【インタビュー】マツダ ロードスター が体現する、スポーツカーのあり方と独創性…開発主査

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マツダ ロードスター 開発主査兼チーフデザイナーの中山雅氏
マツダ ロードスター 開発主査兼チーフデザイナーの中山雅氏 全 16 枚 拡大写真

マツダ『ロードスター』に、電動格納式ルーフ採用のリトラクタブル・ハードトップモデル「ロードスター RF(リトラクタブル・ファストバック)」が追加された。ソフトトップとRFの2タイプのボディ、また1.5/2.0リットルのエンジンバリエーションと、数あるグレードラインナップを用意する意義とは。400馬力、500馬力が当たり前、価格も500万円から8桁まで高額モデルが多く存在する現代において、マツダが考えるスポーツカーのあり方とは? 開発主査兼チーフデザイナーの中山雅氏に話を聞いた。

【画像全16枚】

当日は東京都内都内から神奈川県の逗子まで試乗しながら、インタビューを行った。天候はあいにくの雨。しかし、ここでもRFならではの利点を感じることができる。静粛性が高まっているため、ルーフだけでなく車両下部の跳ね返りも含めた雨の音がそこまで気にならない。また重量アップした分、高速走行時の安定性も高まっている。本線への合流シーンや緩い上り坂のカーブでは、豊かなトルクが効果を発揮し、心地よい加速感を得ることができた。

ダウンサイジングしたがゆえの大きなハードル

先代のNC型では約7割をハードトップモデルが占めている。需要はあると見込まれていたため、RFの開発は当初から計画にあったという。

「でもどう考えても、ハードトップモデルにした場合、屋根をしまう場所がないのはわかりきっていたことだったんです。だから最初は棚上げにしていました」と中山氏は話す。

NDではNCに比べて乗車位置が50mm後軸寄りのレイアウトになっており、かつホイールベースが20mm縮まっているため、合計で70mmのサイズダウンになる。ハードトップをしまう空間がないのは誰の目にも明白だ。しかし、ホイールベースを延長したり荷室を犠牲にするつもりはなかった。そのため、ソフトトップの開発を優先。その過程で、解放感や運転する気持ちよさを残しながら、かつ美しいデザイン…というものを考えるうちに、結果として「屋根を全てしまわない」という手段に行き着いた。結果として、それがファストバックのボディスタイルの採用に帰着した。

なぜにRFは2.0リットルなのか

搭載されたエンジンは、ソフトトップにはラインアップのない、SKYACTIV-G 2.0。マツダは適材適所に一番良いものを出すというコンセプトで、エンジンやスペックのバリエーションを地域ごとに設定している。ロードスターも例外ではなく、「日本では1.5リットルエンジンがシェフのおすすめです。アメリカだとどうしても肉がいっぱい食べたい! という人もいるので、2.0リットルを用意している。ヨーロッパは色々な人がいることと、女性もたくさん乗っておられることから1.5リットルのニーズがあり、ソフトトップ、RFともに1.5リットルと2.0リットルを設定しました」という。

そんな中で、日本のRFはキャラクター的に2.0リットルがシェフのおすすめなのだ。「1.5リットルだとトルクが少なくてギアを頻繁に変えないといけない。4速に入れっぱなしでいきたいところを3速へ落とさないといけないとか、高速道路でも6速に入れたままじゃなくて5とか4に落とすとかそれが1.5リットルの楽しみ方ですが、RFはそんなせわしいことをさせないようにと…もっと踏めばゆるゆるとスムーズに前に出るようにしたい、という結論に至ったわけです」。しかしこれは飽くまでも、シェフのおすすめ。「民意があれば世に出さないという気はない」というのもマツダならでは。「それくらいのフレキシビリティはあります」とのことだ。

“あこがれの対象”としてのRF

十分なトルクにゆったりとした走り。静粛性や安定感を備えたボディは、RFならではの優美なデザインを持つ。VSグレードにはソフトトップにないオーバーンというカラーのナッパレザーを採用し、上質さを演出した。価格は324万~373万6800円。やはり、この車はプレミアムカーなのか? その疑問を中山氏にぶつけてみる。

「プレミアムですよね…必要にして十分、というところに上乗せさせていればそれはプレミアムだと思う。必要にして十分というのは良いことで、まさにロードスターのソフトトップはそれだけで一生生きて行ける。毎日必要以上に豪華なご飯を食べなくてもいい。でも人間ってそういう贅沢も必要だと思うからそのためにRFを用意しているわけです。

パワーも必要にして十分だけど、少しだけ贅沢。2.0リットルあるから158馬力使い切ってサーキットを走る! とかそういう話じゃなくて…。作る時はパワーアップが最優先ではなかった。出来上がったものが上品で魅力的だったからそういう仕立てにした、というのが正直なところです。

もともとオープンカーなので、実用的じゃない。ロードスター自体が、“時間を楽しむ”ことをコンセプトとしています。RFはよりその特色が強い車ですね。屋根がスムーズに開閉する時間さえも楽しんでほしい、そんな余裕を感じさせる車。あこがれの対象となる車として作りました。

実は私もその域に達していない、と思っています(笑)。RFを楽しめる、RFが似合う人間になりたい。でも、未達の状態でクルマを買って、何年か経ってそれに合うに大人になるというのもありだと思います」。

意外性から生まれた独創性

その背景にあるのは、RFに乗っている大人を見て若い人にあこがれてほしい、という思いだ。

「スポーツカーって本来おじさんのもの。若者が乗るのはちょっと青臭いし、オープンカーとか恥ずかしいと思うのはよくわかります。でも横目でちらちら見ながら羨ましいと思ってくれているのではないか…。今の若者が将来乗りたいっていう車すら今は少ない。そういう車を今作っておかないといけない」。

そういった使命感から生まれた車でもある。すると、ここで少し意外な言葉が飛び出した。

「若い人は中古車に乗ってもらって構わないんですよ。今すぐに、というわけにいかないですが、NDのちょっとボロいのが出てきたら乗ってもらう。そのくらいの方が若い人には似合ったりもしますよね。それこそオリジナルカラーにこだわらずに全塗装するとか、好きなように楽しんでもらえばいい。そうやってNAも発展してきました」。

これまで世に出た全てのロードスターが歴史の一部なのだ。新車でも中古車でも、色々な人がそれぞれの生活や趣向に沿う形でロードスターに乗る。それで市場が活性化することにもなる。マツダのキャッチコピーではないが、「ドライバーになる」ことの喜びや楽しみへの共感が広がっていくことになるのだろう。

「そのためには、ロードスターのオーナーが手放したくなるような素晴らしい(次の)ロードスターをこれからも作らないといけないですね。

でも、クリエイティビティって、新発見とかひらめきってちょっとした事故とか、トラブルから生まれるものですよね。革新は予想もできないから革新なわけで…。屋根が入らなかった、のは事実だけど、そこから出てきた新しいデザインがRFの独創性を際立たせているわけです。日本でこんなに独創的な車って生まれにくいかもしれないけど、ロードスターって世界的に見ても独創的だと自慢できると思う。

(速く走るためだけの)マシンが目的だったらあんなキレイなデザインにする必要はない。車の目的というのは、人の生活や心を豊かにするということだと考えています」。

RFを含め、マツダ ロードスターは、“車を通して人びとの心や生活を豊かにする”という作り手の精神から生み出されている。そして、人びとが望むスポーツカーとは何なのか、という問い対してマツダが導き出した解答であると言えよう。

《吉田 瑶子》

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