【ダイハツ ブーン&トヨタ パッソ 試乗】ターゲットユーザーが極めて明確なクルマ…中村孝仁

試乗記 国産車
ダイハツ ブーン シルク
ダイハツ ブーン シルク 全 14 枚 拡大写真

トヨタ『パッソ』とダイハツ『ブーン』は完全なバッジエンジニアリングカーである。この2台。今回のモデルチェンジでそのすべてのデザイン並びに開発を、ダイハツが行った。

【画像全14枚】

もっとも、モデルチェンジと言っても、プラットフォームは先々代から使っているものを順次補強した、言わば改良版。エンジンも同様でこちらも改良は受けているが、基本は先々代から引き継がれているもの。1KR-FEという呼称もそのまま使われている。つまり、ガラッと変わったのはスタイリングと内装だけ、ということになる。

しかしそうは言ってもホイールベースは50mm延長され、その結果として特に後席の空間は拡大され、前席と後席間のヒップポイントで測定した距離は940mmで、これはクラス最高だという。またエンジンにしても吸気ポートをデュアル化してインジェクターも2本用意したデュアルインジェクター化を行い、圧縮比も12.5に引き上げるなど、細かい改良が加えられている。

もう一つ今回のモデルチェンジにおける特徴は、二つの異なる顔を持つ外観を用意したことだ。2フェイス戦略と称し、標準グリルの他に上級の「ブーン シルク」が新たに設定された。今回の試乗車はこのシルクの方である。

メーカーが公言するように、このクルマはニーズに合わせた生活密着型の商品提案だそうである。実際、既存ブーンのユーザー層について質問したところ、いわゆるダウンサイザー、そして軽からの上級移行、さらにビギナーがその大半を占めるということで、走りにうま味を求めるユーザーではないことが明確。だから、メカニズムを大きく変えることなく12年も生きながらえてきたわけである。因みにこのクルマ、日本専用モデルである。

試乗しての第一印象は、そつなくまとまっている、という点。大きな不満もない代わりに、走って楽しいとか、運転に充足感があるという感じはまるでしない。あくまでもA地点からB地点までの移動を、まさにそつなくこなすことのできるクルマだという印象だった。

3気筒のリッターカーはなかなか面白いクルマが増えてきた。例えば性能でチョイスするならターボの付いたフォード『フィエスタ』が筆頭。つい先ごろデビューしたスズキ『バレーノ』のXTもかなりのもの。NAだとVW『up!』がある。これらを果たしてライバルと呼ぶかというと、ダイハツは仮想敵とはしていない。でも、エンジン的に3気筒1リットルというくくりで話をすれば、この1KR-FEエンジン、確かにあれやこれやと手を尽くしているが、残念ながらエンジン本体の騒音、振動共に決して小さなものではなく、最新鋭の直噴組と比較した時は、世代差が明確に出てしまう。CVTとの組み合わせでも、特に高速での追い越しなどはシャキッとしたところがなく、必然的に走行車線をゆっくり走ることを宿命づけられる。

シャシーにしても同じ。かなりの防振対策や補強が入れられているが、高い剛性感だとか、カチッとした手応えなどはない。ステアリングもはっきり言えばダルである。ただ、女性のビギナーにシャープなステアリングを握らせたら、恐らくは怖さが先に立ってしまうだろうし、第一素直に直進しないかもしれない。カチッとした高い剛性感は、当然引き締まったサスペンションを必要とするし、ならばソフトな乗り心地との両立はお金をかけないと難しい。

というわけでそうした点を顕著に割り切った作りがなされているのがこのクルマだという印象を受けた。ターゲットユーザーは極めて明確で、エンプティーネスターで楽なドライビングスタイルを好むダウンサイザー、主として軽より安全性の高いコンパクトカーをチョイスした女性ビギナー、それに軽からアップグレードを果たそうとするファミリー層といったところ。そうした層にはこうした作りが良いのかもしれないが、全く持って熱く語る要素の無いクルマだった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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