【マツダ ロードスターRF 試乗】一夜にして虜にさせる世界観…島崎七生人

試乗記 国産車
マツダ ロードスターRF プロトタイプ
マツダ ロードスターRF プロトタイプ 全 12 枚 拡大写真

試乗時間は90分。これだけあれば会場から自宅まで行けるが問題は引き返してくるには少し時間が足りないということ…。年に何台か“返却したくない試乗車”が、また、である。量産前試作車という今回の『ロードスターRF』(発売は12月22日)は、まさにそんな1台だった。

素直に「なるほどそうだな」と思ったのは「NCではソフトトップとRHTとでオープン状態のスタイルに差がなかったから」の判断。そこでNDでは凝った昇降構造を採用しルーフとリヤウインドのみ格納、オープン時に“ファーストバック部分”を残すスタイルとなった。

連想するのはフェラーリ『308GTB』やシボレー『コルベット』など。後ろにルーフラインを流すスタイルは古今東西、美しいものだ。なのでリヤクォーターウインド“風”の黒いパネルは気にしないことにした。またソフトトップとトランク容量は事実上変わらないというのも素晴らしい。フロントピラーがボディ色というのも、ソフトトップとはまた別の落ち着いた味わいがある。

5個のモーターとパズルのようなリンクで作動するルーフの開閉機構はスムースな上、動きの最後は速度を落としそっとするなど、所作がとても上品。このメカの開発には担当エンジニアの相当な思いが込められているのだが、ここに全容を書くには画面を延々とスクロールしていただくことになるから残念だが詳細は割愛させていただく。

ちなみにクローズ状態では走行中、まるで固定ルーフ車のような静かさ、密閉感に感じたが、バックウインドウに4mm厚の強化ガラスを用いたり、各部の穴を埋めたり遮音材、制振材を適宜配置するなど、外からはわからない多数の手当てがしてある、という。

走りについては、このクルマに限っては封切り映画の結末を先に言ってしまうようで、読者の皆さんがご自身でお確かめいただきたい気もする。が、たまたま6速MTの「RS」(写真)と6速ATの「VS」の両車が比較でき、どちらも2リットルエンジンによる余裕と、日本仕様の1.5リットルのオープン+70~80kgの車重、専用サスペンションにより、爽快ながらゆったりとした気持ちで走らせていられる…そんなRFらしい世界観にクルマの挙動も乗り味も仕上げられている、とだけご報告しておきたい。

ちなみに「RS」のレカロシートはソフトトップのそれよりも身体の馴染みがいい気がし、「VS」のナッパレザーシートはしっとりとした風合いだった。

またオープン時はタルガ風に後方にリヤルーフを残しバックウインドだけ“抜いて”いるため、適度な安心感とソフトトップ同等のオープン感覚が味わえるのもポイントだ。BOSEのサウンドシステムはソフトトップ同様、トップのロック機構部分から信号を拾いオープン/クローズ時で音の設定が切り替わるそうだが、当然、このRFではさらに専用のチューニングが施されているとのこと。例によってオープン状態でも解像感の高い音質が目の高さで楽しめ、クローズ時は室内の反響分の影響のない落ち着いた音に仕上げられていた。

珍しく、遅い時刻の試乗会だったが、まさに一夜にして虜にさせられた…のかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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