【プロに訊く】サウンドチューニング心得…何を目指すべきか

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Car's Factory STIL.(山形県)製作のデモカーの、フロントスピーカー。
Car's Factory STIL.(山形県)製作のデモカーの、フロントスピーカー。 全 1 枚 拡大写真

カーオーディオの音の善し悪しに大きくかかわってくる「サウンドチューニング」。これをシビアに煮詰めようと思うなら、プロにお願いすべきであるのだが、それとは別に、自分でもあれこれいじってみると、カーオーディオ・ライフがさらに楽しくなっていく。

楽しむためには“コツ”がある。それをプロに訊いてきたので、2回にわけて解説していこうと思う。第1回目の今回は、山形県の名店、「Car's Factory STIL.(シュティール)」の石岡さんにお訊きした話をご紹介する。石岡さんは、世界基準のカーオーディオ・サウンド・コンペティションである『EMMA(エマ)』と『IASCA(アイアスカ)』の公認ジャッジも務めている実力者だ。

なお今回は、コンペ用のチューニングではなく、普段聴き用の調整についてお訊きしている。参考になる話がたくさん訊けたので、じっくりとお読みいただきたい。

■目指すべきは、“正しいデッサン”。

最初に、どんな音を目指すべきなのか、からお訊きした。

石岡「良い音とは、2種類あると思っています。1つは“自分のとしてリファレンス”、つまりは“自分にとっての基準となる音”ですね。ホームオーディオのシステムの音でもいいですし、ショップのデモカーの音でもいいです。自分として目指したい音、好みの音を、しっかりとイメージできているといいと思うんです。そしてもう1つは、“正解の音”。つまりは“右からの音は右から、左からの音は左から、そして正しい上下関係と前後関係が取れている音”ですね。

この2つがどう違うのかというと、絵画に例えると分かりやすいと思います。“自分としてのリファレンス”は、場合によってはマンガ的な絵でもいいんです。またはピカソの絵のようでもいいんです。好きなタッチで構わない。それに対して、“正解の音”は、写実的な絵、あるいは写真、そういうイメージです。

ただし、ピカソの絵であっても、マンガであっても、基本のデッサンは正しくなくてはいけません。デッサンまでは、どちらの音も同じです。正しい線が描けた上で、好みのタッチに仕上げていくべきなんですね。調整も同じで、まずは正しい音を再現できているかどうか。ここを目指して煮詰めていくべきです」

それを石岡さんは、どのような手順で進めているのだろうか。フロント2ウェイ+サブウーファーを、単体の“DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)”を使ってマルチドライブする場合のチューニング、という前提でお訊きした。

石岡「まずは各チャンネルの接続の確認をします。その時に左右の接続の確認もします。それから大まかなゲイン調整から入ります。その後、クロスオーバー、タイムアライメント、そしてもう1度ゲイン調整をシビアに追い込み、その後に、イコライザー調整で仕上げます。

なお、タイムアライメントで調整できるのは、ヨコ方向のイメージングです。例えばトランペットの音があったとして、トランペットはラッパ部分が丸いので、音も真円になっていると良いのですが、タイムアライメントがしっかり合っていないと、ヨコ方向に広がって楕円になってしまいます。このようにタイムアライメントでは、ヨコの形、ヨコの位置関係を整えていきます。

その後にゲインとイコライザーで、タテ方向の形と位置関係を調整していきます。例えば、サブウーファー用のアンプのゲインを絞り過ぎると、低音がフロアにへばりつきます。トゥイーターのゲインを上げ過ぎると、音が天井に方向に上がっていきます。逆にサブウーファー用のアンプのゲインを上げ過ぎると、低音が天井方向に向かっていき、トゥイーターのゲインを下げ過ぎると、全体の音よりも高音がフロア方向に下がっていきます

ドラムセットならば、バスドラが下側に、スネアやタムは中央に、シンバルは高い位置にありますよね。アコースティックギターならば、太い弦は上に、細い弦は下に位置していますので、ジャラーンと鳴らした時には、低い音は上になくてはなりません。

これらを正しく再現できるように、ゲインとイコライザーを駆使していくんです」

■生楽器で演奏される楽曲を、いろいろと用意すべし。

次には、どのような音源を使っているのかを訊いてみた。

石岡「ぼくの場合は、タイムアライメントまでは、“足音”の音源を使って調整しています。“足音”って、ヨコの位置関係と前後の位置関係を整えるのに役立つんですよ。かつ、低音から高音までバランスしていますし。そして、ゲインとイコライザーをシビアに追い込んでいく段階から、楽曲で確認していきます。

曲を使って調整していくときには、たくさんの曲で確認していったほうが良いですね。ぼくは50曲くらいを使っています。それぞれ、最初の30秒くらいしか聴きませんが、いろんな曲をかけていきます。

曲によって、つまりはレコーディングエンジニアによって、音の作り方がまちまちです。なので、いろいろな曲を聴いたほうが客観的に調整を進めていけるんですよ。ステージを広く取るエンジニアもいれば、コンパクトに収めるエンジニアもいます。それぞれが正しく再現されるべきなんですね。1曲だけで調整していくと、エンジニアが異なった楽曲をかけたときに、バランスが崩れたりするんです。

基本的には、生楽器で演奏されている音源がいいですね。実際の楽器がイメージできることが重要です。それができないと、正しく再現できているかが分かりづらいですから。その上で、タイプの異なる楽曲を用意したい。例えば80Hzあたりをちょっと動かすと、そのあたりが大きく変化する楽曲とか、10kHzをちょっと触ると、その辺の聴こえ方が大きく変わる楽曲とか。つまり、低域の調整がしやすいもの、高域の調整がしやすいものというように、バラエティに富んだ選曲になっているといいですね」

なるほどだ。

さて最後に、具体的な注意ポイントもお訊きした。

石岡「例えばベースの音があったとします。勢いよく弾いた1音の、消え方に注目してみてください。弾いた瞬間は高い音も鳴るのですが、消えゆくときに最後に残るのは低い音なんですね。この時に、勢いよく弾いた1音が目線上から聴こえて音が消えゆくに従って位置が下がっていったとしたら…。それは上手く調整ができていない証拠です。同じ楽器の音ですから、高い成分の音も低い成分の音も、同じ場所で最後まで鳴り終わらないとおかしいですよね。

心地良い音色が作れても、正しく再現できていないと、長時間聴いていて違和感が出てきます。そうすると何度も何度も調整をやり直すこととなり、悪循環を繰り返して、なかなか自分の思う”良い音”に到達できません。

とにもかくにも、先ずは正確なデッサンが描けるように。これを心がけていただくと上手くいくと思います」

いかがだっただろうか。実際にやってみるともろもろ難しいのだが、目指す方向を見誤らなければ、上手に音を操れるようになるはずだ。調整は慣れるしか上達する術がない。石岡さんの話を参考にして、“正しい音”に向かってトライを続けよう。

【プロに訊く】「サウンドチューニング心得」パート1「何を目指すべきか」

《太田祥三》

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