【トヨタ C-HR ハイブリッド 試乗】クロスオーバーの皮をかぶったプリウスなのか?…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタ C-HR G
トヨタ C-HR G 全 14 枚 拡大写真

トヨタ最新のトヨタニューグローバルアーキテクチャー「TNGA」を『プリウス』に続き採用したクロスオーバーモデルが、コンセプトカーをそのまま市販車にしたようなデザインを持つ『C-HR』である。

Gグレードはプリウス直系のHVシステムを採用。つまり98ps、14.5kgmの1.8リットルエンジン、72ps、16.6kgmのモーターが動力源。車重はプリウスSツーリングセレクション比で約70kg重いため、変速機がローキーヤード化されているのはもちろんだ。そしてモード燃費はプリウス主要グレードの37.2km/リットルから30.2km/リットルとなっている。しかしそれでも『ヴェゼルハイブリッド』、『CX-3』を大きく上回り、クラストップレベルの燃費性能ということになる。

◆前席優先のカップルズカー

C-HRの大きな特徴は、デザインだけではない。FF車は全高1550mmと、立体駐車場への入庫も容易。これは合わせて重心の低さにも直結する。

とはいえ運転席に収まると、ヴェゼルより低いが、CX-3よりは高い着座位置。視界はプリウスより105mm高く、フロアからシート座面の高さも55mm高く、本格SUVほどは高くないものの、プリウスとは別世界と言えるクロスオーバーらしい見晴らし感覚がある。

一方、後席はなんとプリウスと同等の地上高にセットされている。つまり、後席は沈み込んだような着座感になる。プリウスにはないフロア中央のトンネルもあるから、足元広々とも言えない。そもそもC-HRは後席を重視したプリウスのようなファミリーカーではなく、前席優先のカップルズカーというコンセプトなのである。

◆すっきりした操縦性の「Gグレード」

HVであり、FFのみの設定となるGグレードが履くタイヤは225/50R18サイズ。言ってみればTNGAとして始めての18インチだ(プリウスは17インチまで)。路面、段差の大小によって硬さ、突き上げを感じるシーンがないではないが、ボディ、足回り剛性の高さ、よく動くサスペンションによって、むしろフラットで快適な乗り味…と感じる人が多いはずである。

もっと言えば、17インチタイヤを履く1.2リットルガソリンターボ、4WD限定のTグレードより操縦性はすっきり。より上質なドライブフィール、乗り味、プリウスよりスポーティな操縦性の持ち主ということができる。

特にステアリングの効き、リニアさ、人車一体感は文句なく、山道や高速レーンチェンジなどでの姿勢変化の少なさ、安定感はなかなかのもの。聞けばドイツ・ニュルブルリンクで走行テストを重ね、ダンパーメーターのザックスとともに足回りをチューニングしたんだそうだ。

が、気になる点もある。例えば、荒れた路面、粒の粗い舗装路面でのステアリング、フロアに伝わるビリビリした振動だ。同じ路面をプリウス17インチ、C-HR17インチで走っても気にならない。つまり18インチタイヤによる、気にならない人は気にならないかもしれないが、ボクのように気になると「残念無念」と感じてしまうウイークポイントとなる。

◆プリウスとの住み分けができている

1.8リットルエンジン+モーターの動力性能に個性はない。出足はかろやかでそれなりのトルク感もあるのだが、アクセル全開を試みても格別に速いわけではなく、加速に気持ちいい伸びやかさがあるわけでもない。

しかしながら、横浜周辺の市街地30%、首都高速道路70%を走行したときの実燃費は22km/リットル程度となかなかのものだった。C-HR Gはインパクトあるデザイン、SUVテイストあるクロスオーバーなキャラクターを備えていても、あるいはプリウスより走りにこだわっていても、パワートレーンとしては燃費を重視。そこが、ライバル車にないAC100V電源の装備、カラフルで魅力的なボディーカラーの用意を含め、C-HRらしさ、主張ということになるのだろう。

ちなみにラゲッジの使い勝手は優秀。開口部地上高はCX-3とまったく同値の780mmと高めだが、容量は十二分。さらにプリウス、プリウスPHVにある後席格納時の大きめの段差がなく、使いやすい。ペットを乗せるにもより適していると言っていい。

プリウスと同じプラットフォーム、HVシステムを持ちながら、キャラクター、よりスポーティな走行感覚、実用性など別物なのがC-HR。ファミリーならプリウス、シングル、カップルならC-HRというすみ分けがしっかりとできている。しかしHVで264万4600円(S)からの価格は、意外に安いという印象もあったりする。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。

《青山尚暉》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. BEVを2年間所有した、“リアルな”ランニングコストを大公開
  2. 「見れば見るほど味が出てくる」新型日産『リーフ』のエクステリアがSNSで話題に
  3. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  4. メルセデスベンツの万能車『ウニモグ』がキャンピングカーに! 数日間の自給自足が可能
  5. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
ランキングをもっと見る