コラムMTに重ステ…スバルの歩み若い世代へ、100周年で「歴史講座」

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左からレオーネ、レガシィ、現行インプレッサ、次期インプレッサ
左からレオーネ、レガシィ、現行インプレッサ、次期インプレッサ 全 18 枚 拡大写真

スバルのブランドで知られる富士重工業は2017年、その前身である中島飛行機創業から100周年を迎える。

100周年の節目にあたり、富士重工業は社名をブランド名である「スバル」に変更する。未来へ向けて大きく動き出しているこの歴史ある企業は、同時に先人達の行ってきた偉業についても大いに学び、それを生かそうとしている。今までスバルが歩んできた道を若い世代に伝える「スバル歴史講座」という活動を社内で行い始めたのだ。それは単純に歴史を学ぶということだけでなく、過去のクルマに実際に乗るという活動となっている。

普段は社内のエンジニアを中心に行っているこの活動をメディア関係者も体験できるということで、栃木県にあるスバル研究実験センターに出かけた。試乗のステージは2つあり、最初のステージに用意されたクルマは1984年型の『レオーネ』、初代『レガシィ』のGT、現行『インプレッサ』、次期型『インプレッサ』の4台。

この4車の試乗で感じたのはレオーネからレガシィ、現行インプレッサから次期型インプレッサの進化の大きさ。どちらのタイミングも非常に大きな進化を感じられる。これは言い換えれば、すぐ先に予定されているインプレッサのフルモデルチェンジは、レオーネからレガシィへのフルモデルチェンジなみのインパクトがあるということを物語っている。

次のステージに用意されたのは、『スバル360』、『スバル1000』、「レオーネクーペ1400RX」、『アルシオーネVX』、『アルシオーネSVX』の5台。これらは、進化を感じるのが目的ではなく、その時代、その時代のエポックメイキングなことを感じるのが目的だろう。

スバル360(1958年発表)はビックリするようなパッケージングで身長174cmの私が乗っても、スッキリとドライバーズシートに収まる。前開きのドアは本当に乗り降りが楽。2サイクルの360ccは意外なほどトルクがあってしっかり加速できるし、段差の乗り越えも大きなショックを感じない。なによりもこのクルマ、きっと多くの家族の夢がつまっていたんだろうなあ…と感じさせる。バブルより素敵だったであろう高度成長期を想像させてくれる。

スバル1000(1966年発表)はコラムシフト4速。助手席に乗ってくれた若い開発者に「教習車はコラムだったんだよねえ」と話すとビックリした様子。彼はこのクルマが初めてのコラムシフトだったらしい…そうした意味も含めて若い開発者たちにこうしたクルマに接する機会を作るのはとても大切なことだと思う。なぜ、コラムシフトなのか、なぜフロアシフトが流行ったのか、を身をもって感じることができるだろう。

恐ろしくステアリングが重かったのがレオーネクーペ1400RX(レオーネシリーズ・1971年発表)。何しろクルマに乗った瞬間に助手席から「オモステ(パワステではないこと)で、ブレーキも効きづらいから気をつけて下さい」と念を押された。エンジンは比較的軽々としているのだが、本当にステアリングが重い。筆者は同程度の重さの『RX-7』でレースをしていたことがあるが、速度域の遅い一般道でこのステアリングは苦行でしかなかっただろう。同乗開発者も、昔の人が内掛けハンドルをする理由がわかりましたと語っていた。

スバルが思い切った方向に舵を切って作られたのがスペシャリティクーペのアルシオーネ(1985年)だ。アルシオーネは当初は水平対向4気筒でスタートしているが、シリーズ途中で水平対向6気筒に変更された。試乗車はもちろん、6気筒モデル。そのスムーズなエンジンフィールは現代でも十分に通用する。そして1本スポークの非対称ステアリングや膨大な数のスイッチを配置したインパネは、時代を映す鏡と言える。

さて、試乗車のなかでもっとも新しいモデルであったのがアルシオーネSVX(1991年)。G.ジウジアーロの手によってデザインされたボディを持つSVXは、今の時代でも十分に通用しそうな雰囲気にあふれている。そして搭載される水平対向6気筒エンジンは、アルシオーネ時代より熟成。間違いなく日本の名エンジンとして称えられるものだ。

こうしたさまざまな過去のクルマに触れながら、未来に向かってクルマを開発する富士重工は、スバルとなる次の100年にも大きな期待を抱いてしまう。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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