【土井正己のMove the World】国連加盟60周年、企業にとって次の60年は?

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トヨタケニアアカデミー(2014年7月)
トヨタケニアアカデミー(2014年7月) 全 2 枚 拡大写真

ニューヨークでは、第71回国連総会が9月13日から26日まで開催されている。本年は、日本の加盟60周年となり、日本にとっては大きな節目の年だ。また、世界では、シリア問題、ウクライナ問題、北朝鮮の核開発問題、南シナ海問題など問題山積で、総会に出席した安倍首相も、演説で北朝鮮の核実験を強く批判し、一方、難民の自立と受け入れ国の支援に向けては28億ドル規模の支援を行うことを「難民と移民に関するサミット」で述べている。

さらに、同タイミングで、日本では日銀の金融政策決定会合が実施されており、21日の黒田総裁による政策発表は、世界中の投資家やエコノミストが注目した。国連加盟60年を経て、日本は押しも押されぬ世界の成熟大国となったと言えよう。

◆企業も大きな評価対象

戦後の「日本の平和主義」は国連でも高く評価されてきた。特に、戦後のアジアにおける開発支援は、アジア各国の平和と経済成長に一定の貢献をしてきたことは誰もが認めるところだ。よく、ODAなどの政府支援が、アジアへの貢献の象徴として取り上げられるが、私は、日本企業のアジアでの努力、特に、「人材育成」と「技術移転」に関して、その果たした役割はODAと同レベルで評価されるべきものと思う。

さて、国連加盟60周年を迎え、これからの日本はどうあるべきかと少し考えたい。前述した通り、日本は、アジア各国の成長を手助けし、また、そのアジアの成長を日本国内に取り入れる形で、自国の成長にもつなげてきた。これらは、「ウィン・ウィンの関係」であったと言える。このアジアで培った「ウィン・ウィンの関係」を世界に広げることが、次の60年に向けて行うことではないだろうか。

◆一次産品価格の下落で大打撃

特に、中東やアフリカ、中南米には、これから成長しようという国がたくさんある。これらの国々は、概して一次産品を主な輸出産業としてここまでやってきていたが、昨今の原油安などの「一次産品価格の下落」によって、経済が大きな打撃を受けている。中東やアフリカで難民が増加しているのも「一次産品価格の下落」による経済悪化が要因の一つとなっている。これらの国々は、「一次産品からの脱却」、そして「産業化の推進」へと産業構造の転換を模索し出している。そのモデルとして見ているのは明治期や戦後の「日本の高度成長システム」である。

◆「カイゼン」は世界の共通語

先月ナイロビで開催された「TICAD VI」(第6回アフリカ開発会議)においては、70名に及ぶ、日本の経済人が安倍首相と共に会議に参加した。会議の中では、各国首脳から何度も「カイゼン」という単語が出てきたという。関係者の話によると「今やカイゼンは世界の共通語」だと語っていた。アフリカ各国が、日本の企業に期待するのは、単に投資資金だけではない。日本の経営、技術など日本の経済システム全体が魅力なのだ。

ナイロビには、豊田通商が運営している「トヨタケニアアカデミー」という研修センターがある。かつては、トヨタの技術訓練センターだったが、今は、JICA(独立行政法人国際協力機構)、ケニアの大学、ケニア政府とともに、地域に開放して、ビジネス・マネジメントに関する講座を提供している。現地でも高く評価されており、まさに「カイゼン」を実地教育できる仕組みが整ってきている。

◆「ウィン・ウィンの関係」を世界に広げよう

こうした活動をどんどんと広げ、アフリカ、中東、南米においても、日本と「ウィン・ウィンの関係」を広げていくことが重要だと思う。日本は、企業人、すなわち我々の先輩たちは、そうした考えを持って、アジアと共に成長してきた。次の60年もこのDNAを引き継いでいきたいものである。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

《土井 正己》

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