9~10日に岡山国際サーキットで開催されたSUPER GT開幕戦。GT300クラスに参戦するアウディ勢にとっては波乱万丈な展開となったが、そのなかで新型R8 LMSのリチャード・ライアン&藤井誠暢が7位に入賞するなど、今後のシーズンに期待感を抱かせている。
ドイツ、イタリアから新型のFIA-GT3規定車が数多く上陸参戦し、例年以上の注目を集めている今季のGT300クラス。アウディからも、既に世界各地の耐久レースで活躍中の新型R8 LMSがGT300戦線に投入された。今季のアウディ勢は従来型マシンを当面使用する陣営も含めて、3チーム3台へと参戦台数が拡大している。
新時代の幕開けともなる今季開幕戦はまさに波乱万丈な展開だった。まず、#86 braille Audi R8 LMS(加藤正将&P.カッファー/タイヤはヨコハマ=YH)はマシンの準備が間に合わず、残念ながら開幕戦を欠場。さらに、従来型マシンで参戦する「Team TAISAN SARD」の#26 AUDI R8 LMS(密山祥吾&元嶋佑弥/YH)は予選を走れず。そんななか、予選日朝の練習走行2番手という速さを見せたのが#21 Hitotsuyama Audi R8 LMS(R.ライアン&藤井誠暢/ダンロップ=DL)だったのだが、この#21もトラブルを抱えてしまい、場合によっては予選に3台とも姿を現わせなくなる可能性さえあった。
しかし、アウディでの長い参戦経験を持つ#21Hitotsuyama陣営は、できる限りの処置を施して予選に出走。走れさえすれば、ドライバーの力量も含めてある程度以上のパフォーマンスは約束されているところであり、まず藤井がQ1を突破、そしてライアンがQ2で6番グリッドを獲得してみせた。
明けて決勝日、#21 ライアン&藤井は新型R8 LMSでの初レースを7位入賞という結果で終える。彼らが従来型を走らせていた頃から“レースでの強さ”がR8 LMSの信条であったことを考えると、決勝で1ポジションダウンというのは決して満足いく結果ではないが、今季から組んだダンロップ(昨年のGT300チャンピオンタイヤ)との親和が進んでいけば、やがて本領発揮となるだろう。むしろ、これまで苦戦傾向にあった予選で、ドタバタした状況でありながらも6位につけたことをポジティブに考えるべきかもしれない。
コーナリングやブレーキングに秀でいているのもR8 LMSのDNAで、そこは新型でさらに進化。一方、GT300クラスには素性の異なる各車の性能を均衡させる(いわゆる)性能調整というものがあるため、直線のスピードはそれにも影響を受けるところで、従来型は直線をどちらかというと苦手にしていた。しかし開幕戦のレース中には、他のFIA-GT3マシンと新型同士で直線を加速並走する場面でもヒケをとってはいないように見えるシーンがあった。#21の佐藤真治エンジニアは「ここ(岡山)の直線は短いですからね。その先がどうか、ですよ」と、次の富士のロングストレートに向けて楽観はしないが、状況好転を感じさせるシーンではあった。
佐藤エンジニアは次戦富士の展望をこうも語る。「まだまだチームとしてやるべきことはありますし、やはり富士向きとはいえない面もあるとは思いますので、次は勝てる、というような状況ではありませんが、今度は500kmと長いレース(開幕戦は300km)。トラブルなくいければ、いいところ(トップ5、さらには表彰台)にいける可能性はあると思います」。レースでの速さという真骨頂を、長丁場で発揮してほしいところだ。
また、決勝出走が叶った#26 密山&元嶋も最後尾から出て、都合7ポジションアップの20位で完走を果たした。アウディ勢にとっては、波乱の予選日の翌日、光明を見出した決勝日だったといえるだろう。
次戦富士(5月3~4日)では#86 加藤&カッファーも戦列に加わるはず。アウディ ジャパン、そしてドイツ本国Audi Sportのユーザー支援も今季はさらに充実。台数も増え、新型R8 LMSがポテンシャルアップも果たしたアウディ勢、その走りがGT300戦線を一段と活性化することに期待したい。