【意外なヒット】スズキ ハスラー…成功を予想したのは1人だけ?

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スズキ・ハスラー
スズキ・ハスラー 全 6 枚 拡大写真

スズキの予想外のヒット車種として『ハスラー』があります。年末年始の読み物「意外なヒット」シリーズ最終回。名前を聞けば誰もが知っているヒット作ながら、当初はそれほどの成功を誰も予想していなかったモデルを紹介しています。

「遊べる軽」のキャッチコピーと愛嬌のある顔でお馴染みのハスラー、今ではかなりの人気と知名度を誇っていますが、発売前にはこれほど売れるとは誰もが予想していませんでした。たった一人を除いては……。

このハスラーという車種が生まれるに至ったきっかけとなる事件があります。それは、スズキの名物会長鈴木修氏が会食の席で、2009年に生産を終了した『Kei』(大径タイヤを履き地上高を高くしたセダンとSUVのクロスオーバー車)に対する後継モデルを待ち望む声を聞いたことです。

たった一人のユーザの直訴から意外な軽クロスオーバーの需要を見て取ると、早速現場に検討の指示を出します。そうして誕生したのがこのハスラーです。それにしても、鈴木会長の決断力とわずかな期間で本当に市販化してしまう行動の早さには驚かされます。ハスラーが売れると予想していたたった一人とはもちろんこの鈴木会長のことです。

スズキKei
スズキKei

では、それ以外の人にはなぜ売れないと思われていたのでしょうか。ハスラーは「軽クロスオーバー」という新ジャンルを開拓したと謳ってはいますが、これは販売戦略上の話で、実はハスラー以前にも、ホンダにドア枚数こそ3枚なものの『Z』があり、ダイハツには『ネイキッド』、軽ではないもののニッサンには『ラシーン』、そして何よりスズキには前出のKeiと各メーカーそれぞれに乗用車派生型のクロスオーバー車が存在していました。

しかし、そのほとんどが後継車種を発売することなく、わずかな販売期間で廃盤となってしまっていました。ですので、このハスラーも大して販売台数を伸ばすことなく生産終了を迎えると思われていたのです。そんな大方の予想を大きく裏切り、正確な台数こそ公表されていないものの、月間目標販売台数の3倍を超える爆発的ヒットを記録しました。

スズキ・ジムニー
スズキ・ジムニー

好調の理由は、その外見の愛らしさももちろん理由の一つではあるものの、本質は、やはり外観とのギャップともいえる、オフロード走行まで視野にいれた本物志向の作りにあると思われます。同社の販売戦略としても、純粋な軽自動車としての『ワゴンR』と本格的RV『ジムニー』との丁度中間となる見事なポジショニングだと言えます。

これら見事な戦略と拘りの車作りの一端には、やはり鈴木会長の意向が反映されていることが伺えます。会長は以前にも記者会見の場で次のように発言しています。「高齢化と過疎化が進む地方で存在価値のあるクルマづくりを目指す。もう、シェアにはこだわらない」。つまり、これまでの狭義でのマーケティング主導の売れそうな車作りから脱却し、乗って欲しいもの、新たな価値や市場を消費者とともに創造する、真の車作りに回帰するというのです。これからも鈴木会長率いるスズキの動向に目が離せません。

《山里真元》

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