【レクサス LC】原点に立ち返って磨き上げられたデザイン…開発者インタビュー

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レクサス LCとレクサスインターナショナル製品企画担当の落畑学主幹(左)、車両実験部の伊藤俊則主幹(右)
レクサス LCとレクサスインターナショナル製品企画担当の落畑学主幹(左)、車両実験部の伊藤俊則主幹(右) 全 13 枚 拡大写真

3月16日に発売された、レクサスの新型ラグジュアリークーペ『LC』。ブランドにおける最上級クーペであり、フラッグシップの役割も担うモデルだ。その開発の背景を、製品企画と車両実験の担当者に聞いた。

デザインスタディをそのまま市販モデルに

LC開発の契機となったのは、2012年のデトロイトショーで公開したコンセプトカー『LF-LC』だ。もともとはデザインスタディ(習作)だったが、これを可能な限りそのまま商品化しようとしたのが開発のきっかけだったという。「市販を期待する声が大きく、それならばブランドの進化の象徴として実現しようという挑戦がスタートしました」と説明するのは、レクサスインターナショナル製品企画担当の落畑学主幹。

プラットフォームは新型『LS』と同じ最新FR用の「GA-L」を使いつつ「レクサスが目指す走行性能や要件を織り込みながら、LF-LCのデザインモチーフをさらに美しく昇華させることが必要でした」と振り返る。そしてこれを実現するために辿り着いたコンセプトは「Back to Basic」というものだったという。

エンジンはフロントミッドシップ、タイヤはボディ四隅に配置してオーバーハングを短縮。軽量化を追求し、バッテリー等のレイアウトを最適化して慣性モーメントの低減と低重心化を図る…等々、スポーツクーペとして基本的な機能を追求してパッケージレイアウトを構築した結果、LF-LCのような低重心でダイナミックなプロポーションが実現できたと落畑 主幹は説明する。「走行性能のための要件を織り込んでいくと、“性能がいい=美しい”というところに行き着くことに気づいたのです」とのこと。

エレガントかつアバンギャルドなエクステリア

そしてエクステリアの造形テーマは、クーペならではの艶やかさと先進技術の融合をめざす「Seduction & Technology」というもの。「例えるなら、一流のアスリートが肉体をひけらかすことなく、良質な装いに身を包んで颯爽と駆け抜けるイメージ」と落畑 主幹。スポーティなだけでなく、オーナーのライフスタイルを感じさせるようなデザインを目指したという。

一見して気づくのは、シンプルな要素で伸びやかさやダイナミックさを表現していることだ。ボディサイドではキャラクターラインやグラフィック要素に頼らず、ホイールのフレアをボディ四隅に向かって張り出す形状にすることで大きな抑揚を持たせた。ボディ全体でカタマリ感がありつつも、躍動感も備わったスタイリングだ。このダイナミックなプロポーションと、エレガントさの融合を目指して「従来にない面構成や立体感を意識してスタイリングを進めました。プレミアムセグメントのクーペとしてはアバンギャルドな造形を追求しています」と落畑主幹。

乗員の所作をもデザインしたインテリア

インテリアもまた、エクステリアと同様のテーマでデザインがまとめられている。具体的には「ドライビングの高揚感を生み出す“コックピット空間”と、パッセンジャーを包み込む”おもてなし空間”を高次元で融合させることを目指しました」という。

さらに「運転時の所作や、乗降時の姿勢も美しく見えるように気を配っています」と落畑主幹。
たとえばドライバーが運転操作に集中できるように表示操作系をレイアウト。視線が彷徨うことなく、また移動量も少なく済むように高さを統一。そして横方向に展開している。これはドライバーだけが計器に囲まれることで表現される、従来のコックピット感覚とは異なった流儀だ。

またドライバーやパッセンジャーが乗降する際の動きなども考慮してデザインしているという。一例として「ハイヒールを履いた女性が美しく降り立てるように…といったことなどを想定しながら、技術的なデザイン検討を進めてきました」と紹介する。

走りのキーワードは「より鋭く、より優雅に」

エクステリアとインテリアで目指した、異なる要素の融合は「走り」、つまり走行感覚における開発キーワードの内容とも一致している。この領域における開発キーワードは「より鋭く、より優雅に」というもの。「鋭くとは正確でリニアな操縦性能、優雅とは動きのつながりやしなやかさのことです」と説明するのは、車両実験部の伊藤俊則主幹。鋭さはクイックな挙動などで比較的容易に表現できるが「それだけでは、レクサスではない。エレガントさをどう表現するのかが難しかった部分ですね」と振り返る。

なお基本的な「乗り味」に関しては、今後に登場するレスサス車に共通したものになっているという。スポーティクーペのLCと近々発売予定のフラッグシップサルーンLSでは、キャラクターは異なっているが「基本的な乗り味や、提供したい感覚はまったく一緒です」とのこと。

またサイズの異なる他のモデルでも、同じ感覚を提供するべく「匠ドライバー」と呼ばれるスタッフが「走り」だけでなく静的な品質感までもチェックし、ブランドとして横串を通した評価をしているという。感覚的な部分でもブランドアイデンティティを構築し、伝わるものにしようとしているわけだ。「感性の世界の表現は、ブランドを世に発信するためには必須だと考えています」と伊藤主幹は語る。

《古庄 速人》

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