【WEC】アウディ撤退…耐久レース界の首脳たちから「残念」の声

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今季のWECを戦っている「アウディR18」。
今季のWECを戦っている「アウディR18」。 全 8 枚 拡大写真

欧州時間26日に発表された、アウディの世界耐久選手権(WEC)からの今季限りでの撤退決定。これに対し、WECのシリーズ主催サイドや、ルマン24時間レースの主催団体からも「残念」「悲しい」といった意の声明が挙がっている。

アウディは1999年から、いわゆるルマン・プロト(スポーツプロトタイプ)による本格的なレース活動を展開。同年より参戦した耐久レース最高峰のルマン24時間レースでは、翌2000年に初の総合優勝を飾り、これまでに通算13勝と、驚異的なハイピッチで勝ち星を量産してきた(2016年時点でポルシェの18勝に次ぐ歴代2位の総合優勝回数)。

2012年からスタートした、ルマンをシリーズ戦に含む現行WECでは常に最上位クラス「LMP1」の主役メーカーとしてアウディは君臨。トヨタ(12年~)、ポルシェ(14年~)といった後発メーカーの挑戦を受けて戦いつつ、12年と13年にはマニュファクチャラー&ドライバーの2冠を制するなど活躍した。

そうした成績面や、ディーゼル、ハイブリッド等への技術的挑戦の価値の高さはもちろんとして、アウディは耐久レースの格を高め、盛り上げる働きをも長期に渡って演じてきた存在といえよう。それだけに、WECのCEOを務めるジェラール・ヌブー氏、そしてルマン24時間の主催団体ACO会長のピエール・フィヨン氏は、ともに「我々のメジャープレイヤーが去ることは残念だ」との旨を語り、アウディの決断に理解を示しつつも、悲しんでいる。

ヌブー氏のコメント要旨
「WECにおいて重要な位置を占めるメーカーの撤退は、非常に残念なことですし、アウディのドライバー、エンジニア、メカニック、チームメンバーたちにとってもこの決定が悲しいものであることに、思いを巡らせています。そしてアウディのWECでの素晴らしい戦績に賞賛の言葉を贈りたいと思います。ひとつのメーカーが去り、(やがて)新たなメーカーがやってくる、これが世界選手権というものでもあります」

フィヨン氏のコメント要旨
「この発表を重く受けとめています。既に準備がされていたこととはいえ、耐久レースにとって重要なメーカーが他の冒険へと去っていくことを残念に思います。そして、我々にとってコスト削減は今後の重要な方向である、とも認識しているところです。アウディは単なる参戦メーカーにとどまらず、世界中で耐久レースの発展に大きな寄与をしてきました。アウディのこれまでの素晴らしい業績を賞賛いたします」

フィヨン氏のコメントからは、先鋭的なハイブリッドシステムでメーカーがワークス体制で競う現在のLMP1-Hクラス(Hはハイブリッドを示す)のコスト抑制が急務、との意識が読み取れるところで、やはりアウディの撤退には「フォーミュラEに注力する」という理由とともに、このあたりも関係しているものと考えられる。

ちなみにアウディの近い将来のWEC撤退については、14~16日に富士スピードウェイで行なわれた今季第7戦でも噂になっていた。だが、その多くは「17年限りでの撤退」説。アウディLMP1陣営を率いるW.ウルリッヒ代表は記者団の囲み取材を受けた際、「18年はアウディ不在という話もありますが」との質問に対し、「そうならないといいね」と答えていた。ところが現実は、噂以上の早期撤退、今季(16年)限りというかたちで決着した。

アウディのWEC撤退は、ドライバー市場にも他シリーズを巻き込んで影響を及ぼすかもしれない。アンドレ・ロッテラーやロイック・デュバル、ブノワ・トレルイエといった日本のSUPER GT(GT500クラス)やフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)のチャンピオンドライバーたちを主戦に据えての活躍だったこともあり、日本のファンにとっては今後の動静が気になるところだろう。

なお、アウディはDTM=ドイツ・ツーリングカー選手権についての活動は継続、としている。また一方、世界ラリークロス選手権については「未決定」としながらも、自陣DTMワークス選手でもあるM.エクストロームの今季タイトル奪取について触れ、支援拡大に向けてポジティブな意思も感じられる内容が記されている。WEC(LMP1)からは退いても、フォーミュラEを含め、アウディのモータースポーツへの積極的な関与は変わらない。

とはいえ、この衝撃と影響は小さくない。特に富士戦では、それぞれが異なる技術アプローチを取るマシンでありながらも、トヨタ、アウディ、ポルシェの3社が6時間走っても僅差接戦の末に表彰台を分け合うという高密度バトルの名勝負が展開された直後だけに、ファン目線でも非常に残念なアウディのWEC撤退であることも間違いないところだ。

《遠藤俊幸》

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