【アバルト 124スパイダー 試乗】もう少し、なんとかならなかったのか、インテリア…岩貞るみこ

試乗記 輸入車
アバルト 124スパイダー(写真は海外仕様)
アバルト 124スパイダー(写真は海外仕様) 全 8 枚 拡大写真
ABARTHは、日本語読みだとアバルトで、英語読みだとエイバース。イタリア本国ではアーバルトだ。イタリアでは“TH”は「ト」になるから、ジョナサンはジョナタンなのである。なんかかわいい。と、そんなことはどうでもよくて。

とにかく色っぽいボディラインである。どの企業もグローバル化が進み、とくにデザイナーには国籍の色がなくなってきたとはいえ、クルマの側に血筋と文化がある以上、アバルトの“らしさ”は香り立つ。フロントマスクが放つ存在感ははんぱない。バックミラーにちらりと映っただけで、思わず二度見、さらにじっと目で追ってしまう。サイズ感も手頃で扱いやすい。『ロードスター』がベースだから、当然なのだけれど。

運転席に座るとハンドルの中央の位置に、見せつけるように現れるアバルトのマーク。エンジンをスタートさせると、聴音されたように響く心地いいエンジン音。マニュアルミッションゆえ、アクセルとクラッチの両ペダルで操作するたびに、エンジン音に強弱がついて心が躍る。オープンにして走るとボディエンドから出た排気音がダイレクトに耳に届くから、その楽しさは倍増する。屋根は布製の幌で、個人的には閉じたときの形が好みではないけれど、ハードトップに比べて音の侵入はこちらのほうがあるので、自分で奏でる排気音をより楽しむことができるというわけだ。

きゅっきゅと走る小気味良さ。オープンエアの気持ちよさ。それに乗る自分…と、ナルシストでなくてもひたるに十分なのだが、ふと見るインテリアで現実に引き戻される。そうだった。運転席まわりのアバルトマークをのぞけば、これはロードスターのインテリアと同じなのだった。ウィンカーレバーも右にある。心の中にふくらんだ異国情緒は霞のように消えてしまう。

新しい彼とのデートを楽しんでいたつもりが、ところどころに見え隠れする昔の彼の面影。これでは、ロマンチックな気分にひたれないではないか。もう少し、なんとかならなかったのか、インテリア。イタリア人やほかの国の人々なら、日本もまた外国なのだろうけれど、日本人でマツダというブランドに慣れ親しんでいる身にとっては、とても残念な気分なのである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「本当に世に出るとは」車重わずか1トンで800馬力V12、「超アナログ」スーパーカー…新型車記事ランキング 8月
  2. さらなる人馬一体へ!NDロードスター用「リビルトエンジン」発売、価格は65万7800円
  3. マツダの新型SUV『EZ-60』すでに4万台の予約殺到! SNSでは「マツダ復権か??」「日本でも売るべき」など話題に
  4. BMW、ケージ構造でヘルメット不要の電動スクーター『ビジョンCE』発表へ…IAAモビリティ2025
  5. メルセデスベンツ『Gクラス』、オープン「カブリオレ」復活へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る