ジェイテクト 伊賀試験場で、トルセン タイプB を体験試乗

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先代トヨタ オーリス RS
先代トヨタ オーリス RS 全 10 枚 拡大写真

ジェイテクトは7月14日、三重県伊賀市の「伊賀試験場」で、基幹事業の一つである駆動製品の体験会をメディア向けに行った。

2006年に光洋精工と豊田工機が合併して誕生し、今年10周年を迎えたジェイテクト。同社のスローガンである「No.1 & Only One」通り、世界シェアで「ナンバー1」、技術的に「オンリーワン」の商品であるのが、同社の「TORSEN(トルセン)」だ。

トルセンとは機械式(メカ式)LSD(リミテッド スリップ デファレンシャル)の一種であり、トルク配分や差動制限を行う部分に歯車(ギア)を使った、トルク感応型LSDである。

もともとは米国の歯車機械メーカー、Gleason Works社が1982年に事業化したものだが、1989年に日本のヂーゼル機器(翌年ゼクセルに社名変更)がトルセン事業を買収し、日本車に初採用(トヨタ『セリカ GT-FOUR』)。そのゼクセルは2000年にボッシュ傘下に入ったが、2003年に豊田工機がトルセン事業を買収して今に至っている。

また、トルセンと一口に言っても、正確にはタイプA、タイプB、タイプCの3種類がある

タイプAはウォームギアを使った初期型トルセンで、高いトルクバイアス比(空転側タイヤに対する駆動側タイヤのトルクの倍率)を持つタイプ。リア、センター、フロントのどこにでも使えるが、現在は高速回転時の特性などから現行車には使われていない。

タイプBはヘリカルギアを使ったもので、主にFRスポーツモデル(トヨタ『86』、レクサス『IS F』『RC F』など)のリアデフに使われているが、最近では高性能FF車(プジョー『RCZ R』『208GTi』)にも採用されているという。低バイアスで、特性の穏やかなバランス型とされるが、トルクバイアス比は2.8程度はあるという。ちなみにヘリカルギアを使ったLSDは他社にもあり、例えばマツダ ロードスターの「スーパーLSD」もヘリカルLSDの一種だが、トルセン タイプBの方がバイアス比は高めだという。

2003年に登場したタイプCは、遊星ギア(プラネタリギア)を使ったトルク不等配分タイプで(基本配分は40:60など)、その特性からフルタイム4WD車のセンターデフに使われる。主な採用例は、トヨタの『ランドクルーザー』や『プラド』、アウディ『A4』以上の「クワトロ」モデル、VW『トゥアレグ』、ポルシェ 『カイエン』、ランドローバー『レンジローバー スポーツ』などだ。

体験会は、東京ドームより一回り広い5万4000平方mの平滑路面を備えたダイナミクスパッドで行われた。用意されたのは、トヨタ 86(6MT)のトルセンLSD搭載車と非搭載車、そして先代トヨタ『オーリス RS』(1.8L、6MT)のトルセンLSD搭載車(実験車両)と非搭載車の計4台。残念ながらこの4台のステアリングを握ることはできず、同社テストドライバーの運転による同乗走行になった。

まずは86から。トルセン非搭載車(中間グレードのG)とトルセン搭載車(上級グレードのGT)の2台を試す。グレードが違うので、全てがトルセンの有無による差とは言えないが(例えばタイヤは、Gが16インチ、GTは17インチ)、やはりトルセン非搭載車は助手席でも分かるほどトラクション感が希薄で、アンダーステアが強く、脱出時のトラクション感(路面を蹴る感じ)も明らかに薄い。

一方のトルセン搭載車は、発進直後からエンジン自体が異なるように元気に加速。コーナー侵入時のフィーリングに大差はないと思えたが、旋回中のアンダーステアは明らかに小さく、脱出時にはリアを軽く振りだすこともできる。出来ればステアリングを握ってみたかったが、いずれにしてもトルセン有無の違いは明白。個人的には多板クラッチ式の「いわゆる機械式LSD」と直接比較したいところだが、言うまでもなくトルセンならバキバキという異音やショックとは無縁であり、基本的にメンテナンスフリーでもある。

次はオーリス。まずは市販車と同じトルセン非搭載車に乗る。パイロンコースでの旋回では、ペースを上げようとすると軌跡が外に膨らむ、典型的なアンダーステアに陥る。次に乗ったのは、トルセンを搭載した同型オーリスの実験車両。こちらは直線で加速する時点で早くもトラクション感が高く、アンダーステアは軽微で、ステアリングを切った方向にグイグイ曲がっていく。

ただ、FF車にLSDを搭載した場合は、アクセルのオン・オフでステアリングがとられるトルクステアの発生が問題になるが、この実験車両では電動パワーステアリング(ハードウエア自体は市販車と同じジェイテクト製)の制御ロジックを変更することで、そうした違和感を解消しているという。電動パワステで世界シェアトップの同社ならではの工夫。この車両は完成車メーカーへの提案用でもあるとのことだ。

《丹羽圭@DAYS》

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