【ホンダ クラリティ FC】古典的セダンスタイルの理由は「パワートレイン配置」にあり

自動車 ニューモデル 新型車
ホンダ クラリティ フューエルセル
ホンダ クラリティ フューエルセル 全 16 枚 拡大写真

ホンダが3月10日に発売した量産型燃料電池車『クラリティ フューエルセル(FC)』。先行するトヨタ自動車の『ミライ』がエキセントリックな外観を持っているのに対し、クラリティFCは古典的なセダンフォルム。クルマの基本骨格はパワートレイン、シャシーの重心高、キャビン、燃料タンクの配置などの技術要素である程度決まってくる。ホンダのフォルムが普通のセダンスタイルとなっているのは、パワートレインの配置が普通のクルマと同じだからだ。

「クラリティFCで実現させたかったのは、普遍的価値と先進的魅力の両立。それを成り立たせるために、パワートレインを普通のエンジン車と同じサイズに収めることにトライしました」

クラリティFCの開発担当者はこう語る。燃料電池車のパワーユニットを構成する大物は水素タンクを除くと電気モーター、出力制御装置、FCスタックの3点。これまでの燃料電池車は燃料電池スタックが別置きとなっており、室内スペースがそれに食われていた。だが、ホンダはFCスタックの小型・高密度化が進んだことで、その3つをまとめれば、内燃機関と同じスペースに搭載できるのではないかと考えた。

「並みの小型化では電気モーター、出力制御装置、FCスタックを三段重ねにすると、普通のエンジンより高さ方向に大きくなってしまい、ボンネットに収まらなくなる。そこで我々は、そのすべてを小型化することに挑みました」(開発担当者)

FCスタックの薄型化に加え、世界が開発にしのぎを削っている出力制御装置のパワー半導体に、量産車では世界初となるシリコンカーバイド(SiC)を採用した。「SiCは耐熱性は高いのですが、冷却はむしろ難しい。空力特性を悪化させずにフロントに風を当て、さらにボンネット内にしっかり空気を回すにはどうしたらいいか、散々苦労しました」(シャシー担当)

その結果、モーター、出力制御装置、FCスタックの3つを縦に重ね合わせることに成功。寸法は内燃機関のV6エンジンより少し小さく、質量は同じくらいであるという。このことによって、クラリティFCは空力志向の強い普通のセダンスタイルとなったのだ。高圧水素タンクが大型であるため、まだまだ室内の居住性やラゲッジルーム容積は通常のガソリン車と比べると劣るが、それでも実際に乗ってみると、燃料電池車としては相当の進化であるように感じられた。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 真夏のダッシュボードが20度以上低下!? 驚きの遮熱サンシェード新時代[特選カーアクセサリー名鑑]
  2. 新型フォレスター半端ないって! 純正用品で大変身、日本初披露“サンドカラー”のクロストレックが登場…東京アウトドアショー2025
  3. スズキ『エブリイ』が災害時は「シェルター」に、軽キャンピングカーの新たな可能性
  4. 世界最強の2.0ターボ搭載車に幕、メルセデスAMG『CLA 45 S』最終モデルが登場
  5. どこだ? 日産が7工場を閉鎖予定---可能性のある工場すべてをリストアップした
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. リチウムイオン電池の寿命を2倍に、矢崎総業、バインダフリー電極材料を開発
  2. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. トヨタや京大、全固体フッ化物イオン電池開発…従来比2倍超の容量達成
ランキングをもっと見る