【ダイハツ トール】“新ジャンル”表現した4つの顔…デザイナーインタビュー

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上段がダイハツトール(左)、トールカスタム(右)、下段がトヨタルーミー(左)、タンクカスタム(右)
上段がダイハツトール(左)、トールカスタム(右)、下段がトヨタルーミー(左)、タンクカスタム(右) 全 8 枚 拡大写真

トヨタ『タンク/ルーミー』、スバル『ジャスティ』としてOEM供給するダイハツ『トール』。このクルマには、4つの顔と、3社の系列販売会社の棚に並ぶそれぞれの“売り”がある。カギとなったデザインについて、ダイハツ工業 デザイン部 才脇卓也主査に聞いた。

◆軽の拡大版ではなく新ジャンル

1998年、トヨタがダイハツの株の半分以上を買ったことで、ダイハツはトヨタグループの一員に。トヨタとの連携で生まれたクルマのなかには、2002年に登場したトヨタ『プロボックス』(ダイハツの受託製造)や、2004年からの『パッソ』(共同開発)などがある。が、今回のトールは違う。

「こんどのトールはOEMでやると。トヨタ営業部門からは、『bBやラクティスの後継になるような存在に』というオーダーがあり、ダイハツにとってはまったくオリジナルの新ジャンルとして取り組む姿勢でデザインした」

トヨタの販売4チャンネルに合わせたデザイン。その手前に、2分するカテゴリの注目度が違った。

「ミニバンクラスは、トヨタではノアに対してヴォクシーがあるように、“標準”と“カスタム”がある。(ホンダの)ステップワゴンも標準とスパーダというように。販売比率を見ると、どのクルマもほとんどが、カスタム系に人気がある」

◆真逆のつくりを並列で再現

標準とカスタム。クルマ好きならばその面構えでどちらかを見分けられる。才脇主査は、その双方に共通するエクステリアデザインのコンセプトと、差別化を教えてくれた。

「トールのエクステリアデザイン、とくに顔については、標準とカスタムに共通の『堂々迫力』というデザインコンセプトのもと、標準には『躍動感』、カスタムには『品格・艶やかさ』を強調し、差別化を図った」

グリルまわりだけを切り取って見ると、「別車種か」と見紛うほど違いがある。そこには、「真逆」というキーワードが隠れているという。

「カスタムは分厚いヘッドランプでグリルが重心、おちょぼ口台形。標準は顔が切れ長で薄いヘッドランプ、裾広がりの台形。グラフィックの違いを真逆にとった。デザイン上の重心もカスタムが上、標準が下と、真逆にとった。この2車種は極力、逆をとろうと」

◆トヨタ向けデザインではないが…

まず自社グループで販売するトールの標準とカスタムの2つの表情は決まった。その先にある壁が、トヨタ系販売店4チャンネル。「2種」の次の「4種」への挑戦だ。才脇主査は、「トヨタ店、カローラ店、トヨペット店、ネッツ店に向け、カスタム系のルーミー、トールカスタム/ルーミーカスタム、標準形のトール/タンク、タンクカスタムと、4種類のスタイルを作った。それは、簡単なことではなかった」と振り返る。「どれも同じに」が難しいと。

「トヨタ系販売店は、競争も激しいから、4種類の完成度をすべて同レベルに上げていかなければならない。この『どれもみんな同レベルに完成度を上げる』という目標に向けて、グラフィックの突きつめを繰り返したあたりは、やっぱり苦労した。実は、フードは4車種とも共通。それでもこれだけ表情を変えることができた。ただ、トヨタ向けにデザインしたという意識はない。4つの違いをバランスよく出すことを目標とした」

表情を、2つから4つへ。ダイハツのデザインチームも総動員に。

「顔のつくり分けは、ダイハツの標準とカスタムという従来の作りかたで上手くいけると思ったけど、トヨタ系販売会社4チャンネルに向けると、それが倍になる。だからデザインチームの人員も2倍ほど必要となった」

◆軽拡大版じゃない証「ウェッジ」

軽自動車で培った技術でリッターカーをつくる。そのスタンスではスズキ『ソリオ』が先行しているが、才脇主査は「ソリオのつくりかたとは違う」と重ねて伝えていた。才脇主査率いるデザインチームは、「新ジャンル」と打ち出せるデザインとどう向き合ったか。

「スズキ『ソリオ』のような軽自動車の拡大版というイメージじゃなくて、こちらは新ジャンル。その新ジャンルというイメージまで突き抜けるデザインに時間をかけた。『もっとウェッジをつけろ』『斜め後ろに上がっていくようなラインを入れろ』という声もあった。ミニバンやワンボックスは、水平基調をベースとするけど、このクルマはリアのフィニッシュラインまで突きつめた造形を達成させている」

「リアコンビネーションランプもそう。ハウジングケースはひとつで、中のインナー部分を2種類にして、レンズの色変えだけで4種類の表情を作っている。さらに、キャラクターラインがリアコンビネーションランプ付近で食い込む作りにかなりこだわった。このボディラインの食い込みは、一枚の鉄板で作ったとは思えないほどの出来。仮にこれを一直線につないだら、いまある軽自動車のスタイルといっしょになってしまう」

才脇主査率いるダイハツのエクステリアデザインチームの“作り込み”を感じるならば、ショールームや試乗車で、リアコンビランプまわりをタテ・ヨコ・ナナメから見るのもいい。

《聞き手:宮崎壮人 まとめ:大野雅人》

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