【スバル インプレッサ プロトタイプ 試乗】完成度一段と高まり、素直にカッコいい…中村孝仁

試乗記 国産車
スバル インプレッサスポーツ プロトタイプ(18インチ仕様車)
スバル インプレッサスポーツ プロトタイプ(18インチ仕様車) 全 19 枚 拡大写真

まだ発売前だが、スバル『インプレッサ』のプロトタイプに試乗する機会を得た。場所は修善寺のサイクルスポーツセンター。クローズドのコース内のことである。

当然ながら、一般道と違って路面は平滑で大きな段差などがないから、乗り心地に関しては多少割り引いて考える必要があるかもしれないが、それでも旧型との乗り比べでは明らかな違いがあった。

今回のモデルチェンジはインプレッサのみならず、スバルにとって大きな転換点といえる。その理由はプラットフォームを一新したことだ。このインプレッサを皮切りに、スバルは今後すべてのモデルを、このスバル・グローバル・プラットフォームと呼ぶ新しいプラットフォームに変えていくからだ。

プロダクトジェネラルマネージャーの阿部一博氏によれば、一時的な下剋上の関係になるということだが、つまりは上級の『レガシィ』などよりもインプレッサの方が上質で高い運動性能を持つクルマに仕上がるから。それだけグローバルプラットフォームの出来が優れ、、かつ内外装に思いを込めて作ったことを意味する。それが「愛で作るクルマが、ある。」というフレーズに結び付いているのだと思う。

確かに内装の質感などはぐんと向上した。そしてあらゆる面での性能を引き上げたという総合的な性能は、間違いなく上がっている。似たようなものに見えたスタイリングも、白日の元、横から眺めるとはるかにスマートでスタイリッシュである。

今回試乗したのは、いずれも「スポーツ」の17インチ仕様と18インチ仕様で、「G4」に乗るチャンスはなかった。冒頭に話した通り、試乗は一周約5kmほどのクローズドコースだ。本来は自転車を走らせるコースなので、決してクルマ向きではないが、アップダウンが強く、案外日常的なスピードから、東名を走るようなスピードまでこなせる。

コースを覚えることも含めてまずは17インチ仕様でスタート。エンジンが随分とスムーズで軽快なハミングになった印象を受けた。実は、タイヤのスキール音を鳴らすことが御法度なので、コーナリングスピードはだいぶ控えめであるが、それをキープして走るのは、この17インチ仕様では至難の業であった。というのも、ターンインでタイヤの横剛性が不足気味で、腰砕けになる印象があり、スピードを上げるとアンダーステア必至という印象を受け、すぐに軽く、タイヤが泣き出してしまう。仕方なくステアリングを戻し直線状態でブレーキングということを繰り返した。

その後、18インチに乗ってみると、今度はその印象が激変。コースも覚えているので17インチ仕様の時よりも深く突っ込めたのだが、それでもタイヤは泣く兆候すら見せず、どっしりと落ち着いた印象の走りに変わった。これが本来の姿だとすれば、新しいインプレッサの走りは十分満足いくレベルどころか、かなり高い点を与えて良いと思える。

その後、旧型の17インチ仕様に乗り換えて、改めて乗り心地の良さ、音振対策の充実、そして顕著に感じられたのが、各部のフリクションの小ささなどで、新しいプラットフォームによる進化はかなり大きいと感じた。

エンジンは従来と同じ2リットルのフラット4ユニットだが(試乗車)、実に85%ものパーツが一新されて、しかも直噴化されている。これが乗り始めてすぐに滑らかで軽快なハミングという印象に繋がったのだと思う。良い悪いは別として、そのハミングからフラット4を感じることはない。ポルシェが718でもろにフラット4を感じさせてくれるのとは対照的。等爆に拘る必要もなかったのでは?とも感じてしまう。

あまりに乗り味が異なることから、車両実験の荘司武氏に、タイヤの違いだけでなくサスペンションにも変更があるのではないか尋ねてみた。すると、17インチと18インチではダンパーの減衰力からスプリングレートまで変更されていて、さらに電動パワーステアリングのアシスト量まで違うという。17インチのセッティングはだいぶ苦労しているようだが、ひょっとすると実際市販に至るまでにはまた何らかの変更があるかもしれない。いずれにせよ、現状では断然18インチがお勧めである。しかも乗り心地も18インチと17インチでは差がないのである。

最後に、良くなったとはいえこのクルマにリニアトロニックは似合わない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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