ルパン三世『血煙の石川五ェ門』小池監督インタビュー…剣士の出会いと挫折

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「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」小池健監督インタビュー 孤高の剣士・五ェ門の若き日の出会いと挫折
「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」小池健監督インタビュー 孤高の剣士・五ェ門の若き日の出会いと挫折 全 5 枚 拡大写真

小池健監督による「LUPIN THE IIIRD」シリーズ第2弾となる映画『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』が2月4日より新宿バルト9ほか〈4週間限定〉全国公開される。 2014年に公開され、ハードでダンディズム溢れる映像で話題を呼んだ第1弾「次元大介の墓標」では次元にスポットを当て、ルパンが次元の相棒になるまでを描いた。今作では五ェ門とルパンたちの出会い、五ェ門の前に立ちはだかる強敵・ホークとの戦いと挫折・再生を描く。 自身も大のルパンファンで、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』ではキャラクターデザイン・作画監督を務めた小池監督。『REDLINE』など作家性の高いアニメーション制作から実写映画のアニメーションディレクターまで様々な場で活躍する彼が描いた五ェ門とは? ルパン作品の思い入れについても聞いてみた。
[取材・構成:川俣綾加]

『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』
http://goemon-ishikawa.com/
2017年2月4日(土)新宿バルト9ほか〈4週間限定〉全国公開

■見どころは50人斬りの剣戟シーン
──前作『峰不二子という女』ではキャラクターデザイン・作画監督を務められていました。「LUPIN THE IIIRD」シリーズは原作のモンキーパンチ先生の線に寄せて描いていると思いますが、『REDLINE』『PARTY7』の頃のような躍動感も感じます。

小池健監督(以下、小池)
『REDLINE』まではアメコミを意識して、陰影をつけるために影を黒ベタにするような画面作りをしていたんです。作家性を出そうと意気込んでました。でも「LUPIN THE IIIRD」シリーズでは「誰が見てもルパン三世だと思ってもらえるように」という気持ちで作っています。作り方の意識は異なりますね。

──クリエイティブ・アドバイザーの石井克人さんはどのような役割なのでしょうか。

小池
イメージアドバイザーやコンセプトアドバイザーとでも言えばいいのでしょうか……五ェ門の敵たるホークのキャラクターイメージ、五ェ門をどんな風に見せるかアドバイスをいただきました。泣いたり戸惑ったり、五ェ門の感情の起伏を見せる作品にする構想、ホークが五ェ門の剣を素手で掴む描写や、ズタボロに打ちのめされてどん底から這い上がるような表現を随所に入れたのも、石井さんのアイデアです。

──作品の根幹に関わる部分からタッグを組んでいるんですね。描かれている五ェ門の這い上がり方が五ェ門らしいというか。前作で、次元はルパンとのバディ感で乗り越えていったものが、五ェ門は全然違っていて。

小池
関係性としては五ェ門はルパンたちの敵なんですよ。一緒に仕事をしたこともなくて、どちらかというとルパンの首を狙ってる。だからルパンは次元の時のように五ェ門を手助けするのではなく見守るほか選択肢は無かった。

──原作とTVシリーズではキャラクターのニュアンスが微妙に異なります。どちらに寄せようと?

小池
原作とファーストルパンで五ェ門が登場するエピソードは、シチュエーションもキャラクター設定もわりと近いんですよ。まだちょっと生意気でおごっている感じが出ていて、今作もそこに近づけています。ファーストルパンの5話のあとの五ェ門をイメージして作りました。

──「LUPIN THE IIIRD」シリーズは大人向けのルパンということでお話だけでなく、表現的にもそれが随所に現れていました。特に傷の描写は筋肉、骨まで描かれていて。

小池
命のやりとりをしている描写を入れないと緊張感が出ないと思って、痛そうな描写はとことん痛そうにしています(笑)。剣の鋭さ、五ェ門の剣速による切れ味を表現するうえで切断面の描写は外せなかったですね。

[次ページ:モンキーパンチ作品との出会い]

──モンキーパンチ作品との出会いを教えてください。

小池
高校生の時です。単行本や「漫画アクション」で読んであまりのカッコよさに感動して。日本人離れした西洋的な画風で色気もあって、他にないビジュアルがとても魅力的でした。あの時、自分がインパクトを受けたモンキーパンチ先生のルパンやTVアニメのファーストルパンの雰囲気をこの映像にどう込めるかはすごく気を使いました。

──その頃からアメコミチックな画風や西洋的な画風に惹かれていたんですね。

小池
好きでしたね。かといってアメコミを読み漁るというよりは、ビジュアルが好きでした。

──躍動感があるビジュアルが好き?

小池
それもあるし、この業界に入って海外のアニメーターと仕事をする機会もあって。そのひとりがピーター・チョンで、『PARTY7』のオープニングアニメーションを一緒に作ったクリエイターです。彼のアメコミチックな絵がそれはもうスタイリッシュなんですよ。一方で彼は日本のアニメーションのファンでもあり、巨匠・金田伊功さんをとても尊敬しているんです。金田さんに憧れてアニメの仕事を始めたとも耳にしました。僕は彼のことも金田さんのことも大好きなので、両方の要素を自分なりに落とし込めたらいいなと仕事をしていた時期もあります。石井(克人)さんもアニメーションが好きな方で『イーオン・フラックス』を見て、『PARTY7』の企画時に僕とピーター・チョンに声をかけてくれたんです。

──今回のルパンもそうですが、『PARTY7』のあとも石井さんとは色々なお仕事で小池監督とご一緒されています。そういった意味で大きな作品ですね。

小池
そうですね。

──今作で描いていて楽しかったシーン、お気に入りのキャラクターがあれば教えてください。

小池
今回はおじさんが多くて(笑)、キャラクターの表情が豊かなので勢いで描いていけるんですよ。描いていて楽しかったです。群像劇でキャラクター数が多くて工数もかかるし、キャラクターが多いと望遠で描くシーンが多いのでしんどかったですが、やりがいがありました。五ェ門の剣戟、特に50人斬りのシーンはぜひ大きなスクリーンで見て欲しいです。

──浪川大輔さんの演じる石川五ェ門についてどう感じていますか。

小池
やっぱり浪川さんが演じるだけあって、完璧です。どのテイクも素晴らしい。何回かオーダーを出すこともありましたが、「イメージとは違うけどうまいからOK」なんてことも多かったです。

──実際にどういうオーダーを出されたのでしょうか。

小池
未熟な五ェ門の雰囲気を出してもらったのが前半。セリフに多少の感情を乗せるようにお願いしました。後半は渋みや憂いを乗せてもらいました。開眼して達成感もある。でも人を斬っているので、人の道から外れたという葛藤もあるんですよね。己の行いは善か悪か常に自問自答するような憂い。

──『ルパン三世』は様々な人によってアニメーション化されています。長きにわたってここまで愛されるのはなぜだと思いますか?

小池
キャラクターの魅力だと思います。ルパン、次元、五ェ門、不二子の関係性がベタベタしない大人の関係性ですよね。「友情が大切だ」とか「信頼が」とか言わないのが大人っぽい。僕が子供の時にルパンで垣間見た大人のアニメーションの世界を大切にしたい。そこが今作の一番の魅力であるとも思います。

──最後に、改めて本作の見どころをお願いします。

小池
今回は五ェ門にスポットを当てたお話。見どころはやっぱり剣戟です! そして五ェ門が鼻をへし折られ這い上がる心理描写も丁寧に作ることができたと思います。ぜひ劇場で観てください。

「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」小池健監督インタビュー 孤高の剣士・五ェ門の若き日の出会いと挫折

《川俣綾加》

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