ガソリン以上に千差万別、長距離ドライブで見えた「軽油」価格事情

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熊本北方、山鹿のスタンドでは、レギュラーと軽油の価格差が34円に達していた。
熊本北方、山鹿のスタンドでは、レギュラーと軽油の価格差が34円に達していた。 全 6 枚 拡大写真

年末年始にボルボ『V40クロスカントリー』、3月には三菱『パジェロ』およびマツダ『デミオ』と、このところターボディーゼル車でのロングツーリングの機会が多い。ディーゼルの燃料は軽油だが、長旅をしていると地方ごとの価格や売り方がガソリン以上に違っていることに気付く。

軽油の給油で有り難味を感じるのは、何よりも1リットルあたりの単価が安いことだが、その価格差は地方によってさまざま。価格の安いエリアは大体決まっており、その場所を覚えておくと飛び石づたいに低コストで走ることができる。これは安いなと思ったのは奈良、京都、大阪の吹田界隈で、石油製品の値段が上がった今年3月でも90円台前半。ほか、神奈川、浜松の一部もそこそこ安い。

奈良県にはちょっと面白いスタンドがあった。現金価格が店頭に表示されているのに、実際に給油すると会員でなくとも表示より1円安く、給油機のディスプレイにも1円サービスというメッセージが出る。サプライズ効果でリピーターを増やそうというのか!!たった1円なのにちょっとグッとくるものがあるのは確かだった。

山陽道区間は全般的に高め。よく、高い地域の石油製品販売会社の関係者は製油所から遠くなるとローリー代がかさむから高くなるという言い訳をするが、瀬戸内は水島、徳山、小野田等々、石油元売各社の製油所が集積している場所。にもかかわらず価格が高止まりしているのを見るかぎり、運賃加算だけで決まるとは言えないようだった。

3月にデミオで東京~鹿児島ツーリングを行った時は、東京・葛飾で満タンにした後、ワンタンクでの航続距離がどのくらいになるか試してみるため、近畿地方の価格が安いエリアをスルーして走り続け、結果、756.8km地点の倉敷近郊でむざむざ1リットル当たり10円以上高い単価で入れた。

しかし、岡山はまだ価格が穏やかなほうで、価格上昇は広島から山口にかけて最高潮に達する。このエリアで興味深いのは、ガソリン価格はレギュラー、プレミアムとも大して高くないこと。軽油とレギュラーガソリンの価格差が非常に小さいのだ。スタンドによってその差は異なるが、多くのスタンドは10円台半ば程度の差しかない。

まさかディーゼルで存在感を示しているマツダのお膝下だからボッているのではあるまいな!?とちょっぴり疑念を持ちつつドライブを続けると、山口最西部の下関に近づいたあたりで軽油価格が劇的に下がった。10円以上値下がりし、100円を切る店舗が目立つように。関門トンネルを通過して九州に入っても、おおむねその水準だった。

九州で軽油価格の安値が目に付くのは福岡、大分、そして熊本北部の山鹿近辺。山鹿には単立系のセルフスタンドと太陽石油系スタンドが安値を争っており、非常に安い。隣県鹿児島が一転、高値もいいところなので、この山鹿で満タンにするのが吉だ。ボルボV40クロスカントリーを駆った年末年始、マツダデミオでツーリングした3月とも、行程のなかでこのエリアが最も安かった。3月11日時点での軽油価格はフリーで89円/リットル。

そこから南下するにつれて、ガソリン、軽油とも急速に高くなっていき、鹿児島県内に入ると、下手をすると山鹿の太陽石油のスタンドに比べて1リットルあたり30円ほども高い120円/リットルに達するようになる。

鹿児島は筆者の故郷だが、過去のツーリングの経験に照らし合わせると、とくに鹿児島市以南におけるガソリンスタンドの商売のモラルの低さは全国でブッチギリだ。石油小売業界には2009年に策定した「ガソリンスタンドにおける価格表示の適正化ガイドライン」なるものがあり、店頭にガソリン価格を表示すること、その価格は内税であること、会員価格やプリペイドカード価格の場合にはそれがひと目でわかるようにすること、合理的な根拠なしに激安だの最安値だのといった文句は書かないこと等々が取り決められている。

が、鹿児島では一部のスタンド以外、そのガイドラインを完全に無視。価格を表示しないのは当たり前、給油機の表示価格を外税にして安いと誤認させる店があったり、激安、最安などと平気で書く行為が横行するなど無茶苦茶で、消費者は完全に馬鹿にされている格好である。そんな中でも真っ正直な商売をやっているスタンドはちゃんとあり、そういう店は100パーセント、店頭に価格を表示している。わかりやすいと言えばわかりやすいのだが…。

燃料単価の安さは燃費の絶対値の良さと並び、ディーゼル車のメリットの最たるものである。が、東京~鹿児島ツーリングくらいの距離になると、どこで燃料を補給するかによって燃料代に大差が出る。ネットでお得なスポットの情報を価格サイトなどで調べてみたが、必ずしも情報が的確とは限らないように感じられた。走れば走るほどマイ穴場情報も積み重なっていくというもの。ロングツーリングでは燃料補給も賢く行いたいものである。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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