ワンオフモデルに求められるデザイン…ザガートのチーフデザイナーが語るMVアグスタF4Z

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F4Zを説明する原田チーフデザイナー
F4Zを説明する原田チーフデザイナー 全 17 枚 拡大写真

CoSTUME NATIONAL(コスチューム ナショナル)では現在、東京・南青山の旗艦店「CoSTUME NATIONAL Aoyama Complex」でMVアグスタ『F4Z』の特別展示をおこなっている。これはザガートがスタイリングを手がけた、世界に1台だけの貴重なモデルだ。

F4Zは日本のエンスージァストの依頼に応えて仕立てた、ワンオフのカスタマイズモデル。ザガートにとって、正式なプロジェクトとしてモーターサイクルをデザインするのはこれが初となる。日本での展示スタートに先がけて開催されたレセプションには、ザガートの原田則彦チーフデザイナーも駆けつけた。

F4Zはベースとなった『F4』のフレームやエンジンはそのまま使いながら、アルミとカーボンを用いたボディワークが与えられ、まったく異なるスタイリングに生まれ変わっている。細かな点ではインテークマニフォールドや燃料タンク、バッテリー、エキゾーストシステムなどのコンポーネントを再設計している。流麗な曲面がメカニズムに貼り付いたような造形は、艶かしさと力強さ、そして他のどのモデルにも似ていないユニークな個性が備わっている。この造形は、いかにして生み出されたのだろうか。

原田氏はまず「依頼者と直接、話をしながらデザインを進めることができました。これはデザイナーにとって大変光栄なこと。顧客が常に目の前にいるというのは満足感を得られると同時に、責任やプレッシャーを感じながら仕事を進めるということです」と明かす。そして歴史と伝統を持つブランドの最高峰モデルに、いかにして「比類のない個性を持った、骨太な、時の流れとともに忘れ去られることのない美しさ」を盛り込むか、ということを考えながらデザインしたという。

依頼者も同意見で「どこかクラシカルな部分もありながら進歩的で、なおかつ他に同じようなものは簡単には見つからない」というものを作ろうということになった、とのこと。そしてプロジェクトはMVアグスタの承認も得た正式なものとなり、F4に関するデータも提供してもらえることになった。「CADデータを入手したうえで設計を進めているので、工業製品としての完成度も高いものにすることができました」と原田氏。

スタイリングはただ個性的というだけでなく、これまで多数の自動車を手がけてきたザガートの経験を生かしたものでもある。「車体全体をひとつのボリュームと捉えることからスタートしました。基本的には車体の先端から後端まで、ひとつの大きな流れが連続するもの。そしてそれを明快なラインで区切ってゆくという手法です。こうすることで、大きな面の流れとして全体を捉えられるというのは、自動車的な部分だと思います」

原田氏は続ける。「ライダーの首から背のラインを伸ばすと、後輪の中心あたりに到達するようになっています。人間の背中は、背筋によって力強いカーブを描くのですが、これと色分けされたカウルの分割線がほとんど並行になるようにしました。ライダーが乗車姿勢をとることで、別のデザインとして完成するというコンセプトなのです」

ちなみに、ベースとなったF4の印象は「ものすごくタイトで、カウルとフレームの隙間には指を差し込む余裕もない。これに手を加えようとすると、どうしても”膨らませる”方向になってしまう。押さえるべきポイントを押さえた、研ぎ澄まされた造形だなと思いました」とのこと。

F4Zのプロジェクトでは、メーカーからハンドル切れ角やサスペンションのストローク量といった詳細なデータを提供してもらえていたおかげで、寸法を拡大させることなくスタイリングをまとめることができたと振り返る。

モーターサイクルの世界でも自動車と同様にさまざまな制約があり、そのためにデザイナーの思い通りにはデザインできないという現実もまた同じ。しかしメーカーから独立しているデザイナーが個人と仕事をする場合なら、ある程度は制約を取り払うことができると原田氏。「だから、ここで思い切ったことをしなければ。勇気を持って挑戦しなければ際立った個性は出せないし、ワンオフモデルを作る価値がなくなってしまうと思っています」

なおF4Zの展示は7月31日までおこなわれている。「日本のみなさんに見ていただける、大事なチャンスをいただきました。立体造形を実際に肉眼で見て、写真で見たときとは印象が違うということを実感してほしいですね」と原田氏は語っている。

《古庄 速人》

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