【池原照雄の単眼複眼】2017年度も500万台は行ける…国内新車需要

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トヨタC-HR
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自工会は0.8%減の500万台を予測

間もなく幕を閉じる2016年度の国内新車市場は、わずかの伸びながら3年ぶりに増加に転じる。近年、需要の好不調の境界線となっている500万台ラインも2年ぶりに突破する。16年度は三菱自動車工業による軽自動車の燃費不正という波乱の幕開けとなり、軽市場への影響が出たものの、新車効果を発揮した登録車の踏ん張りで成長を確保した。一方、日本自動車工業会がこのほど発表した17年度の需要予測は前年度比0.8%減の500万0300台とした。全体では小幅減だが、堅調な推移を見せている登録車を1.8%のマイナスと慎重に見ていることから、上ブレになる可能性も十分だ。

自工会の推計によると16年度の需要見込みは2.0%増の503万8300台。軽自動車は5.2%減の171万9000台と3年連続のマイナスになるものの、登録車は6.2%増の331万9300台と回復する。軽自動車は14年度の消費税、15年度の軽自動車税と2度の増税に伴う駆け込み需要の反動が長期化したほか「16年度前半は燃費不正問題の影響」(自工会)も重なった。これに対し、登録車は『セレナ』や『ノート』(日産自動車)、『フリード』(ホンダ)、『インプレッサ』(スバル)、『スイフト』(スズキ)、『C-HR』(トヨタ)、『CX-5』(マツダ)―など量販型の新モデルが相次ぎ、市場を活性化させた。

安定的に推移したこの10年の国内市場

迎える17年度の需要は、自工会予測ではほぼ横ばいの約500万台。このうち、軽自動車は長期の調整局面から脱して1.3%増の174万2000台と、4年ぶりのプラスを見込んでいる。しかし、登録車は自動車重量税と自動車取得税を減免する「エコカー減税」の適用条件が17年度からやや厳しくなることを織り込み、1.8%減の325万8300台と堅く見積もった。このため、自工会の西川廣人会長は「足元の登録車の堅調さは17年度も続くのではないか。年度後半の上ブレも期待したい」と見ている。今秋には東京モーターショーが開催され、市場を刺激する材料ともなる。少なくとも自工会が予測する500万台ラインは確保できるだろう。

2007年度から16年度までの10年間の国内市場を振り返ると「500万台」を軸にした面白い傾向が見える。この間、500万台を割り込んだ年と、突破した年はともに5回と拮抗した。年平均にすると市場は504万台だった。この10年の間にはリーマン・ショック(08年)、東日本大震災(11年)、消費税増税(14年)と、消費活動を揺るがす事象が相次いだものの、押しなべて見れば新車の需要は500万台レベルで安定していたのだ。

“代替予備群”を動かす新技術の加速を

そうした安定推移のひとつの裏付けに、新車登録から廃車までの「平均使用年数」の頭打ちがある。乗用車で見ると、平均使用年数は15年3月末で12.38年と、前年同期の12.64年を下回った。かつては一貫して伸びていたものの、10年3月末からは12年超のレベルで頭打ち傾向となっている。新車に買い替えるまでのサイクルが、以前のように延長一辺倒ではなくなってきたのだ。昨年来、登録車の新モデル効果が顕著になっているのは、「魅力あるクルマが出れば買い替えたい」という、「代替予備群」のユーザー層が、相当なかたまりとなって控えているからだろう。

長期レンジで見れば、国内需要の先細りは避けられないが、当面は500万台水準で踏ん張ることはできる。幸い「魅力あるクルマ」を創出する技術は多くある。安全運転のサポートと一体となる自動運転技術、あるいはハイブリッド車(HV)から電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)へと展開される電動化技術などである。代替予備群を惹きつけるタイムリーな新モデルの有無が、17年度以降は個々のメーカーの優劣を鮮明に分けることになろう。

《池原照雄》

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