【ボルボ V40クロスカントリー 3600km試乗 前編】セグメント最高峰の「疲れないクルマ」…井元康一郎

試乗記 輸入車
兵庫県の丹波高地にて。
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スウェーデンの乗用車メーカー、ボルボ・カーズのプレミアムCセグメント(BMW『1シリーズ』、アウディ『A3』などのクラス)5ドアハッチバックモデル、『V40クロスカントリー』で東京~鹿児島間を周遊する3600kmロングツーリングをする機会を得たのでリポートする。

【画像全22枚】

V40クロスカントリーは『V40』をベースに、冒険心をかき立てられるようなアウトドア的趣向の演出がエクステリアを中心に加味されたモデル。無塗装ブラックのプロテクションモールがボディ下部につけられ、フロント&リアバンパーもブラック部分が多いなど、都会派デザインのV40に対し、野趣が表に出ている。

もっとも、最低地上高は145mmと、ノーマルV40に対するリフトアップは装着タイヤの外形差ぶんの10mmしか上がっておらず、オフロードや積雪路を走るような仕様ではない。その点は最低地上高200mmの『V60クロスカントリー』と性格を異にするが、プロテクションモールが全周に装着されているため、背の低い草が生えた田舎道や牧場のようなところをバサバサとかき分けながら走るのには向いていそうだ。そういう観点では、これはこれでスカンジナビア的なクルマとも言える。

試乗車は最高出力190psの2リットルターボディーゼルを搭載する「D4」の上位グレード「Summum」。レザーインテリアや出力650Wのハーマンカードンオーディオなどの標準装備品に加え、オプションとして縦列駐車や車庫入れのパーキングアシスト、パノラマガラスルーフなどが追加装備され、車両価格はトータルで約480万円という豪華仕様だった。

試乗ルートは次のとおり。往路が東京から高速と一般道を併用しつつ、東海道~京都~岡山の津山を経由し、その後は瀬戸内、九州西海岸経由で鹿児島へ。帰路が宮崎の高千穂、熊本の小国経由で福岡の飯塚に出るという山岳ルートを経由し、後は高速と一般道を併用して山陽道~東海道ルートで東京に戻るというもの。おおまかな道路比率は市街地2、郊外路5、山岳路1、高速道路1。行程の9割が1名乗車。エアコンAUTO。

セグメント最高峰の「疲れないクルマ」

まずはドライブ全体を通したトータルの印象から。V40クロスカントリーはモデルライフ末期に差しかかりつつあるにもかかわらず、依然としてプレミアムセグメントのカスタマーになれる財力があり、かつヴァカンスに1人ないし少人数で自由に旅をするのが好きだというカスタマーにとっては十分に良い選択肢のひとつになり得るポテンシャルを持つクルマだった。

美点の筆頭は疲労の蓄積が驚異的に少ないことで、これはプレミアムCセグメントのライバルの中で文句なしの最高峰と言えるほどだった。シートは疲れない、ホールドが良いといった機能面の良さを超えて、座ること自体が気持ちよく感じられるくらいのもの。操作系が運転席まわりに集中配置されており、ボルボ特有の操作ロジックに慣れさえすれば操作頻度の高いスイッチを手探りで操作できるのも疲労の蓄積を防ぐのに有効だったように感じられた。

ターボディーゼル+8ATのパフォーマンスもノーマルのV40と同様に高く、燃費も1.6トン近い重量級としては十分に良かった。サスペンションは路面状況を問わず接地性良好で、山岳路などの険路を回避したりせず自分の思いどおりにルートを選定する気にさせられるのもアドベンチャーギアとして良い資質だと思われた。また、ハイスピードクルージングでは抜群の安定性を発揮した。

弱点は他のV40シリーズに比べてサスペンションがかなりハードで、路面状況が悪くなるにつれて揺すられ感が急速に強まること。道路のざらつきやひび割れ、段差の小さな路盤のジョイントなどは滑らかにいなす一方、大き目のアンジュレーション(路面のうねり)や段差を通過するときには突っ張り感がかなり強まる。クロスカントリーというセミSUVの性格上、低い最低地上高である程度の悪路を走ってもフロントが沈み込みすぎないようにするための措置と思われるが、本来なら最低地上高を170mmくらいまで上げて柔らかいサスペンションを組み合わせ、ストローク感を生かして走れるようにしてほしかったところだ。

高速クルーズで発揮されるシャシーパフォーマンス

では、ドライブシーンを交えながら細部についてみていこう。乗り味を左右するシャシーチューニングはボルボ車の中でも独特のもので、現行V40のノーマルモデルとも異なる。基本特性は路面の荒れや小さな段差、うねりなど、ピッチの小さな動きについてはきわめてスムーズ。それに対して大きな路面変化に対してはいささかハードにすぎ、しなやかさに欠けるというものだ。

そのシャシーが最も素晴らしいパフォーマンスを発揮したのは、ハイウェイクルーズであった。筆者は料金が馬鹿みたいに高く、スピードは遅く、またドライブルートが路線に束縛される日本の高速道路が大嫌いで、今回のドライブでも有料高速を走ったのは合計で400km程度。しかしながら、V40クロスカントリーの巡航感は抜群に良く、滑らかでスウィートなタッチが退屈な高速道路ドライブを楽しいものにしてくれた。

ボルボは伝統的にストラットアッパーマウントなどの樹脂ブッシュの使い方が上手い。V40クロスカントリーもそのご多分にもれず、舗装面の荒れた部分やひび割れ部分を通過するときの滑らかさは出色の水準で、それが高速道路での走りを堂々たるプレミアムセグメントモデルらしいものにしていた。とくに山陽自動車道の兵庫県区間など路面の良いところでは、直進性の良さも手伝ってまさに大船に乗ったようなクルーズ感。また、老朽化が進んだ路線でも高速道路のスピードレンジではハードサスペンションもよくストロークし、多少のギャップやアンジュレーションはものともしなかった。

制限速度70~80km/hの新直轄方式の無料自動車道やバイパスなど、路面状況の良い郊外路のクルーズにおいても高速に準じた良さを味わえる。フィールはやや固さを伴ってくるが、ハーシュネスの遮断が優れていることに助けられて全般的には滑らか。直進性は良好で安定感も高く、ストレスは極小であった。

問題は舗装状況の良くない郊外路線や速度の低い市街地。路面の減速帯のようにブッシュのたわみで上下動の動きを吸収できる範囲においては乗り味は高級車然としている一方、サスペンションがある程度ストロークするようなピッチのうねりや段差を通過するときなど、これはちょっと固すぎるのではないかというような突き上げや、上下方向の揺すられ感に頻々と見舞われた。

これは全体のまとまりは良いV40クロスカントリーの、唯一にして最大の弱点であった。もともと足の固さは気にならないというカスタマーはいいとして、大きな路面の荒れもサスペンションがたっぷりストロークして吸収してくれるような高級車フィールを期待するカスタマーは、クロスカントリーではない普通のV40を選んだほうが満足度ははるかに高いだろう。

「疲れないクルマ」の理由はシートにあり

V40クロスカントリーの面白いところは、この揺すられ感が疲労につながらなかったことだ。東京・芝浦のボルボ・カー・ジャパン本社で広報車両を受け取ってドライブを開始してから、路面の荒れがきつい老朽路線の首都高速1号線でさっそく足の固さを体感することになり、これだけ揺すられ感が強ければボルボといえども少なからず疲れるのではないかと思った、が、実際に長時間連続ドライブをしてみたところ、その予想はまったく外れ、疲労の度合いは過去に乗った名だたるプレミアムCセグメントと比べても最小レベルであった。

疲労軽減はパッケージングや操作系の配置など色々なファクターが絡み合うものだが、貢献度が一番大きかったのはやはりシートであろう。タッチは座面、サイドサポート、シートバックとも、とてもソフトで、体を面で受け止めるタイプ。弾性に富むパッドで身体を理想的な姿勢に拘束するという最近の良いシート作りのトレンドとは一線を画するものだが、高速、一般道、山岳路と、どれだけロングランを重ねても、体のどの部分にも違和感を覚えることはなかった。シートに関するかぎり、プレミアムセグメント同士で比較しても上位のDセグメントを飛び越え、Eセグメントのライバルと張り合えるレベルにあった。

疲れないという機能ばかりではない。面白かったのは、座ると気持ちいいという特質を持っていることだった。別にマッサージ機能があるわけでもないのに、シートに体を預けると体の緊張がほぐれていくようなフィールである。これが自分の仕事用の椅子だったらどんなによかろうと思ったくらいだ。ボルボの日本での販売台数はドイツ勢を除けば一番多いが、いわゆる“四角ボルボ”時代の水準は回復できていない。今後、日本における販売を伸ばしたいのであれば、プレミアムセグメントの顧客にまずこのシートに実際に座ってもらうための工夫をするのが第一歩ではないかと思われた。

ところで疲労に関しては極小と書いたが、無条件でその恩恵にあずかれるわけではない。きちんとした運転姿勢を取ることが必須条件だ。ツーリング序盤においてシートポジションを変えたり、ヒップポイントを深く取ったり浅く取ったりと、いろいろな姿勢を試してみた。その結果、高級車の顧客の一部がやるような、シートバックを寝かせ気味にし、足を投げ出すような姿勢で運転するのにはまったく向いていなかった。そこまで行かずとも、ルーズな運転姿勢を取ってもフットレストや操作系が体に合わない。座面高は高くても低くても大丈夫だが、いずれの場合もシートバックを適切に立て、ちゃんとした姿勢で運転することが要求される。このあたりは、道路交通のスピードが速い欧州生まれであることを感じされられるポイントだった。

道を選ばない自由度の高さ

走りに話を戻す。高速道路では好フィール、地方幹線道ではアベレージ、市街地では固すぎというのがV40クロスカントリーのシャシーの味付けであったが、速度レンジが低く、道も荒れている山岳路でのフィールは固さをおして悪くなかった。もともと道が悪いところでは、乗り心地より走行感の確かさのほうに神経が行くので、固さが気になりにくい。フロントサスペンションが固いことは乗り心地の面ではマイナスだが、大きくうねった路面でのバウンシングが小さくてすむというメリットもあるため、そこでは好印象だった。

たとえば九州山地の真っ只中、宮崎県の日之影町から過去に錫鉱石の一大採掘場であった見立渓谷の英国館というところに向かう秘境ムードたっぷりの県道6号線。最初のうちは良路なのだが、日之影川上流へと進むにつれて、次第に細い1車線の荒れたワインディングロードとなる。

そういう道ではギャップを踏んでもクルマが跳ねない、落葉が浮いていてもステアリングの取られは最小限といったロバスト性がとても重要になるのだが、V40クロスカントリーは他のボルボ車と同様、そういう悪路に強かった。大きなアンジュレーションを通過するときのシャシーの受け止めはがっしりとしたもので安心感があった。コーナリング時に大きなGがかかったときに、普段の突っ張ったような動きとは裏腹に、サスペンションがしっかりロールするのもいいところだった。この悪路耐性の高さはボルボの持ち味であろう。

ただし、ハンドリングの楽しさという点ではV40のスポーツグレード「R-DESIGN」には二、三歩譲る。たまたま筆者はこのロングツーリングの直後、V40ディーゼルのR-DESIGNに試乗する機会を得たため擬似的に比較対照することができた。帰路、いつもフットワークをみるのに使う大阪~奈良間の阪奈道路上り線を走ってみた。ここは直角コーナーや90度を超える回り込みが連続するルートなのだが、V40クロスカントリーは前サスペンションが固く、アンダーステア傾向が強め。上りで前傾姿勢を作るにはコーナー手前で強めにブレーキをかける必要があった。

R-DESIGNはハードサスペンションという点では似ているが、サスペンションの動き自体は大変にスムーズで突っ張ったようなところがなく、上りコーナーでも素晴らしい前傾姿勢の対角線ロールを保てる。繰り返しになるが、最低地上高をもっと上げて前サスペンションをもう少ししなやかに動くようにすれば、ロールセンターが高くなってもなおワインディングでのねっとりとしたロードホールディング感が出るだろう。惜しいところである。

このようにV40クロスカントリーは短所もあるが、疲れの少なさや道を選ばないタフネスさはなかなかのもの。その特質をバックボーンに移動の自由感を満喫できるというのは、このモデルのハイライトと言っていいだろう。後編ではパワートレインや安全装置、アメニティなどを取り上げたい。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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