【アストンマーティン DB11 試乗】まさに能ある鷹は爪を隠す…中村孝仁

試乗記 輸入車
アストンマーティン DB11
アストンマーティン DB11 全 11 枚 拡大写真

旧車と呼ばれる、古いモデルを別にすれば、新車のアストンマーティンに触れたのは『DB7』 が最初であったように記憶する。

【画像全11枚】

当時このDB7に試乗して思ったことは、それがスポーツカーというよりもGT、即ちヨーロッパの大陸旅行をするのに、快適でそして速く、時に操縦を愉しむモデルだということで、こいつをサーキットに持ち込んだら、さぞ速いだろうなぁ…とは想像もしなかった。

アストンマーティンとは伝統的にその種のクルマを多く作ってきたメーカーで、勿論レースポテンシャルのあるモデルも作ってはいたが、どちらかというと、フェラーリのようにそれに集中し、そこから得たノウハウをロードカーに持ち込むといった手法のクルマ作りはしていない。

現行『DB11』の前身にあたる『DB9』が登場した時も強くそう思った。だからアストンマーティンは一般道で走らせてこそ、最高のクルマだと。スポーツカーと言って思い出すのはフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニ、それに最近ではマクラーレン等々。伊達でならすマセラティが少し例外だが、ほぼどれもその出で立ちはレーシーで、カーボン素材などの最先端とバケットシートが似合う。だが、アストンマーティンはイギリス車伝統ともいえる、木と革の室内が似合い、醸し出す雰囲気はまさにスポーツカー界のロースロイスといった風情だった。DB9の時は竹のウッドトリムを使ったりと、拘りはそんなところに強く感じられたものである。

あれから14年。DB9の後継車として誕生したDB11は、明らかな変化があった。それはウッドトリムがインテリアから消えたことである(用意はあるようだが試乗車にはなかった)。それは市場のそうしたニーズが消えて、アストンマーティンが内在していたシーズを表現した、あるいは提案したともいえるが、アストンマーティンとして一つの区切りが付いたような気がする。

レースとはあまり縁のなかった会社が(もちろんルマン優勝を含む栄光はあるのだが)、2005年からこのロードカーをベースとしたレースに積極的に参戦し、ついには独立したアストンマーティン・レーシングを立ち上げてしまったあたり、確実にアストンマーティン内部が変わったと印象付けた。ご存知の通り、DB9はそれをベースとしたレーシングカーを作り上げて積極的にレースに参戦したことでもその変化は顕著ではあったものの、それでもロードカーのDB9に乗るとそれにレーシーなイメージはなく、やはり豪華なグランドツアラーのイメージが先行したものである。

新しいDB11はどうか。確かにウッドトリムは消えた(あるようだが)。しかし依然として仕立ての良い極上の本革シートと気品に満ちた調度に囲まれると、やはりグランドツアラーとしてのイメージの方が先行してしまう。

エンジンは今回から排気量を5.2リットルに引き下げたツインターボV12が搭載されている。ツインターボエンジンはアストン史上初。ターボエンジンだって、ブルドッグ以来思い浮かばない。おまけにこのV12、低負荷時には片側バンクを休止させる、可変気筒システムまで付いている。

試乗は堪能するというにはほど遠い短時間でしかない。ただ、DB9から明確に違いを感じたのは、新たなVHプラットフォームがさらなる進化を遂げて、より強固で、しかも快適なプラットフォームに仕上がっていたこと。そしてV12ツインターボはさらに直感的でスムーズかつダイレクトな印象が強かったことなどである。DB9当時のATモデルは、正直つまらなさを感じたが、DB11はこれならATでも十分。むしろ積極的に8速ATを選びたくなると思わせるものだった。

DB9から14年を経たDB11の進化は、まさに能ある鷹は爪を隠すの如く、ドライバーの要求に応じて如何様な引出しをも持ち合わせている万能さであった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産『セレナ』次期型は2028年登場か!? 第3世代e-POWER搭載へ
  2. トヨタのミッドシップと言えば『MR2』だが?…土曜ニュースランキング
  3. 三菱『パジェロ』3階層のシリーズ展開へ…軽も登場、壮大なシリーズ化が始まる
  4. 四輪事業で苦戦のホンダ、三菱自動車からタイ生産の『トライトン』をOEM供給へ[新聞ウォッチ]
  5. 内装材が難燃基準に適合せず『ムーヴ』など1万台リコール…9月掲載のリコール記事まとめ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. EU「欧州製EV」優遇へ、産業加速法を審議---売れるEVと売れないEV
  2. EV・欧州減速=日本が正しかった、では見えてこない欧州市場と中国の戦略[インタビュー]
  3. 【セミナー見逃し配信】※プレミアム・法人会員限定 欧州自動車産業の次の一手、欧州の現場で何が起きているのか~EV減速局面・SDV/AIへの移行・中国勢の浸透~
  4. NITTANのエンジンバルブ技術、インドで実証へ…経産省グローバルサウス事業に採択
  5. CASE革命と電動化、次世代の自動車部品
ランキングをもっと見る