天然ガス、石油に代わるエネルギーとなるか

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天然ガス、石油に代わるエネルギーとなるか
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「天然ガス自動車」と聞いてどのようなイメージを持たれるだろうか?我々はもしかしたら天然ガス自動車に対して抱いているイメージを変える必要があるかもしれない。

日本では「地球にやさしい」としてバスや小型トラックで天然ガス自動車の運用が一部ではじまっているが、乗用車として使われている例はまだほとんど見られない。数字にすると4.5万台が普及しているが、世界では2,000万台を超える天然ガス自動車が普及しており、そのうちの84%は乗用車だ。理由は、燃料である天然ガスがほかの自動車に比べて安価で購入することができ、かつCO2排出量が少ないといわれていることだ。

◆天然ガス自動車はEVやFCVよりもCO2排出量が少ない

天然ガス自動車はCO2排出量が少なく環境にいいというメリットがあったが、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)もCO2排出量が少ない自動車として有名である。では、CNGと比べるとどちらのCO2排出量が少ないのだろうか。

EVとFCVのどちらもたしかに運転時はCO2を排出しない。しかし実際は、EVは燃料となる電力の発電時に、FCVは水素製造時にそれぞれCO2が排出されており、そのことについては議論に挙がらないことが多い。

また畑村氏の計算では、天然ガス自動車よりもEVやFCVのCO2排出量の方が多いという結果が出る。これは理論上のデータではあるが、ひとつの大きな裏付けにはなるのではないだろうか。

他にも天然ガスが燃焼時に排出するCO2量はガソリンの20%以上も少なく、環境にやさしいと言われている。実際に大気汚染が著しい中国では、大気汚染対策のために2000年代からCNGを急速に取り入れ始め、その数は400万台を超えている。またインドでも環境にやさしい自動車として、直近10年間での普及台数が3倍になっている。

◆CNGは国内で産出し、再利用もできるようになる? 新しい未来プロジェクト

現在、CNGは安価で購入できる上、CO2の排出量が少なく、環境にやさしいというメリットがあるが、さらには短期的にも長期的にもCO2の排出量低減の手段としての可能性を秘めている。

ひとつは、太陽光で集めた電力を水素やメタンという科学エネルギーに分解して貯蔵するというものだ。

ふたつ目は「グローバル二酸化炭素リサイクル」というプロジェクトだ。まず日本の工場で発生したCO2を液体化しLNGタンカーで中東に運ぶ。そして現地の豊富な太陽光から生み出される電力で製造した水素と、タンカーで運んできた液化CO2とを反応させメタンを精製し、このメタンを日本で再利用するというものだ。

このプロジェクトは日立造船・アタカ大機・PTTEPの3社で共同開発を進めており、これが実現すれば既存の天然ガスのインフラを活用し、日本の工場をCO2排出量ゼロに抑えて操業することが可能になる。

このように、天然ガスには短期的にも長期的にもCO2排出量低減の手段となる。運輸部門において、日本で天然ガスを燃料にする乗用車が普及していくことは大きなメリットがあると言えるだろう。

※本記事は広報とらっく誌 4月15日号に掲載された、畑村耕一氏(畑村エンジン研究事務所代表)の寄稿「大きく広がる天然ガス自動車とメタン社会の可能性」を再編集・再構成したものです。

《編集部》

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