【SL乗務員OBトーク #1】弁当が腐らない蒸機、闇添、ゴサンと生きる

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トークイベント「乗務員が語る蒸機時代2」に登壇した大山正氏、川端新二氏、宇田賢吉氏(第17回国際鉄道模型コンベンション、8月21日、東京ビッグサイト)
トークイベント「乗務員が語る蒸機時代2」に登壇した大山正氏、川端新二氏、宇田賢吉氏(第17回国際鉄道模型コンベンション、8月21日、東京ビッグサイト) 全 6 枚 拡大写真

70~80歳代の元SL機関士が本音で語るトークショー「乗務員が語る蒸機時代2」では、88歳の蒸気機関士が、日本では数少ない3シリンダー機のC53型蒸気機関車との思い出や、朝ドラ登場人物とのエピソード、「闇添」、弁当が腐らない蒸機などについて、リアルトークを展開した。

このトークショーは、第17回国際鉄道模型コンベンション(千葉市、幕張メッセ)の8月21日のステージで開催されたもので、川端新二氏、宇田賢吉氏、大山正氏の3人が1時間半にわたって語った内容だ。

川端新二氏は、1943年(昭和18年)に国鉄入り。名古屋機関区の庫内手、機関助手を経て、蒸気機関車の機関士に。おもに東海道線や関西線に乗務。宇田賢吉氏は、1958年(昭和33年)に国鉄入り。糸崎機関区(広島県)を経て、昭和40年から機関士に。C62型やC59型などの蒸気機関車に乗務。大山正氏は、1962年(昭和37年)年に国鉄入り。C60型、C61型、C62型という3形式の“ハドソン”が最後の活躍をみせた仙台機関区で機関士を経験した。

初回は、88歳の元機関士、川端さんの蒸気時代の痛快だがリアルな話だ。

C53(ゴサン)とともに生きる

「わたしはC53と同い年。普通、蒸気機関車というと、左右にひとつずつシリンダーがあるが、C53はもう一本、まんなかにシリンダーがある。さきに鉄道省は大正15年に8200をアメリカから5両入れた。これを参考にC53型をまず7両つくった。ものすごい石炭がよく燃えた。C57型なんかは排気が弱くて燃えなかった」

「これまで蒸気機関車の機関士を務めていて、乗っていていちばん辛かったのは、C62。C62の夏は地獄だった。それを考えると、C53は天国。夏は、窓が大きくて、機関助士でも涼しく風にあたっていた。そうしたことができたのも“ゴサン”だけ。夏は涼しいし静かに走る」

「ゴサンは、前にも後ろにもびくとも動かない時があった。この『不動事故』というトラブルがゴサンにはあった」

「中央に3本目のシリンダーがあるために、沼津から名古屋まで250kmを走るときには、検査係がボイラーのなかにはいってシリンダーに油をさすという危険なこともやっていた。当局は『そんな危険なことをするな』といいながら黙認していた」

「C53は乗務員の弁当が腐らない。テンダー部分にツールボックスあり、弁当を置いておく。D50とかD51などの機関車はツールボックスが座席下などにあった。これだと弁当がすぐに腐っちゃう。名古屋から浜松へ行く途中でみんな腐っちゃう」

「97両すべてが廃車になったとき、国会で問題になった。『登場して20年ぐらいしか経っていないものをなんで解体するんだ』と」

朝ドラの登場人物も乗車

「いまから57年前、運転する蒸気機関車に、花森安治さん、大橋芳子さん、カメラマンと女性編集者が、わたしの運転するD50に乗って関西線を走ったことがある」

「花森さんがこちらに質問してきた。『カマの温度は何度か、煙突から出る排気の温度は何度か』と。指導機関士が『200度ぐらいだ』と伝えると、『この温度で飯が炊ける、もったいない』『効率が悪い』と言っていた。さらに、『10トン積みの石炭で、実際には4トンを使うと。じゃあ6トンは死重じゃないか』と。

「それでも最後は『釜炊きって、石炭を放るだけと思っていたが、えらい仕事だ。すごい仕事だ』と感激して去っていった。当時の花森さんが45歳、僕が30歳のときの話。そんな彼も蒸気機関車のファンだった」

「それから“闇添”。この無許可で運転室に添乗させることを何十回、させたかわからない。もう、いまのJRだったら、僕の首は20回ぐらい飛んでいるはず。『(関西線の)八田駅まで客車に乗っとれ』といって、名古屋機関区が過ぎたあたりから乗せてあげた。合計で50人は乗せてあげた」

《レスポンス編集部》

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