【土井正己のMove the World】トヨタの次世代EVは歴史を変えるか…豊田佐吉の夢

エコカー EV
トヨタが北米で市販した電気自動車「RAV4 EV」
トヨタが北米で市販した電気自動車「RAV4 EV」 全 4 枚 拡大写真

トヨタが12月1日付で、EVに取り組む新体制をスタートさせた。豊田章男社長がEV事業企画室の統括を兼務するということだから、これは本物だ。レクサスも豊田社長の「直轄地」となってからは、あの大胆なフロントグリルデザインが採用されるなど凄味が増した。今回も、EVとしてトヨタがどんなクルマを出してくるのか、大変楽しみだ。

【画像全4枚】

◆初代「RAV4 EV」は1996年にデビュー

「トヨタはEVに出遅れた」というメディア報道もあるが、この見方は正しくない。トヨタのEVへの取り組みは、実は、ハイブリッドよりずっと長い歴史がある。EV量産第一号は1996年で、『RAV4 EV』。日本と米国カリフォルニア州でデビューし、2003年まで販売された。1995年には、このRAV4 EVが世界初のEVラリー「第1回スカンジナビア・エレクトリック・カー・レース」で優勝している。また、米国ではつい最近まで、このクルマが電気スタンドで充電されている様子が確認されており、20万km以上の走行実績があったらしい。そして、社内的には、このクルマの開発チームが、初代『プリウス』の開発にも大きく貢献するなど、RAV4 EVが果たした役割は大きい。

◆「佐吉電池」の研究は1925年から

トヨタの電気利用に関する歴史はさらに遡ることができる。それは「佐吉電池」への取り組みだ。自動織機の発明で財をなしたトヨタグループの創業者である豊田佐吉は、1925年、画期的な蓄電池の開発を公募した。「100馬力で36時間持続運転でき、重さ60貫(225キログラム)、容積10立方尺(280リットル)以内」という条件だった。懸賞金は100万円で、当時の初任給は75円程度ということだから、その額の大きさに世間は驚いた。佐吉は、飛行機にも利用できる電池を夢見ていたようだが、やはり無理があった。しかし、佐吉の意思を継いだ豊田喜一郎は、1939年に蓄電池研究所を芝浦に作り、これが豊田中央研究所の母体(1960年設立)となっている。トヨタは今も「佐吉電池」の実現を目指し、電池研究を精力的に行っている。

◆次世代EVはどんなクルマになるか

そう考えれば、トヨタにとってEVそのものは、何も新しいものではない。ただ、現在においては、航続距離で300~500kmを必要とすることから新たなバッテリーが必要となる。トヨタは、ハイブリッドカー用のバッテリーを当初、パナソニックと共同開発してきたので、今回再び、パナソニックから調達するという説もある。しかし、可能性として考えられるのは「佐吉電池」だ。社内での長年の電池研究成果を生かして画期的なバッテリーを独自搭載してくる可能性がある。個人的には、こちらの方に期待したい。

次に楽しみなのはデザインだ。EVはガソリン車と異なり、エンジンスペースなど気にしなくていいので、かなりデザインの自由度が高まる。また、ガソリン車よりも加速感が味わえることから、スポーツカーとしての位置付けも考えられる。豊田社長は自らもレーサーであることから期待は高まって当然だ。ボディー軽量化を図るため、FRP(繊維強化プラスティック)も多用してくるだろう。さらには、これも豊田社長が投資を決めたシリコンバレーでのAI研究所(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の研究成果も、この新型EVに搭載してくるのではないだろうか。

◆目指すはオリンピック

このようにトヨタにはEV研究の長い歴史がある。また、ハイブリッドカーを通じて培った電気利用技術には圧倒的な競争力がある。さらには、未来に向けたあらゆる研究開発が投資回収の時期に入ってくる。これを豊田社長が陣頭指揮をとり、世に送り出してくるクルマはEVの歴史を変えるものになるだろう。2020年のオリンピックが、その舞台として用意されている。なんとも楽しみな話である。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年までチェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

《土井 正己》

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