工学院大学の曽根悟特任教授は、4月16日の同大学公開講座で、「日本には中速鉄道というカテゴリが存在しない。在来線では、京成スカイライナーの一部区間に160km/h運転が存在するだけ。低速か高速しかない、いびつな関係」と伝え、在来線の高速化について語った。
この曽根教授のいう「中速鉄道」とはどんな速さか。最近のニュースでは、2015年9月に発信した朝日新聞の記事にこの中速鉄道という表現が使われている。日本と中国が受注争奪戦を繰り広げてきたインドネシア高速鉄道計画の経過について、「ジョコ大統領は高速鉄道ではなく、時速200~250kmの中速鉄道で十分だという判断だ」という具合だ。
日本の鉄道に目を向けると、全国新幹線鉄道整備法には「新幹線鉄道」の定義について「その主たる区間を列車が200km毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう」とある。200km/h以上で走れる鉄道が、新幹線を含む高速鉄道とくくれるか。曽根教授は中速鉄道ビジョンについてこう続ける。
「リニア(中央新幹線)は、東京・名古屋・大阪を結ぶもの。そう割り切るべき。そうしたなか、中央東線や常磐新線は、中速鉄道にすることも考えられる。最高速度200km/h、表定速度150km/hぐらい、現状の曲率半径でも、踏切がなくなれば、部分的には可能性がある」。
3月末、九州新幹線 西九州ルート(博多―長崎)の今後について、与党委員会、佐賀県、長崎県、JR九州、鉄道・運輸機構、国交省などは、「平成34年度に武雄温泉駅において在来線特急と新幹線を乗り換える対面乗換方式により開業する」ことで合意した。長崎新幹線開業による時間短縮だけに着目すると、この“リレー方式”で、現状の在来線特急と比較して22分、フリーゲージトレインによる直通運転が実現して28分だ。
同講座では、この博多と長崎の間にある既存の線路、長崎線についても「中速鉄道化するだけでいいのではないか」といった参加者の声があった。