河原の石を人生になぞらえて…アウディ Q2 デザイナー【インタビュー】

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アウディA.G.エクステリアデザイナーのマティアス・フィンク氏
アウディA.G.エクステリアデザイナーのマティアス・フィンク氏 全 24 枚 拡大写真

アウディのラインナップ中、最もコンパクトなSUV,『Q2』が日本市場に導入された。そのデザインは、これまでアウディのデザインボーダーを“少し”超えたものだという。そこで、発表に際し来日したアウディA.G.エクステリアデザイナーのマティアス・フィンク氏に話を聞いた。

【画像全24枚】

◇ポリゴンは河原の石から生まれた

---:アウディQ2のターゲットは若い世代、30代から40代であるとされ、これまでアウディのユーザーではなかった人たちも取り込もうとしています。そこでまず、Q2をデザインするにあたり、スケッチを描きながらユーザーにどう受け入れられるかを考えていったのでしょうか。それとも、まずユーザー層を明確にしたのちに、その層に受け入れられるデザインは何かを考えていったのでしょうか。

フィンク氏(以下敬称略):まず若い世代を分析するというのが最初でした。私の同僚が「小さいQモデルのスケッチをしてよ」といってきたのが、私がオフィスを帰ろうとした夕方5時頃だったのです。しかも次の日にはそのスケッチを欲しいというのですよ!! そこで、家に帰ってベットの中でものすごく考えました。そして次の朝にはスケッチを始めたのです。その最初のスケッチが出来るまでの7割が考える作業で、残りの3割がスケッチでした。

ちょうどそのころ私は30歳で、まさにターゲットだったのです。そこで、自分のクルマを作ればいいのだと思い嬉しくなりました。

---:その若い人たちとはどういう人たちなのでしょう。

フィンク:すごく前向き、ポジティブでエネルギーあふれる元気な人たちを想定しています。仕事も趣味も全て1台でまかないたい。何かに制約されることなく自由に生きたいという人たちです。そういう人たちに向けたQ2なので、個性があって強いデザインに仕上がっていると思います。まさにこの世代を表すキャラクターになっているのではないでしょうか。非常にキビキビしていてスポーティで、しかし使いやすくてスタイリッシュなデザインにしたつもりです。

---:Q2のデザインキーワードは“ポリゴン”ですが、なぜ、この言葉に至ったのでしょう。

フィンク:ポリゴンというのはもともと古代ギリシャ語に語源があり、“ポリ”とは“多い”“many(メニ―)”、そして“ゴン”は“edge(エッジ)”“角がある”という意味。つまり幾何学的な模様でたくさん角があるものということです。

川は人生になぞらえることがあるでしょう。そこにある石は人間にあたるもの。川(人生)に流されている時間が長ければ長いほど石も人間も丸くなる。しかし上流の源流に近いところではまだ若いので個性が強くて尖がっている。本当に河原の石と人間は一緒ですね。そういったことをイメージして、今回エッジ、角がたくさんある形、ポリゴンをモチーフにQ2をデザインしたのです。

---:最初に描いたデザインスケッチは、生産型のQ2にどのくらい生かされていますか。

フィンク:キャラクター自体は完全に一緒です。ただし、Cピラーの形状はスケッチにありましたが、そこの色を違うものにすることは後のスケッチで出てきたアイディアです。ボディサイドの幾何学模様のエッジや、4本のホイールを強調するといったスタンスの要素も元のスケッチにありました。

◇Qシリーズの新しい顔

---:Q2では新しいフロントグリルを採用し、今後、アウディのSUVであるQシリーズはこのグリルが採用されるそうですね。しかし、現行のQ7やQ3でグリルの変更がなされています。再び変更ということですが、それはなぜなのでしょう。

フィンク:クルマの開発では必ずしもひとつの方向性のみで行くわけではなく、分岐したりあちらに行ったりこちらに行ったりということがあるものです。今回のように変える過程で2つ違うデザインが存在するということはありえることです。そういうことでQ3とQ7とは違うグリルのデザインが採用されました。

しかし、これからはこのQ2のグリルの方向に行く予定です。つまりシングルフレームグリルがアルミで、下の部分に角がついているというもの。クロームではなくアルミなのは、より力強く迫力のある雰囲気が演出出来、角があることにより、視覚的に地上からグリルが上がっているように見える効果があります。

それ以外にもCピラーの要素も共通になるでしょう。Cピラーは幅が割とあってホイールのすぐ上にありますので、どっしりとホイールの上に座っているようなイメージになっています。これも他のQモデルに採用していきます。もちろんボディサイズが違いますから、多少形は違ってくるでしょう。それでも、このデザイン要素は今後Qモデルにも取り入れていく予定です。

---:そのCピラーにはカラーを変えられるブレートがありますね。フィンクさんが思われる理想の組み合わせを教えてください。

フィンク:個人的にはモノクロな洋服を着ているくらいなので、例えば黒のボディカラーにカーボンファイバーやダークグレーのCピラーというのがいいのかなと思います。サイドウィンドウがどうしても暗いので、その組み合わせだとルーフの部分が、少し目立って浮いて見えるので、それも私としては好きです。

ただし個性をより強調したいということであれば、明るい色のCピラーで目立たせるということもひとつの手だと思います。たくさんの組み合わせがありますのでお好みの色を選んでもらえればいいかなと思います。

◇私の心の半分は田舎の少年、もう半分は都会で暮らしている人

---:では、少しフィンクさんのことを教えてください。どんな子供時代を過ごしてカーデザイナーになったのですか。

フィンク:私自身は農場で生まれ育ちました。外で過ごすことが多かったですね。コンピューターも持っていなかったし、魚を捕まえるのが大好きだった。ただ、スケッチには興味がありました。特にクルマが好きだったのでたくさんクルマのスケッチを描いていました。

小さいときにはクルマのデザイナーという職業があることすら知らなかったのですが、ただ他の友達は職人になりたいとか、消防士になりたいといっていましたので、そういった友達とは私の興味があるところは違っていたようです。どちらかというと芸術や建築などに興味がありました。しかし、そこに興味はあったのですが、具体的に将来何になりたいか、何をやりたいかということはよくわからなかったのです。

多分12歳ぐらいのとき、クルマのデザインを勉強できる大学があるということを知り、これこそまさに自分がやりたいことだと思いました。学校を卒業して大学でデザインの勉強をして、その後初めて都会に移り住んだのです。

従って、いまでも私の心は、半分は田舎の少年で、もう半分は都会で暮らしている人なのです。つまり、私にとって、ということは私の世代の人たちにとってQ2は完璧なクルマなのです。実家に帰って釣りをするのにもすごく便利だし、普段は都会に住んでいるので駐車スペースを探すのも便利です。

現職場はインゴルシュタットにありますが、私はミュンヘンに住んでいるので、毎日片道120kmぐらいクルマで通勤していますので、長距離乗っても快適だということはすごく大事。その点でもQ2はラグジュアリー感もあり快適に乗れるクルマなので私にはぴったりなのです。

---:Q2のターゲットユーザーでもあるフィンクさんの興味があることや、趣味を教えてください。

フィンク:私はプロジェクトが始まったときには30歳でした。現在は35歳でまさにターゲット世代のまん真ん中の年齢です。私はいまも釣りが好きなので、休日には釣りに行くことが多いですね。なのでトランクの容量がある程度大きいものが必要でした。ただしグランドクリアランスはある程度あったほうがよい。

そうはいってもほとんどが街中で過ごすことが多いので、仕事が終わって自分のアパートに帰ると周りの駐車スペースを探すのに結構時間がかかってしまいます。そういうときにも自分のクルマが停められるだけのスペースが見つけやすくするために、車体の短いクルマが必要です。もちろん、スタイルもとても重要で、あまりつまらないクルマには乗りたくないですよね。クルマというの自分自身を表現するものですから、スタイルのいいクルマに乗りたい。

ここでひとつ開発中のエピソードを紹介しましょう。私が最初にこのQ2のモデルを他の部門にプレゼンテーションする機会があったのですが、そのときに工具部の人たちがこんな薄いドアパネルなんて作れないといわれてしまったのです。しかしそこにいた若者がそこで出来ないといわないで、まずはやってみようといってくれました。そして何週間か経って実際にプロトタイプではちゃんとドアパネルを作って出してくれたのです。若者が熱意を持って取り組んでくれたおかげですね。

---:最後にフィンクさんにお尋ねします。このクルマに乗ると(女性に)モテるでしょうか。

フィンク:もちろんです!! 男性らしさを映し出すクルマだと思いますが、聞いたところによると女性と男性の割合は50:50なので、女性の向けのクルマでも、男性向けのクルマでもないのです。つまり、両方にウケるクルマだということですね(笑)。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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