【BMW M2クーペ 試乗】日本のために作られたような“ジャストな”スポーツクーペ…諸星陽一

試乗記 輸入車
BMW M2クーペ
BMW M2クーペ 全 17 枚 拡大写真

BMWの『2シリーズクーペ』にスペシャルチューンドモデルの『M2』が追加された。連綿と続くMシリーズのなかで現在もっとも小さなモデルとなる。

M2クーペのエクステリアでもっとも特徴的なのは、ググッと広げられたワイドフェンダー。初代『M3』(E30)をはじめて目にしたときと同じ「こいつぁ、かっこいい。たまんねえ」という気持ちでいっぱいになる。やっぱり男の子は、ワイドフェンダーというかオーバーフェンダーにやられちゃうんだね。これってグラマーな女性に首ったけになるのと同じ。本能的な反応なのだと思う。

クルマに乗り込むといつものBMWの風景が目の前に広がる。端正に作り込まれたインパネまわりは隙のない完ぺきさ、どこから見てもドイツの工業製品であって、その素性に疑いを持つ者はいないだろう。エンジンを始動すると、心地よい振動が伝わってくる。EVやハイブリッドとは違う、“さあ走り出すぞ”と語りかける振動。これこそスポーツモデルの前奏だ。

M2には3ペダルMTも存在するが、日本には7速DCTの2ペダルMTのみが輸入される。走り出しは自動変速で走り出すとしても、即座にマニュアルモードに切り替えたくなる。アクセルペダルをグイッと踏み込むと、まったくよどみない回転上昇で7000回転のレッドゾーンまで吹けきる。3リットル6気筒、370馬力のエンジンは一般公道ではそのポテンシャルを生かし切れない。

M2にはほかのBMWと同様に走行モードの切り替えが可能。最初の走り出しは「コンフォート」でスタートしたが、それでもステアリングフィールはしっかりとした重さを持っている。M2を買う層は「コンフォート」でも重いステアリングフィールを望むだろう。これをダルダルのスイスイにしてしまったら反感を買うのは目に見えている。「コンフォート」から「スポーツ」にモードを切り替えるとエンジンのレスポンスはさらにアップ。よりスポーティな走りを得られる。

「スポーツ」モードでも走りはつねに高いスタビリティを持続する。一般道ではあくまでも安定性を重視、ドライビングから破綻という言葉を排除する考え方はいかにもBMWらしい。ではさらに上(?)の「スポーツ+」モードではDSCが解除されるが、それをエスケープゾーンのない一般公道で試すのは不可能に近いことだ。「スポーツ+」はあくまでもサーキットで楽しむべきものと理解したい。

M2最大の魅力はそのサイズ感にあると言える。全長×全幅×全高は4475×1855×1410(mm)。ホイールベースは2695(mm)だ。ホイールベースだけ見ればプリウスよりも5mm短い。輸入車のハイパワーモデルは確かに楽しいのだが、日本の道路とのマッチングが悪いことが多いが、M2は日本の道路とのマッチング非常にいい。しかもちゃんと作られた右ハンドルだ。まるで「日本のために作ってくれたのではないか」と思わせるほどのマッチングのよさだ。

ワインディングを走っていると、車線の幅をしっかり使ってステアリングを左右に切りながら、ヒラリヒラリとコーナーをクリアしていく。タイヤを完ぺきにコントロールするグリップネージメントは、アクセルペダルの操作でクルマの向きを変えるという行為には及ばないが、ステアリングもペダルもドライバーの操作に対して素直で気持ちよく、純粋ドライビングを楽しめるセッティングだ。

M2の価格は770万円。今回の試乗車はオプション(ロングビーチブルーの車体色、コネクティッド・ドライブ・プレミアム、アダプティブヘッドライト)が22.2万分装着されていた。けっしてリーズナブルな価格ではないが、『M4クーペ』だと1075万円の車両本体価格、レクサス『RC F』が954万円と周囲を見回してみると、高価な中での買い得感が漂っている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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