【DS 3 カブリオ 試乗】スペックと裏腹に「まさか!」の走り…中村孝仁

試乗記 輸入車
DS 3 カブリオ
DS 3 カブリオ 全 9 枚 拡大写真

つい先日、旅の友として『MINI クーパー・コンバーチブル』に乗ったばかり。今回『DS 3 カブリオ』に乗って、改めてオープントップの快適さを体感したが、この市場のオープンカーは侮り難い性能を持っている。

新生DSの末っ子であるDS 3。昨年の東京モーターショーでDSブランドが誕生した時、この末っ子のDS 3だけ、新しいグリルを纏っていなかった。それが今回、ようやく真新しいDSグリルを纏ったDS 3がお披露目された。

基本的にDSウィングのデザインは同じなのだが、DS 3だけ他の2モデルと異なっているところがある。それはグリルが縦に大きく、ナンバープレートをグリル内に付けていることだ。この新しいグリル以外にはボディスタイルに変更はない。独特なフローティングルーフも、サイドラインのシャークフィンも従来通り。ただ、今回の試乗車はエクステリアカラーがブラックだった(正確にはノアールペルラネラと呼ぶ)こともあって、せっかくのフローティング感もシャークフィンもイマイチ判然としなかった。

DSブランドはどのモデルもとりわけデザインに対するこだわりが強く、それが大きな魅力となっているわけだが、犠牲にするところも大きい。DS 3カブリオの場合の犠牲は、フルオープントップにした時の後方視界がほぼゼロになるところ。これを回避するにはリアビューカメラを付けるしかないと思う。もっとも、リアウィンドーを残した状態のオープントップと、そこからリアウィンドーを畳んだ状態にしたオープントップとでは解放感はほとんど変わらないから、リアウィンドーを残した状態で止めておけば大した問題がない。このあたりがいわゆる割り切りなのだと思う。

因みにこのクルマ、乗車定員が5人となっていて、このクラスで5人乗車を可能にしたオープントップはこのクルマだけなのだそうである。MINIは4人乗りだ。

『DS 4』に試乗した時に、いわゆる安全デバイスがフランスのクルマにはついていないという話をしたが、最後に試乗したこのDS 3にはアクティブシティーブレーキなる衝突軽減ブレーキ機能がついていた。というわけで必ずしもこの種のデバイスが嫌いなわけではないということはわかったが、一方でDS 3の場合、インダッシュにナビを装備させることはできない。これらのことから考えて、フランス系のメーカーはやはりITS系の装備という点では若干遅れを取っているという印象は否めない。

とまあ、日本で使うにあたっては多少の不便を感じるクルマかもしれないが、このクルマの心臓部、1.2リットルターボユニットはさすが2015年のエンジン・オブ・ザ・イヤーに輝いただけのことはあり、出色の出来。近年の高出力化で僅か1.2リットルながら110psを出していることにはさして驚かないし、205Nmという最大トルクも、まあ有りだと思うのだが、その大したパフォーマンスでないと感じるスペックとは裏腹に、その走りは「まさか!」という思いに変わるのである。

普通にアクセルを踏んでいても、とにかくこのクルマは前へ前へと行きたがる。まさしくそれは走りたくて仕方のない競馬馬のタズナを引いてその動きを制御しないと勝手に行ってしまいそうな…そんな雰囲気を持つ走りだ…と、同乗した友人のジャーナリストが言っていたが、まさにその通りだと思う。常にメーターを見ていないと気が付いた時にあらぬスピードになっていることしばしば。その動きもまさに小気味よいという言葉がぴったり。こんなクルマが304万円で手に入ると思うと、かなりグラっとくる人が多いのではないだろうか。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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