【日産 ノート e-POWER 試乗】せっかくの良いクルマなのに、燃費スペシャルグレードはいかがなものか…松下宏

試乗記 国産車
日産 ノートe-POWER
日産 ノートe-POWER 全 18 枚 拡大写真

『ノートe-POWER』はエンジンで発電し、モーターで走る。エンジンの力を発電だけに使う方式はシリーズハイブリッドと呼ばれるが、日産はあえてハイブリッドという言い方をせず、電気自動車であることを強調している。

走りはとても良い。『リーフ』と同じモーターを搭載することで、静かで力強い走りが可能である。アクセルを踏むと瞬時にトルクが立ち上がるので、発進加速はとてもスムーズで切れ目なく加速していく。

発進するとすぐにエンジンがかかり、市街地では状況に応じてエンジンが止まったり回ったりするものの、高速走行になるとエンジンはずっと回ったままになる。ただ、エンジン音が静かなので感覚的にはガソリン車を走らせているのではなく、電気自動車を走らせている感じだ。

特に良いのが「ワンペダルドライブ」だ。e-POWERには3種類のモードがあり、ECOとSのモードを選んで走ると、アクセルペダルから足を離したときに通常のガソリン車のエンジンブレーキに比べ、3倍くらい強い減速感が得られる。(ノーマルモードは通常のガソリン車と同じ)

なのでブレーキを踏むことなく減速するし、そのまま停止する。停止すると電気式のパーキングブレーキが働くので、ブレーキペダルを踏まずにそのまま信号待ちができる。

このワンペダルドライブには慣れが必要で、最初のうちは想定よりもずっと手前で止まってしまい、アクセルを踏み増すことが多くなりがちだが、慣れればブレーキペダルを余り使わないで走らせることができる。

BMWの『i3』でも同様にワンペダルドライブが可能だが、eパワーの方がi3より自然な感覚の走りで、運転がしやすい印象があった。

燃費も相当に良さそうだ。電池が残っている状態だと市街地などである程度の距離を走っても40km/リットルを超える累計燃費を表示していた。高速走行はやや苦手で、80km/h~100km/hの巡航では18.0~20.0km/リットルの間で瞬間燃費の表示が変化していた。市街地でのタウンユースを中心にクルマを使う人向きのクルマだ。

問題は価格。モーターや容量を抑えたとはいえリチウムイオン電池を搭載することが影響し、スーパーチャージャー仕様に比べて20数万円高く、ガソリン車に対しては60万円以上も高い。燃費で取り戻せる額ではないから、電気自動車的な新しい運転感覚を評価した人が買うクルマである。

足回りは従来のノートと変わっていない印象だ。乗り心地は良くないし、路面に凹凸があるようなシーンではバタついた動きになる。パワートレーンを新しくするなら、足回りにも大きく手を入れてほしいところだった。

もうひとつの問題は「e-POWER S」という売る気も作る気もない燃費スペシャルグレードを設定したことだ。マニュアルエアコンすら装備されず、オプションで装着することもできない。後席にはパワーウインドーが装備されず、燃料タンクの容量も減らしている。

このような仕様で『アクア』の燃費を上回ったからといって、何かうれしいことがあるのか。こんなグレードを設定したことは、逆にe-POWERの燃費の実力がアクアに届いていないことを自ら明らかにしただけではないか。

燃費スペシャルはアクアも『フィット』も『デミオ』もやっていることだが、e-POWERはせっかく良いクルマに仕上がったのだから、こんなインチキなグレードは作らなきゃ良かったのに。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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