【フェラーリ GTC4ルッソ 試乗】伝統の“ルッソ”というサブネームを掲げた理由…山崎元裕

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フェラーリ GTC4ルッソ
フェラーリ GTC4ルッソ 全 16 枚 拡大写真

それまでの『FF』にビッグマイナーチェンジを施したニューモデル、『GTC4ルッソ』が初披露されたのは、今年のジュネーブ・ショーでのことだった。「フェラーリ・フォー」を意味するFFのネーミングを掲げた前作は、フェラーリとしては初となる4WDの駆動システムを採用したモデルであると同時に、リアにハッチゲートを持つ独特なスタイルを特徴としていたが、そのコンセプトはもちろん、後継車たるGTC4ルッソも確実に継承されている。

ルーフラインがより滑らかなデザインとされたことで、FFよりもさらにクーペに近い雰囲気が醸し出されることになったGTC4ルッソのボディは、実に魅力的なアピアランスを持ち合わせている。フロントのバンパースポイラーやリアのルーフスポイラー、あるいはデフューザーなどのデザインは新デザインとされ、フロントフェンダー上のエアアウトレット、往年の『330GTC』のそれにインスピレーションを得た造形へと変化している。もちろんこれらのリニューアル策は、新型車としての斬新なアピアランスを主張すると同時に、エアロダイナミクスの最適化を目的としたもの。キャビンのデザインや、インフォテイメントシステムも、よりモダンで機能的なものへと改められ、カスタマーはFFからの進化を、ここでもダイレクトに感じるだろう。

フロントに搭載される6.2リットルのV型12気筒自然吸気エンジンは、燃焼室やピストンの新設計や圧縮比の向上などによって、FF比でプラス30psとなる、690psの最高出力を得るに至った。最大トルクは同様の比較で14Nmを強化した697Nm。その80%が1750rpmで発揮されることにも驚かされる。組み合わされるミッションは7速のF1-DCT。このエンジンの前方にPTUと呼ばれる2速のギアボックスを組み合わせ、さらに電子制御方式のクラッチによって後輪との回転数同期を行う、独特な4WDシステムはFFのそれに共通するが、GTC4ルッソではさらに、新採用の後輪操舵システムとの統合制御も実現することになった。

大きな期待とともにGTC4ルッソのキャビンへと身を委ねた。ここで瞬間的に感じたのは、やはりデザインが一新されたキャビンが、これまで以上に高い機能性と快適性を兼ね備えていること。フェラーリがなぜ、高級であるとか豪華であるといった意味を持つ、伝統のルッソというサブネームをこのニューモデルに掲げたのか。その理由はこの空間に全身を包まれれば誰もが理解できるはずだ。

走りの魅力も大きく高まっていた。さらなるエクストラ・パワーを得たエンジンは、自然吸気のV型12気筒という基本設計の魅力をダイレクトに伝えてくれる。低速域から高速域まで、一切のストレスを感じさせることがないスムーズな動きは、その象徴的な例。前で触れたとおり、低速域でも十分なトルクが発揮されるから、アクセルペダルを軽く踏み込めば、GTC4ルッソはほとんど重量感を感じさせないまま車速を高めていく。

そして驚くべきは、アクセルペダルを一気に踏み込み、F1-DCTをマニュアル操作して、その潜在的な動力性能をフルに発揮させた時のフィーリングだ。これほどに流麗でジェントルなスタイルを持ちながら、GTC4ルッソは、このようなシチュエーションでは、まさしくスーパースポーツのパフォーマンスを、我々に確実に提供してくれるのだ。参考までにその最高速は335km/h。0-100km/hは3.5秒とされる。

そのようなGTC4ルッソにとっては、やはり4WDシステムの存在は大きなアドバンテージになる。FFと同様に、駆動方式が4WDとなるのは、F1-DCTが1速から4速までのポジションにある時のみだが、これでカバーできる速度域は相当に広い。特に好印象を得たのは、タイトコーナーからの立ち上がりで、シチュエーションに応じて、前輪が常に最適なトラクションを生み出してくれるから、ドライバーは常に感動的なトラクション性能とともに、高いスタビリティを感じることができるのだ。新採用された後輪操舵システムもまた、コーナリング時により積極的なターンインを生み出すことに大きく貢献していた。

フェラーリがシリーズ半ばで行うビッグマイナーチェンジ。それによる進化がきわめて大きいことは、すでにフェラーリのカスタマーには良く知られているところ。GTC4ルッソもまた、これまでのFF以上に多くの、そして幅広い層のカスタマーから、絶対的な支持を得るモデルとなることは間違いなさそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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