EVが普及するとCO2が増える? CNG車が秘める可能性は

エコカー EV
出典:「天然ガス自動車の可能性調査」 畑村エンジン研究所(2016年3月)
出典:「天然ガス自動車の可能性調査」 畑村エンジン研究所(2016年3月) 全 4 枚 拡大写真

ガソリンよりCNGの方が安価だ。CNG車が普及拡大して、CNGがガソリン並みに課税されると価格競争力が劣るかもしれない。しかし、ガソリンは今後値上がりする可能性が高いため、CNGの優位性は変わらないだろう。

一方、ガソリンの1リットルのエネルギー量に相当する電力価格はガソリンの約3倍だ。電気は高価なエネルギーと言える。ただし、電気自動車(EV)を割安な夜間電力で充電する場合、EVのモーターはガソリン車の内燃機関に比べ高効率のため、実際の燃料費はガソリン車の3分の1になる。

環境性で見ると天然ガスはCO2排出量がガソリンより24%低い。そのためCNGエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車のCO2排出量は「Well to Wheel」(燃料の採掘から消費まで)見た場合、EVや都市ガス改質の燃料電池車(FCV)よりも低い。

EVは供給される電気の発電形態によりCO2排出量が大きく異る。2030年に再生可能エネルギーの導入が進んだ東日本でEVが248万台(全国600万台)普及した発電構成を検討した例がある。248万台のEVを一晩フル充電するためには110万kW電力で、約8時間充電する必要がある。EVが増加すると、その分、発電コストが安い揚水発電や石炭火力からの発電が増加すると予測する。仮にEVが普及しない場合、その分の電力を製造するのに伴うCO2排出量を減らすことができる。

一般的に全電源平均の排出量を使ってEVのCO2排出量を算出しているが、実際はEVはない場合にどの発電所を止めるかによってCO2の増加は決まる。もしEV普及に必要な発電力容量の石炭火力が不要になれば、その分のCO2排出を制御できる。EVの充電を石炭火力で賄うとすると、EV普及で増加するCO2排出量は従来エンジン車と変わらないのが現実だ。

極論すると、補助金を使ってEVを普及させるとCO2排出を増やす結果になる。EVに必要な電池の製造時のCO2排出も考えると、EVよりもガソリンのハイブリッド車やCNG車を普及させるほうが、CO2削減効果は高い。よりCO2排出量が少ないCNGハイブリッド車なら、さらに環境負荷は低くなる。

太陽光発電で水素を作り、それでFCVを走らせると、最もCO2排出は少ないが、効率は40%以下とロスが大きいため、太陽光発電の電気は系統に投入してその分だけ火力発電を止めてCNG車を走らせた方がCO2は減る。

日本の部品メーカーHKSが試作したCNGハイブリッド車はガソリン車に比べ62%、ガソリンハイブリッド車よりも24%CO2を削減できる。アウディはe-gasプロジェクトを進めている。同プロジェクトはCO2と再生可能エネルギー由来の水素からメタンを合成している。そのメタンをCNG車で利用することで、CO2排出ゼロに近い走行が可能になる。再生可能エネルギーの電力を使うEVと比較しても、e-gasを使うCNG車の方が、ライフサイクルでのCO2排出量が少ないという試算が出されている。

CNG車は技術的に改良の余地が大きく、もっと効率を上げることが可能だ。天然ガスは圧縮比を上げても異常燃焼が起こりにくい特性がある。最新技術を用いた直噴天然ガスエンジンではCO2排出を最大38%削減できると試算する。

CNG車はライフサイクル以外にユーザーへの魅力が乏しいため、低CO2性をもっと訴求する必要がある。

※本記事は『ガスエネルギー新聞』8月8日号に掲載された、畑村耕一氏(畑村エンジン研究事務所代表)の寄稿「天然ガス自動車に関する最新情報~自動車用燃料としての天然ガス~」を転載したものです。

《畑村耕一》

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