洗車時に気が付いたボディの小さなキズは、板金修理に出す前にコンパウンドでDIY補修を試せる。軽度の補修なら意外とハードルは高くない。
愛車のキズは大小に関わらず気になるものだ。ドライブ中に付けてしまった大きなキズはプロの板金修理に頼むとしても、ほんの少しの小キズは悩みどころだろう。気にしないと言い聞かせても、キズがあると知ってしまうと洗車のたびに目に入り、どうにも落ち着かない。
◆まずはキズの深さを見極める
そこで軽いキズは、思い切ってDIYでリペアしてみよう。ボディ補修は難しそうに感じるが、失敗しない手順で深追いしなければ、それほど難しい作業ではない。プロが仕上げた新車同様の“完璧”を最初から狙わず「目立たなくする」ことを目的にすれば、DIYでも想像以上にきれいになり満足できるケースは多い。
最初に行うのはキズの状況把握だ。ポイントはキズの深さで、どの層まで及んでいるかで作業難度が変わる。ボディは一般的に表面のクリア層、その下に塗装面、さらに鉄板という構造だ。キズ部分をきれいに洗うと状態が見えやすくなる。
最も簡単に補修できるのは、クリア層にだけ付いた浅いキズだ。判断方法として有効なのが、キズ部分に水をかけること。水をかけた瞬間にキズがさっと消えるなら、クリア層のみのキズと考えられるので今回のDIY補修に進もう。逆に水をかけてもキズがはっきり見え続けるなら、塗装面や鉄板に及ぶ深いキズの可能性がある。その場合は無理をせず、今回の作業は見送るのが安全だ。
◆DIY補修に必要な道具はコンパウンドとクロス
クリア層だけの浅いキズだと判断できたら、用意するのはコンパウンド。カー用品でいうコンパウンドは、キズ消し用の研磨剤で塗装の磨き工程や小キズ消しに使われる。カー用品店やホームセンターには多くの種類が並ぶが、液体やペースト状など作業性もさまざまだ。初めてなら扱いやすいペースト状から選ぶと失敗しにくい。
コンパウンド選びで重要なのは番手で、研磨粒子の細かさを示す。サンドペーパーと同様に、粗いほど数字が小さく細かいほど数字が大きい。コンパウンドも粗目、中目、細目、極細目、超極細と段階がある(目安として超極細=#17000程度、極細目=#8000程度、細目=#6000程度、粗目=#350程度)。大きく削るなら粗目から、仕上げに向けて細かくしていくのが基本だ。
ただし今回のようにクリア層のキズを磨く目的なら、最初から極細目~超極細の仕上げ用を使うほうが安心だ。うっかり削りすぎてクリア層を傷めるリスクを減らせる。時間はかかるが難易度は下がる。細目~超極細がセットになった商品もあるので、最初はセット購入が手軽だろう。
◆磨き方の手順と“深追いしない”仕上げの基準
作業を始める前に、キズ部分をきれいに洗車して汚れを落とす。次に小豆大のコンパウンドを磨き用のファイバークロスなどに取り、キズ部分に広げて縦横に磨いていく。最初は細目~極細目あたりから始め、少し磨いたら拭き取って状態を確認するのがコツだ。研磨力が読めないうちは、磨きすぎを防ぐためにも「少し磨って確認」を繰り返そう。
磨きを進めるとキズは徐々に目立たなくなる。ここで深追いせず、仕上げ用のコンパウンド(超極細など番手がより大きいもの)に替えて同様に磨く。仕上げではキズ部分だけでなく周囲も含めてやや広めに磨くと、境目がなじんでどこにキズがあったか分かりにくくなる。最後にツヤが出てピカピカになればフィニッシュだ。
とはいえ「これで完成」と判断するのは難しい。初めてだと完璧を目指して深追いしがちだが、それが失敗につながることもある。基準は2~3m離れて見たときに目立たないこと。ごく近くで見ればキズが残っていても、少し離れて気にならないなら「実用上OK」と割り切ろう。この割り切りもDIYリペアでは大切だ。どうしても納得できず、さらに上の仕上がりを求めるなら迷わずプロの板金修理に任せたい。
気になっていたボディの浅いキズも、時間のあるときに落ち着いて処理すれば目立ちにくく仕上げることは比較的簡単だ。キズが増えるとクルマの清潔感は落ちていく。気になったポイントに絞って小キズ補修(DIY)を実践し、いつでもきれいなボディでドライブに出かけよう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。




