【VW ザ・ビートル デューン 試乗】デューンバギーの面影はないけれど…中村孝仁

試乗記 輸入車
VW ザ・ビートル デューン
VW ザ・ビートル デューン 全 16 枚 拡大写真

そもそも、“Dune”が何を意味するか。「砂丘」である。しかし、その砂丘に込められたVWの意図を理解する読者は既に少なくなっているかもしれない。

1968年、あのスティーブ・マックィーンが主演した映画、「華麗なる賭け」の中で、マックィーンが砂丘を乗り回したモデルがデューンバギー。何を隠そう、当時の「ビートル」のメカニカルコンポーネンツにグラスファイバーの軽妙なオープンボディをかぶせたモデルで、それ自体VWが販売したわけではない。デューンバギーの生みの親はブルース・メイヤーズ(Bruce Meyers)という人で、今もサザン・カリフォルニア在住の人だそうだが、彼が作り上げたメイヤー・マンクスという乗り物こそ、スティーブ・マックィーンが映画で乗り回したデューンバギーだったのである。

そんなデューンバギーのイメージで作り上げられた限定モデルがこの『ザ・ビートルデューン』なのであって、名前の由来はここにある。VWではザ・ビートル初のクロスオーバーモデルと謳っているが、その訴求に関しては個人的にかなり抵抗がある。そもそも、単に車高を上げてそれらしいドレスアップをすればクロスオーバーと呼べるのか、という点だ。VWはクロス○○が好きだから、それならDuneではなくてクロス・ビートルにすればよかったのに…とケチをつけたくなる。でも、あのデューンバギーとは似ても似つかなくても、Duneの名を得たザ・ビートルは可愛い。

既存ビートルからの変更点といえば、エクステリアはサンドストームイエローメタリックと呼ばれる砂丘をイメージしたカラーリング。これにフェンダーを縁取るブラックモールディングや、フロントのアンダーガード付きバンパー、リアデフューザーなどが特徴で、18インチタイヤを装着したボディは、専用サスペンションで車高が15mm高いからすぐに気が付くほど顕著にノーマルビートルとは異なる。18インチホイールはビートルターボでも使用しているからこれが初めてというわけではないが、やはり見た目にはだいぶ大きい。

さてエンジンスタート…といって一瞬迷った。元々このクルマは『ゴルフV』のプラットフォームを使ったクルマで、アクセサリー類もそれに準じていたはず。キーシリンダーにキ―を挿して回すエンジンスタートだったはずなのに、いつの間にやらスターターボタン式になっていた。乗っていなかった証拠である。気を取り直してエンジンスタートだ。

搭載エンジンは最新の『ゴルフGTE』と同じで、150psの1.4リットルTSIが搭載されている。電気モーターはないが回生機能は装備している。ビートルには105psの1.2リットルと211psの2リットルしか用意されていないかったので、その間を埋める丁度良いエンジンが用意された。

+15mmの専用サスペンションは、車高を上げると同時に快適性を増しているように感じられた。少なくともドイツ車にありがちだった比較的強めのハーシュネスを感じさせないどころか、非常にマイルドな乗り心地を示す。装着タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ3。見た目は結構ごつごつした印象を与える外観だが、見ると乗るとでは大違いだ。古いトーションビームのサスペンションを持つにしては上出来の乗り心地である。

インテリアも外観同様サンドストームイエローメタリックで塗られたインパネを持ち、メーター類も黄色い帯がデザインされたもので、徹底した砂丘イメージ。こちらも専用デザインというシートもなかなか快適だ。一応スポーツシートということだが、横方向のサポート性能はあまり期待しない方が良い。

このクルマに乗っていつも一番困るのが、乗降性の悪さ。大きなドアはちゃんと開けば開口面積は大きいのだが、身長160cmで、シートを前に出すポジションを取っていると、ドアは重いし乗降スペースは狭いしで、結局シートを一番後ろまで下げて乗り降りすることになる。恐らく女性ドライバーで似たような経験をした人は少なくないと思う。もっともこれは小さな要素で、そもそもビートルに興味を持つユーザーは圧倒的にそのデザインに惚れて買うはずだから、外見で特徴を出したDune に関心を示すユーザーは多いと思う。因みに販売は限定500台である。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 2.5Lエンジンを搭載する『インプレッサ』登場、米2026年モデルに「RS」
  2. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
  3. 新型アウディ『Q3』のインテリアを公開、「コラム式シフト」と新デジタルコックピットが目玉に
  4. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
  5. シボレー『コルベット』がニュルブルクリンクで「米国メーカー最速ラップ」樹立
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
  3. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  4. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  5. 湘南から走り出した車、フェアレディZやエルグランド…日産車体が量産終了へ
ランキングをもっと見る