【プジョー 308GTi 試乗】マジで褒めていい1台…中村孝仁

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プジョー 308GTi 250
プジョー 308GTi 250 全 19 枚 拡大写真

「by プジョー・スポール」という尾ひれが車名の後ろにつく。今でこそ目立ったレース活動をしていないプジョー・スポールだが、かつてはF1から、ルマン、WRCなど主要レースで活躍したプジョーのレース部門であ。

そのプジョー・スポールが仕立て上げたのが、今回の『308GTi 250』。因みにさらにパワフルな「270」仕様も存在する。この二つ、単純にパワーの違いで前者が250ps、後者が270psというもの。と、さらりと言ってしまうと少々誤解を生じるので、補足説明すると、タイヤホイールは250が18インチ。270では19インチに。さらにブレーキディスクの径も250と270では異なる。足はともに専用スポーツサスペンションを持つが、どうやらセッティングは異なるようだ。そして270はトルセンデフを標準装備する。

とまあ、ざっとこのような違いがあるのだが、この違いを明確にするにはサーキットに持ち込む必要があるほど。そして一般道におけるしなやかな乗り心地という点では明らかに250に分があるので、日常的に使うには多分250が正しいチョイスのように思う。

それにしても文武両道というか、ハード/ソフトというか、相反するような性能をともに最高の次元で成立させているという点において、このクルマは際立ったバランスの高さを示す。残念ながらマニュアルミッションの設定しかないから、オートマ限定ドライバーには乗れない。今時マニュアル?というユーザーもいるだろう。そして、久しぶりにやんちゃなホットハッチ(古い!)に乗った筆者も、しばらくはそのマニュアルの挙動をうまく制御することが出来なかった(要するに下手ということ)。久しくマニュアルに乗らないと、明らかに腕が鈍る。慣れるまでには丸1日を要した。とはいえ、一旦慣れてしまうとマニュアルを操る愉しさがモリモリと湧いて来る。

かつてプジョーが『306』/『406』を出していた時代、そのハンドリングの正確さと挙動の素晴らしさは、少なくとも個人的には当時どこも及ばないベストなセッティングだったと感じていたが、そのプジョーの黄金時代が再び戻ってきた印象を、このクルマで受けた。猫足といわれたサスペンションの挙動も、当時を彷彿させる。

ただし、当時は本当に速い転舵でクルマを左右に振ると、サスペンションの動きが追い付かずにいわゆるステアリングの位相遅れを生じさせたが、この308GTiはそんなことは一切なく、きわめて正確にそして速い転舵にも対応する。しかも猫足で15mmもローダウンされているにもかかわらず、不快な突き上げ感は一切なし。見事なほどしなやかに、そして鋭い切れ味のコーナリングを示してくれるのだ。

僅か1.6リットルで250psを発揮させているパワーユニットは、何と最大過給圧2.5バールでそれを可能にする。スポーツモードをチョイスすると、メーター内にブースト計の他に、パワーとトルクをバーグラフで示すメーターが現れる。フルスロットルにするとその過給圧は見事に2.5の数値を示す。ほとんどどの領域からも切れ目ないターボラグを全く感じさせない加速感を得ることが出来るのは予想外だった。

およそ750kmほどを走り回り、その中ではポルシェ『911』やアウディ『S8』、BMW『528』あたりと軽いドッグファイトをするやんちゃもやってしまったが、少なくとも相手が加速した際に、こちらが遅れを取るということは全くなく、加速では負ける気がしない。まあそれほどの性能を持っているということだ。

6速のマニュアルシフトは自分の好みから言えば、横方向、特に2速から3速へのシフトアップの際にスムーズにシフトできない傾向があって、やや開き過ぎを感じたが、これは好みによるもののような気がする。いずれにせよシフト自体は総じて極めてスムーズで、スポッ、スポッと決まってくれる。

決して省エネ運転をしない、750kmの旅で得た総燃費は、12.8km/リットル。JC08モード燃費が15.5km/リットルであることを考えれば、非常に優秀といえよう。因みにトルクフルなエンジンは1速で3000rpmまで引っ張れば、あとはそのまま3速に入れても1500rpm、そのまま少し加速して5速という、1段跳びのシフト操作を受け付け、日常的に乗るにはその方が、パッセンジャーも快適に乗れる。

柔と剛を見事に両立させたこのクルマ、マジで褒めてやりたい1台である。少なくとも走って楽しい、そしてしなやかという点では明らかにVWゴルフGTIを凌駕すると個人的には思うし、何よりそのシートの快適さは文句なくこちらが上であった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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