【日産 セレナ 試乗】ミニバンはドア戦争に突入した…岩貞るみこ

試乗記 国産車
日産 セレナ
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十年くらい前から言われていることだけれど、大学生はミニバンが欲しい人が多いらしい。家も洋服もシェアする世代にしてみれば、一人よりみんなで。そんな世代が親になれば“家族”の定義も枠もどんどん広くなり、いまや子どもの野球チームのメンバーの家族が家族なら、お茶飲み友達の家族も家族なのである。

そんな家族像を受けて作られた『セレナ』。明るい運転席からの景色に、グレーでゆったりとした空間を演出するシートが心地いい。二列目三列目での居心地が家族のおもてなし度を左右するとあれば、ここは手を抜くわけにはいくまい。広さ楽しさ、シートアレンジのしやすさをさらに追求して、三列あるシートは、どこに座っても身長180cmでも脚が組めるのが自慢だという。

いや、ちょっと待った。たしかに脚は組めるほど広いが、重箱すみツツキが好きで、安全性には人一倍こだわる身長170cmの私としては、三列目のヘッドレストは上いっぱいに伸ばしても、ヘッドレストのクッションが肩のあたりにひっかかるし、頭頂部までは足りない。安全装置がちゃんと使えないのに、身長180cmまで大丈夫と言い切るのはちょっと納得がいかない。

ミニバンの初期はシートアレンジ戦争だったけれど、昨今はドア戦争に突入した感がある。ホンダの『ステップワゴン』の後ろのドアが、タテに分割して開くパターンを開発したと思ったら、セレナは上下に二分割。さらに、スライドドアはボディ下に足を蹴り込むように動かすことで、触れもせずに電動オープンするようになった。上下に二分割は、SUVにも見られるもので、これが本当に使いやすい。ちょっとした荷物ならウィンドー部分だけが開いてくれて十分なのに、これまではさわると手が汚れるような重く大きなリアゲートをうんしょと開けなければならなかった。なんと、気の利かないクルマだったことか。さらに、キック・アクションで開くスライドドアも秀逸。子どもを抱っこしたまま、とか、荷物いっぱいとか、がんばる女性には両手がふさがるシーンは多いのだ。

運転席に座ると、フロントウィンドーもサイドウィンドーも大きくてとにかく明るい。サイドウィンドーが大きいと、逆に自分の座る位置が必要以上に高く感じられ、走っていると不安に思うことも多いけれど、今回のセレナは、そのあたりがうまく処理されている。自動運転技術(運転支援技術)のプロパイロットにばかり話題が集中するけれど、居心地がよくて使いやすいクルマというベースがあってこそだと思う。

だけど、念押しするけれど、プロパイロットはあくまでも運転支援技術。ドライバーが惚けていてもいいわけじゃないので、そこのところはお間違えなく。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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