スバル、もうひとつのDNA…エンジニアは板金からサス交換までこなす

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スバルドライビングアカデミー
スバルドライビングアカデミー 全 11 枚 拡大写真

スバルは、8月6日、7日の2日間、栃木県の技術実験センターにおいて、今年からスタートさせた「スバルドライビングアカデミー(SDA)」の記者説明会を行った。同アカデミーは、エンジニアにもテストドライブによる高度な性能評価スキルを身につけさせるために設立された。

説明会では、アカデミーのインストラクター、受講生、ゲストスピーカーを交えたトークセッションが設定され、受講生に個別の話を聞くこともできた。

トークセッションは、インストラクターを代表して秋山轍氏(スバル研究実験センター管理課 課長)、受講生代表 中路智晴氏(車両研究実験第1部)、ゲストスピーカーはことし9月に先行受注を開始する新型インプレッサの開発責任者 阿部一博氏の3名で行われた。

秋山氏は、1989年にレガシィ10万km最高速記録を達成したときのドライバーの一人。このときも社員が一丸となって記録に挑戦したそうだが、「スバルは歴史的に、エンジニアの守備範囲が広い。航空機を作っているときから、図面も専門のドラフターではなく自分で引いていたそうで、自分も最初の配属はブレーキの設計部門だったが、そこでは板金から溶接まで自分でこなしていた」という。

中路氏も、実験部に移る前は設計部門だったが、当たり前のようにタイヤの組み付けやサスペンション交換などやらされたという。しかし、「この経験は設計にも多いに役立ち、実験部に移っても自分で思いついた改良点を、その場で部品を作り試したりできる。結果が思い通りだととてもうれしいので、つい楽しんでやってしまう」

ITの世界では、サービス開発やシステム開発がメインフレームなどから、ウェブ、モバイルデバイスに移ってきたため「フルスタックエンジニア」として、設計、開発、運用、ネットワーク・サーバー管理など幅広い分野の知識やスキルを持つことが有利とされている。スバルのスタイルはそれに近いといえるかもしれない。

阿部氏も車体構造設計の経験があり、いまは商品企画がメインとなっている。新型インプレッサの開発(およびスバルグローバルプラットフォーム:SGP)では、リアスタビライザーの片方を車体に取り付ける方式を採用している。通常は、リアアクスルのサブフレームに取り付けるものだが、片側が車体固定となると、組み立て工程が変わる。生産技術的には手間が増えたり、ラインを作りなおさなければならなくなるなど、採用にはハードルが高い設計だ。

しかし、藤貫哲郎氏(車両研究実験第1部 部長)他、現場からアイデアをだされ、実際乗ってみるとあきらかに動き、剛性感が違った(阿部氏)という。阿部氏によれば、藤貫氏や実験部の常とう手段らしく、乗ってみて体感してしまうと、予算やスケジュールの困難があっても「なんとかしたくなってしまう」と阿部氏は吐露する。

設計エンジニアだからといって、製図版やCADに張り付いているだけでないスバルらしい開発エピソードだろう。

トークセッション後、アカデミー受講生のひとり、桑原悟氏(車両研究実験第1部)にも、自らのテスト走行やSDAの取り組みが設計に役立った点を聞いた。桑原氏は、新型インプレッサでは操縦安定性や乗り心地を担当した。

モノコックのサイドフレームをリアのサイドメンバー部分まで変曲点や接合部がなく連続的につなげた設計、フロントサスのロアアームのクロスメンバー取り付け部、ハブとハウジングの締め付けトルク、といった点を挙げてくれた。ハブの締め付けトルクの調整は、大きな入力、操作ではあまり影響はないが、テストコースで微妙な操作で変化が現れる。この微妙な違いもSDAでの走行訓練があったから感じ取れたという。

《中尾真二》

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