【マツダ アクセラ 試乗】「気がつかないけれど、効いている」人馬一体への進化…高山正寛

試乗記 国産車
マツダ アクセラ 改良新型(SKYACTIV-D 1.5)
マツダ アクセラ 改良新型(SKYACTIV-D 1.5) 全 42 枚 拡大写真

「第6世代」と呼ばれるマツダ車の現行ラインナップ。2012年に市場導入された『CX-5』に始まり、2015年の『ロードスター』まで6車種が「人間中心」と呼ばれる哲学において開発されていることは多くの人が実際の目で見、またオーナーになることでそれを体感してきたはずだ。

ただその車種ラインナップの中で、年次改良こそ実施してはいるが、商品力の面でも遅れを感じていたのが『アクセラ』である。しかし、安心していい。遅れどころか一気に最先端に躍り出たのが今回のアクセラだ。マツダが大々的に「大幅改良」と謳うだけのことはある。

ここでは書き切れないほどの変更には驚くばかりだが、マツダ車の現在の強みは良いと思える技術が(他のマツダ車に)あれば積極的に搭載する「技術の横断的採用」にあると思っている。『CX-3』から『デミオ』を経て採用した「ナチュラル・サウンド・スムーザー」や「DE精密過給制御」はもちろんだが、今回はノック音をさらに低減させる「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」、そして後述するが今後のマツダ車のダイナミック性能の鍵のひとつとなるであろう「Gベクタリングコントロール(以下GVC)」をこのアクセラから搭載した。一気に最先端に躍り出たというのはこういう理由からである。

試乗は今回最大のニュースであるデミオやCX-3に搭載されている1.5リットル直4DOHCディーゼルターボエンジンの搭載した「15XDプロアクティブ」を中心に行った。自然吸気ならではのフィーリングの良さを持っていた2リットルのNAエンジンがラインナップから落ちてしまったのは残念だが、アクセラの場合、1.5リットルガソリンエンジンが販売の主力であったからディーゼルエンジンとのトレードオフはやむ得ないと考える。

まず前提としてこのエンジンを搭載するアクセラはデミオと比べると約230kg、CX-3と比較しても約100kg重い。確かにデミオに比べれば出だしの「軽さ」は体感できないかもしれないが、そこは新採用の制御も含めて、非常にスムーズである。加速が鈍いのでは?という心配は気にしなくていい。またディーゼル特有の音は十分抑え込まれているし、ストップ&ゴーの多い市街地だけでなく高速時のクルージングでも快適である。もしわがままを言わせてもらうのであれば、次は「聴感上、もっと気持ちの良い音質」へのアップグレードである。

新しい制御技術やクルマ自体の作り込みもしっかりしていることから「クルマとの一体感」という点ではアクセラはかなり進化している。ただ人間は五感で感じる生き物だから、エンジン音のリニアさというか、車速やエンジン回転数の上昇に即した“音”が欲しくなる。静かにする技術は世界でもトップクラスのレベルに達してきた。だからこそ「気持ちの良い(ディーゼル)音」が欲しくなるのである。

さて多くの人が知りたいと思っている「GVC」であるが、結論から言うと「感じ取るのは難しい。しかし走りの質は確実に向上した」ということである。

筆者の運転技量の未熟さを露呈するわけでもないが、そもそも今回の変更でダンパーの特性やスタビライザー径なども大きく変更している。GVCはシャシー性能を高める技術のひとつだが、これらがすべて相まったからこそ質感の向上に繋がっていると感じた。ただマツダの名誉のために言っておくとGVCをON/OFFにした走りの差を客観的に見られるデータを提供されたのだが、その差は歴然、操舵時のブレは明らかに減少していることは証明されている。

「気がつかないけれど、効いている」結果として人馬一体を常に目指すマツダのクルマ作りはまた一歩進化したし、これらの技術が他のマツダ車に採用されることは間違いないはず。1.5リットルディーゼルや最新技術を搭載したことで日本車の中ではやや元気のないCセグメントに新しい価値を提供したと言えるだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

高山正寛│ ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員
1959年生まれ。自動車専門誌で20年以上にわたり新車記事&カーAVを担当しフリーランスへ。途中5年間エンターテインメント業界でゲーム関連のビジネスにも関わる。カーナビゲーションを含めたITSや先進技術のあらゆる事象を網羅。ITS EVANGELIST(カーナビ伝道師)として自ら年に数台の最新モデルを購入し布教(普及)活動を続ける。またカーナビのほか、カーオーディオから携帯電話/PC/家電まで“デジタルガジェット”に精通、そして自動車評論家としての顔も持つ。

《高山 正寛》

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