スバル BRZ GT、純正ザックスダンパーを峠道で試してみた

試乗記 国産車
BRZ GTザックスダンパーを長尾峠、芦ノ湖スカイラインで試す
BRZ GTザックスダンパーを長尾峠、芦ノ湖スカイラインで試す 全 9 枚 拡大写真

2016年11月に販売が開始されたスバル『BRZ GT』。すでに試乗インプレッションがいくつか公開されているが、やはりGTグレードの最大の特徴は、なんといってもザックス(SACHS)ダンパーだろう。

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プロトタイプがお披露目(2016年7月)となり、サーキット走行でFRとは思えないアングルと姿勢でコーナーを抜ける写真をみたときから、どんな足なんだろうと非常に興味を持っていた。スバルから広報車を借りることができたので、さっそく箱根に持ち込んでみた。

◆まずブレーキングでわかる足の違い

ダンパーを交換した(チューニングした)車かどうかは、実は、コーナリングのロールやヨーの変化より、ブレーキングや加速時のピッチングの具合でわかる。ブレーキングのノーズダイブが、一般的なダンパーとスポーツタイプもしくは競技用ダンパーでは明らかに違う。乗り心地より走行性能に振ったダンパーの場合、最初のブレーキングで減速Gは感じるものの車が前に傾く動きはほとんどない。

BRZ GTのダンパーもまさにこの動きをする。街乗り、低速ではBRZの最上級グレードに恥じないマイルドな動きをするのだが、ブレーキングで不快な前のめり感はほとんどない。荷重移動がスプリングやダンパーの余分な動きで吸収されないため、フロントのグリップ感も感じられ、中高速域のコーナリングも安心感がある。加えてリアサスの動きも安定しており4輪の接地性は高い。

◆応答性がよいのでステアリング操作は若干シビア

次に感じるのはステアリングの応答性の高さ。BRZはステアリングギア比が13:1と相当クイックな設定になっている。それだけで普通の車よりステアリングに対する車の動きはシビアになるのだが、実際の車の動きはステアリングギア比を変えたからといってすぐにクイックな動きになるとは限らない。

車の挙動は、ボディ剛性からサスペンションのセッティング、タイヤの性能など総合的に決まるものだ。しかしBRZ GTは、本当に舵角に対する応答が速い。ハンドルの遊びがほとんどないフィーリングで、高速道路の直線でもあまり気を抜いて走れない、といったらオーバーだがそんな動きをする。

狙ったラインをトレースするなどというが、普通は車の動きを予想して少し手前から操作をする。しかしBRZ GTの場合は、本当に狙ったラインを丁寧になぞってやると、そのとおりに動いてくれる感じだ。複合コーナー(箱根旧道には多い)でも、Rが変わったことに気が付いてから対応しても間に合うくらいだ。

◆峠は上りも下りも軽快

動きがクイックだからといって決して運転して疲れるようなシビアな動きをするわけではない。長尾峠の御殿場側の上り下りともに走ってみたが、非常にリズムよく軽快に曲がってくれる。このコースは直線区間が少なく、カーブが連続する典型的な峠道だ。アベレージスピードもそれほど上がらない。

そのため、上りでも下りでも車によっては非常にストレスがたまる道なのだが、余分なロールやピッチングを抑えたダンパーが確実に路面をとらえ、つづら折りの山道を難なく抜けてくれる。その分、Gが若干強めに感じられるが、余分な揺れのないGはむしろ心地よい(セミバケットタイプのシートのホールドがよいからでもあるが)。コーナー出口でロールが残ることもないのでクリッピングポイントからすぐに加速体勢に入れる。

芦ノ湖スカイラインのような走りやすいワインディングでも、動きの軽快さは変わらない。車速やコーナーのRに合わせたしなやかな動きをしてくれる。

芦ノ湖スカイラインや箱根スカイラインにありがちなコースに、コーナーアプローチが下りで、出口から上りになるようなところがある。ブレーキ操作とあいまって上り勾配に切り替わるところで、ギャップや段差を超えるようなダンパーが跳ね返る軽いショックを感じるのだが、ここでもザックスダンパーは余裕のある動きを見せる。このような衝撃は、堅いダンパー、サスペンションほど大きいものだが、BRZ GTは、ダンパーの伸び方向の絶妙な減衰力のおかげだろうか、じつにしなやかだ。

◆ブレーキパッドは好みが分かれそう

車として気になった点もいくつかある。まずは室内の騒音だ。ロードノイズ、エンジンノイズともに高い。BRZという特殊な車と考えれば許容範囲ではあるが、高速道路のロードノイズ、2000回転前後までのエンジンノイズ(メカニカルな音がする)はちょっと気になった。ただし、この騒音がフロントの隔壁の遮音版がないためだとしたら、自分なら「重量が増えるならこのままで」となるだろう。

ハンドルの取り付け角度も気になった。ハンドルが床に対して垂直に近い角度で飛び出ているのだが、ペダル操作のとき、足がハンドルを持つ手にあたることがあった。もう少し角度を寝かせて足を動かせるスペースがほしいところだ。もっともステアリングギア比が高いので、ハンドルを持ち替えるような操作は街中や車庫入れなど以外あまり必要ない。高速道路やワインディングでハンドルや足が邪魔ということはほとんどなかった。いずれにせよスポーツ走行では、手がハンドルから離れることがない送りハンドルをすれば問題ない。

ブレンボのブレーキは、制動力の問題はないのだが、フィーリングは筆者好みではなかった。低温から効いてくれそうなパッドの初期制動の良さは悪くないが、もう少しじわじわ効いてくる感じでコントロールブレーキがしやすいタッチだとうれしい。ブレンボのパッドの特性とも関係しそうだが、ブレーキダストもちょっと多めだ。パッドだけは交換したいと思った。


車両協力 富士重工業

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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