中国山地縦断の三江線、2018年3月末限り廃止へ…JR西日本、国交相に届出

鉄道 企業動向
JR西日本は三江線の廃止を国交相に届け出た。国鉄再建法の「除外規定」により廃止を免れた路線で廃止の動きが強まっている。
JR西日本は三江線の廃止を国交相に届け出た。国鉄再建法の「除外規定」により廃止を免れた路線で廃止の動きが強まっている。 全 8 枚 拡大写真

JR西日本は9月30日、江津(島根県江津市)~三次(広島県三次市)間の108.1kmを結ぶ三江線について、中国運輸局長を通じて第一種鉄道事業の廃止を国土交通大臣に届け出た。廃止予定日は2018年4月1日。これにより三江線は同年3月31日限りで運行を終了する。

三江線は1930年4月から1975年8月にかけ、現在の区間が国鉄線として開業。1987年4月の国鉄分割民営化に伴い、JR西日本が運営を引き継いだ。

過疎化が進む中国地方の山岳地帯を縦断する路線のため、利用者がもともと少なく、1日平均の通過人員(旅客輸送密度)はJR西日本が発足した1987年度時点で458人だった。道路整備の影響もあって利用者の減少はさらに続き、2014年度の輸送密度はJR西日本発足時の9分の1以下(50人)まで落ち込んでいる。

同社はワンマン運転化などによる経営の効率化、団体列車の設定などによる増収策の実施を行ったが、利用者の減少に歯止めがかからなかった。また、2006年と2013年には水害による長期運休が発生。「激甚化する災害リスクの高まりも看過できない状況」とした。こうしたことから同社は今年9月1日、「三江線の鉄道事業はどのような形態であっても行わない」とし、廃止の方針を表明した。

JR西日本は当初、廃止時期を1年後の2017年9月として届け出る方針だったが、沿線自治体が廃止を容認する一方、代替輸送の計画に時間がかかるなどとして廃止時期の延期を要望。これを受けて廃止予定日を2018年4月1日に変更した。

■JR「除外規定」路線の廃止続く

JR旅客各社は1987年の国鉄分割民営化以降、6線区257.3kmを廃止している(国鉄から暫定的に引き継いだ路線やJR以外の鉄道事業者への経営移管路線、定期列車が運行されていない短絡線などを除く)。これらの路線の多くは、1980年12月に公布された日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)の「除外規定」などにより廃止を免れた路線だ。

JR北海道は1994年5月に函館本線上砂川支線、1995年9月に深名線、2014年5月に江差線の木古内~江差間を廃止。今年12月には留萌本線の留萌~増毛間を廃止する予定だ。同社は度重なる安全対策面の不祥事から経営が悪化していることを受け、さらに路線の廃止を進める考え。今年8月には、沿線自治体の同意を受ける形で石勝線夕張支線の廃止を表明している。

JR東日本は、2010年7月の災害で運休中だった岩泉線(岩手県)を2014年4月付で廃止。東日本大震災の影響で運休中の各線のうち、気仙沼線柳津~気仙沼間(宮城県)と大船渡線気仙沼~盛間(宮城県・岩手県)は鉄道復旧を断念し、バス高速輸送システム(BRT)を継続運行することで沿線自治体と合意している。山田線の宮古~釜石間(岩手県)は、第三セクターの三陸鉄道が列車の運行を引き継ぐことを条件に復旧工事が進められている。

今回、三江線の廃止を届け出たJR西日本も、1997年4月付で美祢線の大嶺支線(山口県)、2003年12月付で可部線の可部~三段峡間(広島県)を廃止している。一方、JR東海は2009年10月の水害で不通となった名松線の家城~伊勢奥津間(三重県)を廃止する考えだったが、沿線自治体が治水工事を行うことなどを条件に存続する方針に転換。今年3月に営業を再開した。

国鉄再建法では、原則として1977~1979年度の輸送密度が4000人未満の路線を「特定地方交通線」と位置付け、廃止してバスに転換するか、あるいは地元出資の第三セクターなど国鉄以外の事業者に引き継がせるものとしていた。特定地方交通線は3回に分けて選定され、1983年から1990年にかけて廃止、もしくは第三セクターなどが引き継いでいる。

しかし、再建法では輸送密度が4000人未満であっても、ピーク時の輸送人員が多かったり(片方向で1000人超え)、並行する道路が未整備であるなど、バスへの転換が難しいと判断される場合、特定地方交通線の選定から除外するとしていた。深名線や江差線、留萌本線、岩泉線、名松線、可部線、三江線も、再建法の「除外規定」により廃止を免れ、そのままJR旅客各社が引き継いだ路線だった。

また、再建法では旧国鉄の路線名を基準に廃止の可否を判定していた。このため、線内に利用者の少ない区間や支線があっても、利用者が多い別の区間や本線が存在すれば、全体では廃止基準を上回り、特定地方交通線並みの利用者しかいないのに廃止を免れるという「不公平感」の問題が当時から指摘されていた。上砂川支線や可部線の可部~三段峡間なども、「線名単位」という再建法の基準によって廃止を免れ、JRがそのまま引き継いだ区間だ。

しかし、廃止を免れたからといって、利用者が特定地方交通線並みに少ない路線であることには変わりなく、過疎化の進行でピーク時の輸送人員も減少。並行道路が整備されるなど沿線の環境も大きく変化した。こうしたことから「除外規定」「線名単位」路線の廃止がJR化後に進んだといえる。

国鉄再建法が廃止されて既に30年近くになるが、この間に輸送密度が4000人を下回り、現在は「除外規定」にも当てはまらなくなったJR線は数多い。今後も利用者の少ないJR線の廃止が続くとみられる。

《草町義和》

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