポテンザタイヤにあると感じた。このタイヤは明確にハンドリング指向で、乗り味には悪影響が出やすい。本来はもっと快適さを演出できるタイヤをチョイスすべきだと思う。ただし、おかげでハンドリングとコーナリング性能はさすがで、日本の路上においてその限界などとても試せないほど懐は深い。

もう一つ指摘しておきたいのは、フロア及びバルクヘッド側からの透過音が大きめで、エンジンノイズはいかなる状況でも明確に進入する。昨年乗った時は天候が雨だったため、こうした音の状況が良く分からなかったのだが、今回ドライコンディションで乗ってみたら、予想外の透過音に少々驚かされた。

運動性能とは無関係だが、2016年モデルからApple CarPlayに対応した。GMはこの種の進化が最も早い。早速使ってみたが、やはり非常に便利である。ただし、siriによって呼び出すカーナビはAppleの地図に繋がってしまい、正直こいつは使えない。実際行き方のわかっている経路で案内させてみたが、本来右に曲がるところを左に曲がれと指示を出したり、およそ反対方向へ行かせる指示を出したりと、支離滅裂だった。

勿論車載ナビはCUE(キャデラック・ユーザー・エクスペリエンス)画面の裏側に隠れており、ホームボタンを長押しすることでナビ画面に切り替わる。だから、ナビに関してはこちらを使うことをお勧めする。それでも何かを調べさせるのにsiriが使えるし、何よりBOSEサウンドとiPhoneに仕込んであるコンテンツを連携させるのは、実に便利である。因みに、BOSEを標準サウンドシステムとして採用したのはキャデラックが初だそうである。セダンより多い12スピーカーによるサウンドは、かなりの迫力を持っていて、250kmに及ぶ試乗の間、堪能させてもらった。

エンジンに関して前年モデルと変わらない。内外装に関しても変更点はない。そして残念なことに右ハンドル仕様は作られていないから、相変わらず左ハンドルのままだ。もし右ハンドル仕様が出たら、結構注目されるクルマだと思うのだが…。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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