【マツダ ロードスターRF 試乗】プレミアムセグメント的クルマづくりができている好例…井元康一郎

試乗記 国産車
マツダ ロードスターRF
マツダ ロードスターRF 全 16 枚 拡大写真

マツダは小型オープン2シーター『ロードスター』に2リットルエンジンと電動バリオルーフを実装した派生モデル「RF」を追加すると発表した。そのプロトタイプモデルを短時間ながらテストドライブする機会があったのでリポートする。

【画像全16枚】

RFは電動ルーフ化されたことと、エンジンが1.5リットルから2リットルに換装されたことで車両重量が100kgほど重くなっているが、商品性はソフトトップのロードスターとそう大きくは変わらないはず…と予想していた。が、実物は予想とは裏腹に、ソフトトップと著しく異なる、とても魅力的なキャラクターを持っていた。

◆研ぎすまされた引き算のデザイン

第一はデザイン。全長4m未満の2座オープンをベースに、よくもここまでのものを作り上げたものだと感心させられる優美なプロポーションとディテールを持っている。それは単に綺麗なだけでなく、奥底に研ぎ澄まされた緊張感を帯びている。

恐らくそれはロードスターRFが、いわば引き算のデザインで作られているからだろう。全長が短く、ウェストラインも低いクーペを格好良く作るのは難しい。ちょっと油断すれば餅の上にみかんを乗せた“鏡餅ルック”になってしまうからだ。ましてこのクルマの場合、ベースとなるソフトトップモデルがすでに存在している。デザインは、表現を盛り付けていく足し算デザイン系の「魂動デザイン」の文法に沿ったものだ。

そのロワボディのデザインとの連続性を持たせながらクーペルックとして違和感のないものにするうえで、余計なことをやる余地など一切ない。とにかく最適のシルエットや面構成を薄皮一枚レベルの見切りで作り込んでいくしかない。デザイナーやモデラーにとっては最高に難しい作業だが、完成品を見ると、その作業にどれだけの執念を燃やしたかが伝わってくる。その引き算デザインがこのクルマが緊張感を放つ原動力となっているのだろう。クルマのキャラクターもフォルムもまったく異なるが、昨年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー『RX-VISION』と共通するオーラで、ソフトトップのロードスターを含むマツダの他の現行モデルと全く異なる香りがある。

スタイリングと並んでもう1点素晴らしかったのは、バリオルーフの作動のスマートさ。大型のルーフの格納は「ガタン、ゴトン、ガチャガチャ」という音と振動を伴いがちなのだが、ロードスターRFのそれは「カチャッ、ウィーン」というとてもスムーズで精密感が漂うもので、格納が終了するときはテーブルにモノをそっと置くようにCピラー部がボディと一体化する。デザインそのものだけでなく、所作の美しさにここまでこだわったクルマは稀有だ。

◆しっかりと一粒で二度美味しい

そんなことが見た目から伝わってくるロードスターRFなので、試乗会ではクルマに乗り込む前からボルテージは最高潮だった。試乗ルートは東京・天王洲アイルと横浜・大黒ふ頭の往復で、2名乗車、エアコンAUTO。試乗車はナッパレザーのちょっと上等なインテリアを持つ中間グレードの「VS」で、変速機は6速AT。エンジンをかけ、さっそくバリオルーフをオープンにして走り始めた。

しばし市街地を走ってから、首都高速道路で大黒ふ頭へ。その高速クルーズで印象的だったのは、見た目とは裏腹にオープンエア感が結構高かったことだ。オープンといえども、ソフトトップに比べると開口面積はかなり小さいため、タルガトップ的な感じかなと思っていたのだが、キャビンに適度に風が流れ込むように気流がデザインされており、気分は完全にオープンである。試乗当日は冷たい木枯らし1号が吹き荒れていたが、強力な暖房とシートヒーターのおかげでむしろ頭寒足熱の心地よさが味わえたくらいであった。

サスペンションは車両重量の増加に対応するためか、1.5リットルのノーマルロードスターに比べてロール剛性が高められているようだった。細かいハーシュネスはそれなりに室内に伝わってくるが、乗り心地はすっきりしており好感が持てた。また、アンジュレーションのきつい場所を通過してもぐらつきがなくなるなど、スタビリティは全般的に向上したように感じられた。

2リットルエンジンは最高出力158ps。車両重量は1100kgなので、パワーウェイトレシオは約7kgとかなり良い数値になるのだが、ATが6速100km/hクルーズ時で1750rpmとかなりハイギアードセッティングであるためか、それほど俊敏な印象はなかった。燃費は天王洲アイルを出発後、大黒ふ頭に到着した時点で計器読み16.4km/リットルと、JC08モード燃費の15.6km/リットルを上回った。これはキックダウンを幾度も試したりしながらの数字で、ロングドライブではこれよりずっといい数値になるのではないかと思われた。

大黒ふ頭に着いた時はすでに日没を迎えていた。さっさと撮影を進めるなかであらためてロードスターRFを眺めてみて思ったのは、マツダが最近作った新色「マシングレー」がよく似合うということ。筆者は鹿児島出身ということもあって、個人的には灰色はあまり好きではない。マシングレーを最初に見たのは大型SUV『CX-9』だったが、連想したのは桜島の火山灰の色だ。他のモデルも似たり寄ったりの印象だったのだが、ロードスターRFの場合、逆にマシングレーが断然似合う。夕刻の残照がパネルに映えて、綺麗なグラデーションが浮かび上がるところなど、ちょっとゾクゾクするくらいであった。

帰路はクローズドでドライブ。オープンカーは屋根を閉めると何だか残念な気分になったりしがちなものだが、ロードスターRFの場合、クローズドにしたらしたで、ちゃんと気密性が保たれたクーペのような居住感になり、静粛性も結構高い。オープンとクローズ、一粒で二度美味しいという感じであった。

◆欠点に目くじらを立てる気にすらならない

ロードスターRFはクーペとしてとても魅力的なフォルムとハイレベルなフィニッシュを持ちながら、それがオープンにもなるという時点で、その他のことは大概どうでも良くなるようなキャラクターのクルマだった。また、バリオルーフの精密感あふれる動きなど、良いモノ感も抜群で、時計で言えばIWCのような所有満足度がありそうに思えた。

細かいことを言えば、変速時のATとエンジンの協調制御が甘くて変速感がナマクラであったり、カーコミュニケーションシステムの操作性が悪かったりと、治すべきところもいろいろある。が、それらの欠点に目くじらを立てる気が起きないのだ。減点法ではなく加点法で見たくなるあたり、ロードスターRFは日本車としては数少ない、プレミアムセグメント的クルマづくりができている好例だと思われた。中心価格帯は300万円台後半と高価だが、乗ってみた印象としては、逆にこのクルマを200万円台で売るイメージはないし、多くの台数を売りさばく必要もないだろう。収入や資産に余裕があり、この種の遊びグルマを欲している顧客にとっては、とてもいい選択肢のひとつになろう。

最後にひとつ。ロードスターRFがこういうクルマに仕上がったのは、制約の多い中で良いモノを作ることに懸命に取り組まざるを得なかったという環境が生んだ偶然であり、まぐれ当たりの域を出ない。マツダはロードスターRFの開発をきっちり検証して、こういうクルマづくりを本当の意味で自分のものにしていくべきだ。この経験を生かすも殺すも自分次第である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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