【マツダ アテンザ 試乗】あと一歩で真のフラッグシップに…中村孝仁

試乗記 国産車
マツダ アテンザ
マツダ アテンザ 全 12 枚 拡大写真

商品改良と称する変更を受けて、マツダ『アテンザ』がまた一歩進化した。このところ富に商品力を増しているマツダの各モデルだが、アテンザはあと一歩で真のフラッグシップモデルになると感じられた。

今回の改良は、若干のエクステリア変更と同じく若干のインテリア改良。それにエンジンの改良に加え、「G-ベクタリング」採用が主な変更。エクステリアに関しては、ほとんど指摘されてもわからない程度の小変更で、むしろ新たに設定された、マシングレープレミアムメタリックという新色が注目を集めた印象が強い。一方のインテリアでは、ピラーやルーフ回りの内装をブラックとしてより落ち着いた印象としたほか、全体的にシックな表現として高級感を高めている。今回試乗した「Lパッケージ」車は、最高級のナッパレザーが使用されるなど、上質感の演出には抜かりない。

2.2リットルのディーゼルターボは、既に『アクセラ』で紹介済みのノック音を減少させる仕掛けが採用された。一つは「ナチュラルサウンドスムーザー」。そしてもう一つはノック音の山となる1000~2000rpm付近と2500rpm付近の音を減少させるため、燃料噴射のタイミングを微妙にずらすことで逆位相の振動を出してやること。今回はもちろん旧型車との乗り比べも行ったのだが、その後に長めに試乗車をお借りして、何もついていない我が家にある『デミオ』の1.5リットルディーゼルとの乗り比べもしてみた。

結論から行くと音に関しては、スムーズな音というのも不思議な表現かもしれないが、全体としてはことさらディーゼル音を意識させるものではなくなっているように感じられた。勿論、音自体が異なるわけではなく、ここから先は例えばプジョーのように疑似音を出して室内で聞く音そのものを変えてしまう以外には手が無いように思えた。つまり、ディーゼル音に関してはこれ以上やりようがないところまで来ている。さらに小さくしたければ、あとはインシュレーターの積み増しで抑え込むだけだろう。

G-ベクタリングに関しては、本来隣に乗っているいわゆるパッセンジャーの方がより感じ取れるのではないかと思い、助手席に乗った印象を聞いてみた(複数の人)が、やはり乗り比べていないので、ことさら乗り味が良くなったとか、スムーズになったという印象は聞かれなかった。だが、ドライバーサイドからの話をすれば、意識して距離を乗れば乗るほどに、高速コーナー中の修正舵が少なくなっている印象が強く、それがスムーズなコーナリングに繋がっているように思える。

これとは逆にむしろ今回感じられたのは、エンジンや足の向上で走りがスムーズになればなるほど、取り残され感があったのがトランスミッションだった。現在アテンザに使われているのは6速ATだが、例えば高速本線への流入などの際に加速をする場合に、大きめのフリクションを感じ、ディーゼル本来が持つ力強いトルク感が少しスポイルされている印象とダイレクトな繋がり感がない印象を受けた。これは以前には感じられなかったことで、他が良くなった分、ネガ要素として出てきたものと思う。

アテンザにはいわゆるアダプティブクルーズコントロールが付く。デミオとは違い、その設定は115km/hまで可能だから、高速追い越し車線にいても、あまり迷惑になるとは感じなかったが、制限速度が110km/hに引き上げられた場合、相対的に速度は上がってしまうだろうから、その設定も見直しする必要があると思う。何よりもアダプティブとはいえ、全車速対応ではない。これはいかがなものか。まずは全車速対応に改めてもらう方が先だ。

凄く良いと感じたのはアダプティブLEDヘッドライトだ。基本的に常にハイビームに設定しておいて問題ない。迷惑がかからなければ常にハイビーム状態を保つし、対向車や前走車がいる場合はちゃんとその部分を迷惑がかからないようにするか、もしくは自動的にロービームに切り替えてくれる。比較的照明の少ない東北自動車道で使ってみたが、東京~舘林間ではほぼ8割程度は常にハイビームを示すブルーのライトマークが、メータークラスターに点灯した状態で走行できるし、路肩を常に非常に明るく照らしてくれる。また前走車がいても、その部分だけを暗くしてハイビーム状態を保つことも確認できた。これは暗い夜道に非常に有効なアイテムで、有難い装備と思えた。

今回の試乗車は19インチタイヤ装着車であるが、やはり乗り心地はあまり褒められたものではなかった。特にバネ下重量の重さ意を感じるドスンとくる動きが多い。勿論フラット感にも少し欠ける。恐らく標準の17インチがお勧めになると思うが、これも煮詰め方次第で変わるように思えた。

具体的な改善点としては、この足のさらなる熟成とアダプティブクルーズコントロールの全車速対応化、それにインシュレーターをさらに盛り込んで、静粛性を向上させ、出来ることならトランスミッションを8速化してもらえば、素晴らしいマツダのフラッグシップになると思う。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 水平対向8気筒エンジン搭載バイクは世界唯一、中国長城汽車の「SOUO」ブランドが発表
  2. 6年ぶりビッグネーム復活!? 新開発のV12エンジンが搭載されるフラッグシップGTとは
  3. トヨタ『シエンタ』対応の「車中泊キット」一般販売開始
  4. VWの小型ミニバン『キャディ』、改良新型を生産開始…5月末ドイツ発売へ
  5. スズキ スーパーキャリイ 特別仕様は“For Your Work Buddy”…デザイナーの思いとは?
  6. MINI ハッチバック 新型の頂点「JCW」、今秋デビューへ…プロトタイプの写真を公開
  7. KGモーターズ、超小型モビリティの車名を『mibot』と発表
  8. BMWの新型車、ティザー…実車は5月24日発表へ
  9. 「トゥクトゥク通学」学生の問題意識から生まれたレンタルサービス、実証試験を開始
  10. 【メルセデスベンツ EQA 新型試乗】“EQ感”がより増した、シリーズ最小モデル…島崎七生人
ランキングをもっと見る