【トヨタ オーリスハイブリッド 試乗】燃費第一主義と決別したクルマは気持ちいい…諸星陽一

試乗記 国産車
トヨタ オーリスハイブリッド Gパッケージ
トヨタ オーリスハイブリッド Gパッケージ 全 10 枚 拡大写真

トヨタの『オーリス』にハイブリッド化したモデルが追加された。システムは先代『プリウス』に採用されたTHS-II。

じつはオーリスの欧州仕様にはハイブリッドの設定があり、今回の追加は日本仕様でも展開拡大と表現したほうが正しいかもしれない。ただし日本で販売されるハイブリッドモデルは、欧州から輸入されるのではなく、日本で製造される。冒頭に書いたように、システムとして採用されたのは先代プリウスで使われたTHS-II。現行プリウスでは約40km/リットルのJC08モード燃費を実現しているが、このオーリスハイブリッドのJC08モード燃費は30.4km/リットルとなる。

オーリスハイブリッドは新規に追加されるハイブリッドモデルなのに、現行プリウスの燃費にはまったく届かない状態で発売された。つまり、トヨタとしてはオーリスのハイブリッドモデルについてはこの燃費でよしという結論を出したのだ。プリウスは燃費を追求しなくてはならないが、オーリスはそれとは異なるハイブリッドの道を歩む。それは同時にオーリスにのびのびとしたクルマとなる可能性を与えたこととなった。

ATセレクターのデザインは先代プリウスと同じで、ハイブリッドらしい部分で、乗る前には「ああハイブリッドなんだなあ」と感じる。しかし、走り出すとさほどハイブリッドであることを感じさせない。パワー/トルクスペックはエンジンが99馬力/142Nm、モーターが82馬力/207Nmで、システム出力は136馬力と発表されている。

ハイブリッド(とくに先代プリウス)のネガティブな部分は、走りに関してメリハリがないところだったが、このオーリスには走りにメリハリを感じる。ミッションも先代プリウスゆずりの電気式CVTなので、ステップ制御などはなく、アクセル操作に対して速度が上がっていくだけなのだが、ちょっと排気音が心地よかったり、加速時にステアリングに伝わってくるタイヤの感覚などがリニアだったりといった部分が気持ちいい。欧州で先に発売されていたこともあり、そのあたりのチューニングに対するノウハウがあったのだろう。

試乗時は雨天で、路面状況は悪かったのだが、運転は楽しかった。ハンドリングは素直で、ステアリングの舵角に対するクルマの動きが正確だ。現行プリウスはリヤサスペションをダブルウィッシュボーンに刷新し走りを目覚めさせたが、現行オーリスはデビュー時から上級モデルはリヤにダブルウィッシュボーンサスを採用し走りのポテンシャルを高めていた。加えてハイブリッド化によって重心が低くなったこと、リヤ荷重が増えたことが走りをよくしている大きな要因だ。

試乗したグレードが「Gパッケージ」だったので装着タイヤが225/45R17サイズとなっていた。ハンドリングに対してはいいフィーリングを示すタイヤだったが、乗り心地はイマイチ。標準タイヤが205/55R16と2サイズ幅が狭いタイヤとなるが、パフォーマンス的には問題ない。

もし、オーリスでも燃費を最優先してチューニングしたら、このワクワク感は生まれなかっただろう。ほんのちょっとカタログ燃費が落ちても、クルマの楽しさは何なのか? を考えて作ることがいかに大切かを感じさせてくれた1台だった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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