【マツダ CX-5 開発者インタビュー】全方位でハーモナイズされた“深化”した CX-5

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マツダ 商品本部主査・児玉眞也氏とデザイン本部チーフデザイナー・諫山慎一氏
マツダ 商品本部主査・児玉眞也氏とデザイン本部チーフデザイナー・諫山慎一氏 全 23 枚 拡大写真

2017年2月より日本から順次グローバル導入、北米向けには初となるディーゼルエンジン「SKYACTIV 2.2」搭載を発表。「魂動デザイン」を象徴する新しいボディカラー、「ソウルレッドクリスタルメタリック」も威風堂々とした佇まいで、ロサンゼルスオートショー参加者の注目を集めたマツダの新型車『CX-5』。同社の商品本部主査・児玉眞也氏とデザイン本部チーフデザイナー・諌山慎一氏に、新型車開発にかけた想いを伺った。

◆“深化”したデザイン

----:遂に新型「CX-5」が世界初公開となりましたが、反響はいかがでしょう?

児玉氏:想像以上にデザインが好評です。「特にインテリアがいいですね」というポジティヴな声をかなり頂いているのは嬉しいですね。

----:デザインが上がってきたときの第1印象はいかがでしたか?

児玉氏:CX-5の面影は残しつつも、特にヘッドランプがかなりシャープになりましたよね。例えるならば大人の男の顔になったような感じです。インテリアは、インパネのラインがドアまでつながっているのがアイキャッチとして機能し、空間を広く見せていると思いました。

「魂動デザイン」の深化の方向性として“日本の美を感じていただきたい”という目標があります。それは敢えてシンプルな形状にするけれども、光の反射でドラマティックに美しく見える…例えるなら日本庭園や陶磁器のようにシンプルだけど味があって美しいという目標を、特に横から見た時に実現できたのではと感じています。

諌山氏:「魂動デザイン」のベースとなる考え方は、車をただの鉄の箱と考えるのではなく命を与えたい、というもの。その哲学はまったく揺るいでいません。その中で、表現の手法をより深く…それを今回“車をアートのように美しく作り上げたい”との思いを込めて「CAR AS ART」と呼び、新しい考え方のゴールとしました。

この高いゴールへ向けての第一歩に位置するのが、新型「CX-5」。新型「CX-5」に関してはさらに「REFINED TOUGHNESS=洗練された力強さ」というデザインコンセプトが別にあります。世界的に成功した初代「CX-5」の強みであるバランスの取れたパッケージなどの良さを盛り込みつつ、さらに一段高い次元に上げて行きたい、より力強く美しくしたいというのが「魂動デザイン」の深化です。

----具体的なデザインの深化とは?

諌山氏:たとえばブランド表現。ファミリー・フェイスといわれるフロントマスクが、今まではシグネチャーウィングがランプの中で前後方向だったものを、ランプの下でワイドに広げて置いています。今までの飛びかかる時の動きのような前のめりの造形に対して、今回は奥行きとスピード感を表現したかったので、逆に前から後ろのタイヤに向かってチカラがかかるような造形にしました。もちろん前のタイヤにもしっかりと造形を流し込むことで4本のタイヤにしっかりと荷重がかかる。現行モデルは後ろのトラクションが少し抜けてお尻が上がっていたのをぐっと沈み込ませることで、より地に足がついたトラクションフォルムを表現したかったんです。実際トレッドを広げていますし、4本のタイヤが外側で車をしっかり支えています。

◆CX-5の成功をもう一度

----:新しいCX-5をつくる、というのは実績があったからこそ難しかったのでは?

諌山氏:現行の「CX-5」の成功をもう一度実現したいという思いがありましたから、目先のデザインを変えるというアプローチではダメ。商品の魅力を確実に上げインテリアもエクステリアもすべてに手を入れて緻密に作り込み、ガラっと違うものにするため、完璧にやり込まずには達成できないと思いました。妥協できなかったんです。

キャッチーなデザインチェンジよりも匠の手仕事の深さの重みなどを全方位で具現化したいという思いが1番のポイントだったと思います。匠モデラーが3~4人ほどいて、テーマを昇華出来ない時に彼らにもう一度自由に表現してもらったり、玉川堂の工房を訪れて学んだ鎚起銅器のノウハウを自分たちの工房で実践して次のクリエイションや発想を生み出したりしました。

----:現行モデルと比較して新型の満足度は?

児玉氏:デザインや走りに限らず、音に関する面なども含めた全方位で、ひとつ上のステップへ上がることが出来たと思っています。

----:新色“ソウルレッドクリスタルメタリック”にたどり着いたいきさつとは?

諌山氏:「CAR AS ART」という思想に基づいてもう一段上がって行く時に、造形と色は表裏一体だと僕らは思っていて、我々の造形をより引き立ててくれる色を作りたかったんです。ボディの抑揚をより高め、繊細な造形を逃さず表してくれる色が必要だったんです。その答えとして明暗のレンジがとても広く、光に敏感に反応する…明るい赤から、むしろ黒に見えるほどの赤を作ることで実現できたと思っています。

技術的には数多のイノベーションや挑戦、トライアルも重ねたんですね、一筋縄ではいかないことを行ったので。正直言ってこの車に間に合うのかすら分かりませんでした。焦りましたけど、僕らからすれば「これは要る!」という思いでしたから、そこに実は色々とドラマがありましたね。

----:やはり、この色は今後他の車にも取り入れられていくのでしょうか?

諌山氏:そのつもりで検討しています。マツダデザインの象徴ですし、深化の大きなポイントですから。

◆全方位でハーモナイズされている

----:今回、デザインと技術のすべてにおいてモデルチェンジをなさったわけですが、手応えを感じた瞬間とは?

児玉氏:個人的には初めて運転した時に、静かさやコントロールのしやすさを含めた操縦性の素晴らしさに感動しました。本当に大切な車なので、上層部全員に乗って確かめてもらったのですが、“すべてがハーモナイズドされている”と複数人が語ったんです。開発、デザイン、生産技術、工場それぞれが自分の領域を高めることだけに終始せず、同じベクトルに向かって仕事をした結果だということが乗っていて分かると各部門のトップから軒並み言われた時には、手応え以上にまず新型「CX-5」に関わった全ての人たちに感謝しました。僕の経験上、全方位でハーモナイズされているという意見が各部門の上層部から複数出たのは今回が初めてです。

----:「CAR AS ART」という考え方は、デザインに限らないということでしょうか。

児玉氏:日本の伝統的な考え方としては、デザインに限らず(アートは)共通して存在していると思います。これからもメイド・イン・ジャパンを打ち出して闘っていきたいですし。ものを作る上での考え方として、それぞれがすり合わせて良いものを作るというのは日本ならではだと思います。

----:とはいえ、各部門で譲れないものがあったのでは?

児玉氏:出来ない言い訳よりもどうやったら出来るかを考える癖が現行の「CX-5」以降の車づくりの中で土壌として出来ているので、新型からというよりも自然とそういうすり合わせができているんです。(2012年に誕生した「CX-5」に)SKYACTIVを初導入した時からの、自分たちの理想の車に向かって皆がベクトルを合わせていくという考え方が浸透してきたところが大きいですね。

----:今後の「CX-5」に期待することとは?

児玉氏:「CX-5」だけが評価され、売れればいいとは思っていません。いかにマツダとしてブランドを高めていけるかが重要。「CX-5」に興味を持って頂けた方に限らず、この新型「CX-5」を通して、マツダというブランドの未来に期待して頂ければと。理想としては、お客様に特定の車目的ではなく、「とにかくマツダの車が欲しいんだ」と販売店にお越しいただき、ワクワクと楽しみながら車選びをしていただくことですね。

《宮原亜矢》

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