【ルノー ルーテシア 試乗】都市向けになっても、やはりツーリングに魅力…井元康一郎

試乗記 国産車
ルノー ルーテシア 1.2リットル ZEN
ルノー ルーテシア 1.2リットル ZEN 全 8 枚 拡大写真

フランスの自動車大手、ルノーの主力車種であるBセグメントハッチバック『ルーテシア(欧州名:クリオ)』のマイナーチェンジモデルが2月、日本市場に投入された。その改良型を短時間テストドライブする機会があったのでリポートをお届けする。

今回のマイナーチェンジにおける最大のトピックは、1.2リットル直噴ターボ+6速DCT(デュアルクラッチ自動変速機)にようやくアイドリングストップ機構、ルノー風に言えばストップスタートが装備されたことであろう。また、エンジンのチューニングも変更され、最高出力が120psから118psに引き下げられ、最大トルクは反対に190Nmから205Nmへと増強された。

試乗車はその改良型パワートレインが搭載された1.2リットル+6速DCTのベースグレード「ZEN(ゼン)」。試乗ルートは混雑のやや激しい都心の公道で、一般道7、首都高速3の割合。試乗コンディションは全区間1名乗車、マニュアルエアコンON、走行モードノーマル。

ドライブしてみたところ、クルマのキャラクター自体は旧モデルと比較してほとんど変わっていなかった。セッティングがトルク側に振られたというエンジン特性も、乗り比べてみなければわからないという程度だった。新設されたストップスタートは他の欧州車と同様、徹底的にエンジンを停めることにこだわった設定で、渋滞時の長い信号待ちでも途中でエンジンがかかるようなことはなかった。

シャシーセッティングは旧モデルと基本的に同じとのことだったが、実際のフィールも旧型と同様であった。高速での良好な直進性、曲率の緩いコーナリングでの自然な操舵フィールなど走りのチューニングについてはハイレベルである半面、路面の荒れを滑らかに受け流すような旧来のフランス車のテイストは薄く、ハーシュネスを結構素直に室内に伝えてくる。ただ、旧型のテストドライブの経験に照らせば、走行距離が伸びるにつれて固さはある程度緩和されてくるものと予想される。

「EDC」と名づけられた6速DCTは、フォルクスワーゲンやホンダのそれとフィーリングがかなり異なっている。いったんクラッチが結合されると、変速するまではクラッチ開放制御などを一切行わず、直結したまま。イメージとしてはATの置き換えではなくMTの置き換えのような感じだ。変速以外の余計な制御がほとんど入らないため、エンジンと駆動輪の結合感が高いことを好む顧客にとっては魅力的な変速機だろう。半面、低ギア段ではエンジンのオンオフにともなうスナッチ(前後の揺れ)がクラッチを繋げっぱなしにしたMTと同じくらいはっきり出るため、アクセルワークの技量が高くない顧客、トルクコンバーター式ATのようなスムーズネスを求める顧客にはあまり向かないように思われた。

試乗時の燃費表示は13.4km/リットル。旧型では欧州式に「7.4L/100km」などと表示されていたが、マイチェンで日本式に改められた。もともとルーテシアは郊外路では試乗ルートが渋滞だらけであったことを考慮しても、Bセグメントの数値としてはあまり良くないスコアとなった。ルーテシアはノーマルモードとエコモードでシフトスケジュールがかなり異なっており、ノーマルで走るとシフトアップポイントが結構高めになることが都市走行における燃費の伸び悩みの原因であるように思われた。旧型の経験に照らし合わせればエコモードで走れば燃費は一気に2割がた良くなるのだが、エアコンの効きがかなり悪くなるので悩ましいところだ。パドルシフトはついていないが、2ペダルMTのようにシフトレバーで自分で変速するのが一番効率が良さそうだった。

総じて改良型ルーテシアは、アイドリングストップ装備のぶんだけ都市走行への適応度は増したものの、依然としてやや粗削りな傾向があり、郊外走行で本領を発揮するという性格づけに大きな変化はなかった。山岳路でのドライブフィールやシート設計、郊外燃費に優れるといった旧型の美点が継承されているという前提に立てば、ツーリング志向の強い顧客にとっては魅力的な1台と言えるだろう。

もう一点、写真では立体感がうまく伝わらないのだが、フォード出身で一時はマツダのデザインディレクターも務めていたローレンス・V・D・アッカー氏肝いりのエクステリアデザインは、日本ではスペシャリティカーとしても通用しそうなくらいに情感豊かなもの。スタイリッシュさを求める顧客にとっても選択肢に入ってくるモデルではないかと思われた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★(MT好きな顧客にとっては★★★★)
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★(デザイン性を加味して)

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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