ニュルFF市販車最速モデル“有終の美”…ルノー メガーヌRS ファイナルエディション発進

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ルノー メガーヌRS273ファイナルエディション(左)とRS273パックスポール(右)
ルノー メガーヌRS273ファイナルエディション(左)とRS273パックスポール(右) 全 40 枚 拡大写真

ルノー・ジャポンは『メガーヌ・ルノースポール』(以下メガーヌRS)の生産終了を記念した200台の限定車、「メガーヌRS273ファイナルエディション」と、特別装備を施した20台限定の「メガーヌRS273パックスポール」の発売を開始した。

■ルノースポールの歴史…モータースポーツと市販車の橋渡し

メガーヌRSなどの企画開発を行うルノースポールの歴史を振り返ると、1937年にアメディ・ゴルディーニが設立したゴルディーニ社にまで遡る。ゴルディーニはルマン24時間レースなどに参戦し多くの勝利をおさめ、モータースポーツ界の注目を集めていた。また、1955年、ジャン・レデレがアルピーヌ社を設立。その後、1969年にゴルディーニが、1973年にアルピーヌがルノーに吸収される。そこからルノーの中にそれらの会社のノウハウが吸収され、ルノースポールの基礎が固められたのだ。そして、1977年のルノーF1参戦に向け、1976年にルノースポールが設立された。

2002年、ルノースポールテクノロジーというビジネスユニットに変化。パリから30kmほど南に離れたレズリースに拠点を置き、そこにはデザイナーやエンジニア、マーケティング、営業担当など250人ぐらいが在籍。ニュルブルクリンクで最速ラップタイムを出したテストドライバーのロラン・ウルゴン氏もここに駐在する。このビジネスユニットの特徴について、ルノー・ジャポンマーケティング部マネージャーのフレデリック・ブレンさんは、「テストドライバーはクルマが出来上がると、テストに出向くのだが、必ず彼らはエンジニアを乗せてテスト走行を行う。さらにエンジニアにも運転させている。テストで感じたことを全員が同じ次元で認識し、齟齬なく開発するためだ」と説明する。

2016年、さらにモータースポーツに力を入れるため2つのビジネスユニットを設立。ひとつはルノースポールレーシングで、エンジン開発の本拠地であるビリーシャティオンに本拠地を置き、F1やフォーミュラe、メガーヌRS01やクリオカップなどのコンペティションマシンを主に開発する。

もうひとつは、ルノースポールカーズで、エンジンやシャシーを含めたチューニングを施すRルノースポールシリーズや、サスペンションチューニングを行うGTグレード、そしてコスメを中心としたGT-Lineなど、市販車を中心に開発を行っている。

ルノースポールカーズのミッションは、「F1を中心としたモータースポーツと市販車の橋渡しだ」とブレンさん。必ずモータースポーツで得たノウハウをベースに開発がなされるというのだ。

また、「F1エンジンのエンジニアの30%は市販部門から来ている。必ず2年から3年研修したうえで、ルノースポールカーズなり、ルノー本体での業務に戻る。これは、究極の技術開発の現場を知ることでのスキルアップを目的としている」という。

■日本は重要なマーケット

「ルノースポールの中で日本は非常に大事なマーケットであると同時に、ルノー・ジャポンとしてもルノースポールは重要なブランドだ」とブレンさん。

メガーヌRSの生産台数は3万0165台(2016年中ごろに生産終了)。そのうち2300台余りが日本で販売された。つまり8%が日本で販売されたことになる。一方で、2016年4月から2017年3月期、ルノー・ジャポンの販売台数は設立以来初の6000台越えを達成。しかし、ルノーグローバルでは0.03%でしかない。ルノースポールが日本市場を、ルノー・ジャポンがルノースポールを重要視することは当然なのである。

メガーヌRSの販売推移についてブレンさんは、「37カ国中、2014年は5位、2015年は4位、2016年は5位、2017年は1~3月で1位を記録した」。前述のとおりメガーヌRSの生産は昨年終了しているが、「販売戦略を考え、最後まで大事に売ろうと、生産終了を踏まえオーダーをかけておいた。そういった戦略をとらなかった各国から、台数が余ったら回してほしいという連絡が来ているが、まずそれはないだろう(笑)」と述べた。

また、この販売を維持するためには販売ネットワークも重要だ。ルノースポールスペシャリストディーラーを日本でも展開しており、「世界で360拠点ある中で、日本では25拠点ある。ここには必ず展示車、試乗車を用意するとともに、テクニカルなスキルを持つ営業やサービスが必要となるので、トレーニングを行なっている。こういったネットワークがあるからこそ販売台数が伸びているのだ」とコメントした。

■FF市販車最速ラップを記録するまで

ニュルブルクリンクにおいて、ルノースポールが最初にタイムアタックを行なったのは、2008年、2代目「メガーヌRS R26R」、通称“ラディカル”だった。3ドア5人乗りをベースにリアシートを外し、フロントのバケットシートはカーボンモノコックに変更。ボンネットもカーボン製にしたことのほか、フジツボのチタンマフラーやスピードラインのチュリニアロイホイールなどを採用し100kg 以上軽量化。230ps、310Nmを発揮するエンジンにより、8分16秒90を記録。当時のレコードホルダーからほぼ10秒以上短縮した。ドライバーはルノースポールテストドライバーのヴァンソン・ベイルだ。ロラン・ウルゴンと共にルノースポールの全てのクルマを開発している。

2011年6月に第三世代に進化した「メガーヌRSトロフィー」が8分7秒97を記録。250psから265ps、340Nmから360Nmにパワーアップしたが、軽量化はほとんど行なっていない。テストドライバーはロラン・ウルゴン。日本へは2017年に30台限定で導入されたが、即完売だった。

このタイムアタックが終了したのち、“Under8プロジェクト”が発足。8分を切る記録を出すために、2014年、「メガーヌRSトロフィーR」が誕生。FF市販車初の8分を切る7分54秒36を叩き出した。5人乗りを2人乗りにし、モノコックのレカロシートなどをフロントに採用。専用のミシュランセミスリックタイヤをはじめ、コンポジットスプリング、オーリンズのダンパーを採用したほか、スピードラインチュリニのホイール、アクラポビッチチタンマフラーを装着。遮音材もほとんど外すなどで、120kgほど軽量化に成功し、パワーも265psから273psにアップさせた。全世界の生産台数は250台、そのうち60台が日本に導入し即完売。ブレンさんは、「我々以上に販売したのはフランスのみで、90台だった」と日本において非常に人気が高かったことを明かす。

日本では2013年に“ルノースポールジャパンプロジェクト”が発足。これは、ニュルブルクリンクでタイムを出すことも重要だが、ルノースポールのエンジニアとテストドライバーが、「日本でも台数が伸びていることから、F1も走る名門の鈴鹿サーキットでタイムを出したいということがきっかけだ」という。最初は2013年4月に2分33秒328を記録。この時のエピソードとしてブレンさんは、「ロラン・ウルゴンは、130Rを全開で走れなかったと悔しがっていた。このクルマでは全開で行けると考えていたが、それが出来なかったのだ。実はこの時、エンジニアも走行し、なんと驚いたことにテストドライバーの1秒落ちのタイムを記録した」と語った。

その翌年の2014年6月にフロントフェイスが一新した。鈴鹿のリベンジは、2014年11月にこのフェイスリフトモデルによって行われ、2分28秒465と約5秒短縮したタイムを記録した。「この時のロラン・ウルゴンはものすごい笑顔で、130Rを全開で行けたといっていた。その時の速度は190km/h以上だった」という。

さて、メガーヌRSトロフィーRと同じニュルブルクリンクスペックのエンジンを搭載した「メガーヌRS273」が2016年10月にデビュー。今回のファイナルエディションにも同様のエンジンが搭載されている。このエンジンは、パワーは8馬力アップで、トルクは変わらず360Nmのまま。ただしトルクカーブのみ変更された。「ルノースポールの考え方として、ストレートだけであれば馬力やパワーを上げるのは有効だが、ニュルブルクリンクは170以上のコーナーがあるので、そこで駆動系にいかにパワーを伝えるかが重要。いかにコーナースピードを上げるかがポイントなのだ」とし、最大トルクの数値は変えずに、5500rpmあたりのトルクを10Nmほどアップさせることで、4速から3速にシフトダウンして抜けていたコーナーを4速のまま通過できるようにしたのだ。

■ついにファイナルエディション

20台の限定車、「メガーヌRS273パックスポール」は、マルケジーニデザインの軽量アロイホイールと、アクラポヴィッチのマフラーを装着。アロイホイールは一本あたり3.3kg、4本で13.2kg軽量、チタンマフラーで4kgほど軽くなり、合計18kg軽量化された。そのほか、シルバーのデカールや、ロラン・ウルゴンのサイン入りのシリアルプレートが装着される。これら合計で50万円以上のものを、通常のモデルより20万円高の419万円で販売する。

もうひとつは200台限定の「メガーヌRS273ファイナルエディション」だ。現行のカタログモデルに、シルバーのサイドデカールとシリアルプレートというメモリアブルキットを備えたもので、価格は399万円と通常モデルと変更はない。レザーのレカロシートも10万円のオプションで設定される。

なお、これら全ては日本のみの限定車である。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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