【SUPER GT】脇阪寿一監督「特等席から語るこのシリーズの面白さ」…鈴鹿1000km直前インタビュー前編

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脇阪寿一監督
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“ミスターSUPER GT”こと脇阪寿一監督(LEXUS TEAM LEMANS WAKO'S)が、週末(27~28日)に迫った第6戦「鈴鹿1000km」を前に、SUPER GTというシリーズ、そして鈴鹿1000kmという伝統あるレースの魅力を語る。前編は今季前半総括とシリーズの魅力についてだ。

44歳となる今季開幕前にGT500クラスドライバーとしての充実のキャリア(個人王座獲得3回)に終止符を打ち、自身初王座獲得時(02年)の所属チームである「LEXUS TEAM LEMANS WAKO'S」の監督に就任した脇阪寿一(他シリーズでは現役)。ミスターSUPER GTとも呼ばれる存在感は監督になっても不変で、サーキットではGT500現役ドライバーたちと互角以上の人気を依然として誇る。

それは彼がドライバーとしての実績や走りの凄みに秀でていたからだけではなく、GT500現役時から国内最高人気のSUPER GTシリーズにモータースポーツの未来を拓く可能性を感じ、それを信じて、ファン層を広げる活動に常に高い意識をもって取り組んできたからである。現役第一線を退いても、脇阪寿一の名はSUPER GTの核のひとつなのだ。

目前に近づいた鈴鹿1000kmは今季実質5戦目。まずはここまでの4レースについて、脇阪監督は自チームの戦いをどう自己分析しているのだろうか。

◆監督1年目、チームの成長を確実に実感中

----:表彰台にこそ手が届いてはいませんが(決勝最高4位、ポールポジション1回)、ここまで毎戦でドライバーズポイントを獲得し、大嶋和也選手とアンドレア・カルダレッリ選手のコンビはGT500クラスのドライバーズランク5位につけています。ここまでの戦いを振り返ってください。

脇阪寿一監督(以下、敬称略):僕の実力、チームの実力、ドライバーの実力というものを全てあわせて考えた時に、「毎年確実に勝てる、毎年チャンピオン争いができる」というレベルにはまだ足りないところが少しあります。今年は着実にチーム全体が成長して、来季以降は常に勝てるチーム、毎年チャンピオンを争えるチームになれるようにしていきたい。そう思ってやっているなかで、僕が絶対に落としたくないのが「毎戦ポイントを獲る」というところでもあります。チーム改革を進めている状況下で、まわりの取りこぼしに助けられたりもしてはいますが、ランキング的にも5位。皆、よくやってくれている、頑張っていると思います。

----:監督として変化を感じる部分はどのあたりに?

脇阪:チームスタッフそれぞれの顔つきが変わり、ドライバーの志がより高くなったと感じています。それが全戦ポイントにもつながっているんだろうと思いますね。それと、同じTEAM LEMANSでスーパーフォーミュラ(SF)を戦っている小林可夢偉、世界を知る彼とのやり取りが僕のひとつのバロメーターにもなっているんですが、彼もこのチームを見てくれている状況のなかで、最近、僕にとって(SUPER GTチームにとって)ポジティブなことを伝えてくれたことがあったんです。

----:そういうことも含めて、チーム成長の実感が得られている。

脇阪:第2戦の富士で(走路外走行による罰則が原因で)予選最後尾になった時もレースでは5位に入りましたし、第4戦SUGOで(ポール発進から先頭を走りながらGT300クラスとの交錯により)遅れをとった後でも、今の我々のチームは順位を上げていくことができている。タラレバですけど、SUGOに関しては最後に赤旗中断のままレース終了とならなければ、ひょっとして勝てていた可能性もあったと思います(結果は4位)。そういう力が徐々についてきていますから、いつか必然で勝てるようになりたいですね。

「やっぱりSUPER GTって面白い」その理由

----:勝てた可能性もあったSUGO戦のレース直後、「やっぱりSUPER GTって面白いね」という、実に印象的な感想を語っていました。

脇阪:現役時代、僕がスタートをあまり担当しなかった最大の理由は、スタートを外から見られないことでした。僕はあれだけのお客さんが入っているなかでのSUPER GTのスタートが見たかったんですよ(笑)。それに今のSUPER GTはレース中に太陽がチラッと顔を出した瞬間、ピットではあるチームのエンジニアがニコッとして、別のチームのエンジニアが「まずい」という顔をしたりする。それくらいのところでレースをしているんです。もちろん、監督として自分のチームにとってベストになるように一生懸命頑張らせてもらいながらですが、レクサス勢のいろんな状況も分かっているなかで、特等席で見させてもらっている感覚がありますね。

----:太陽のお話は、世界的にも今や希少なタイヤ戦争があるSUPER GTだからこそ、の部分ですね。

脇阪:今は1回のスティントのなかで、タイヤの微妙な状況によるトップグループの勢力図変化が3回、10周ごとくらいにあるんですよ。30周して最終的に一番速かったのはどこのチームが履いたタイヤか、という勝負をしているわけです。そして、そのタイヤにしっかり仕事をさせられるかどうかはドライバーの役目です。同じタイヤでも、ドライバーによって大きな違いが出ますから。

----:ドライバー、タイヤ、マシン、作戦、あらゆる面で高次元な戦いがSUPER GTにはある。

脇阪:たくさんのSUPER GTファンがいてくださるなかで、まだまだ入りたての人も多いと思うんです。でも、レースを好きになって、どんどん奥に入っていってくれたら、こういう深みのある楽しみ方もあるということなんですよ。ですから、SUPER GTはファンを飽きさせることがない。そこに興行的な未来もあると、僕は思っています。

さらに脇阪監督は「今はおじいちゃん、お父さん、子供と、3世代で見に来てくれる家族も多いですよね」と話す。そして「レースを楽しむための道具(スマホ等)も変わってきていますが、今の子供たちが二十歳になる頃にはもっと変わっているはずです。そうなっても、SUPER GTはファンにまた新しい楽しみ方を与えられるだろうと思います」とも。

楽しさ満載のSUPER GTは、通常は300kmレース。シリーズ最長の鈴鹿1000kmではそういった楽しみが3倍以上、「1000kmも楽しめる」と脇阪監督。インタビュー後編では伝統の一戦でもある鈴鹿1000kmについての脇阪監督の思いと、今年のレースの展望等について訊く。

《遠藤俊幸》

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